新3巻 結衣の宣戦
結衣と雪乃は結衣が八幡に告白する事で合意する。
interlude それは、彼女だけが知る彼女のこと。vol.N3, p.004
雪ノ下家との会食の翌日。話者は結衣。結衣は鬱屈している八幡と雪乃への干渉を決心する。結衣は雪乃との友情を深めるべく、雪乃と結衣は歩み寄り、結衣は雪乃に八幡に告白する意思を告げ、雪乃は受け入れる。
たぶん、間を埋めるためだけの、それっぽい、まるで息継ぎするみたいに意味がなくて、当たり障りのない空気読んだ会話をしてたはず。vol.N3, p.007
していた。雪乃が評するに、「あなただって」
/ 「ずっと取り繕った会話ばかりしていた」
vol.09, l.3024 。
二人に何があったのか、二人が今どう思っているのか、彼が何を考えているのか、彼女が何を持っているのか。/全部全部、あたしは知らない。vol.N3, p.008
俺ガイル7巻以降の構造。あるいは読み方。
俺ガイルはInterlude を除いて八幡を語り手とする。八幡が不在の場所で何らかの会話や思考やイベントが発生し、これは描かれず、しかし八幡はその結果のみを観測し行動する。同様に、結衣(や雪乃)は読者や八幡が知る情報を知らずに行動・発言していることがある、ということ。
あるいはこれはさらに、新やアンソロにおける三人の関係の定義でもある。雪乃と結衣は八幡を巡って争い、その行為さえ共有し楽しむ関係にある。これは 「ゆきのんの気持ちごと、全部貰う」
/ 「あたしの気持ちも全部貰って?」
/ 「ええ。きっとそうする」
vol.14, l.2039 の合意に基づくものであるが、この合意を八幡は知らない。
だから、今はもう、こんな重苦しい空気が嫌じゃなくなった。vol.N3, p.008
新以降の結衣の立ち位置。奉仕部の面々の調整役。
「お米ちゃん、とりあえず1ペリカ払って。」vol.N3, p.010
「それが陽乃さんも来るらしいのですよ」
/ 「帰りに大喧嘩するに1ペリカ」
vol.N1, p.069 の回収。
ほんとはずっと昔から気付いてた。/ ... /あたしは、そこへ行きたいんだって。/ ... /だから、これまで通りじゃいられない。vol.N3, p.010
結衣が変化しようとする決意。メタに言えば結衣のキャラクター設定を変更する宣言。
結衣が雪乃と八幡の写真を発見した直後のモノローグの反復である。かつては雪乃から八幡への想いに触れて、 だから、ほんとは。
/ 本物なんて、ほしくなかった。
vol.12, l.1182 とした。ここでは、雪乃と八幡が両想いであることを前提に、それでも、これまで通りじゃいられない
、とする。
あの日、どうしても開けることができなかった、触ることさえできずにいた扉の前に立つと、ぶち破るくらいのつもりで、勢いよく開け放した。vol.N3, p.011
結衣の変化を示す。
「あの日」と限定している。奉仕部部室の扉を開けられなかった日であるから どうやら由比ヶ浜は中に入るのをためらっていたらしい。
vol.03, l.1781 のことだろう。かつて結衣は雪乃と八幡は恋仲だと誤解して奉仕部の扉を開ける事ができずにいた。ここでは結衣は、雪乃と八幡は恋仲だと把握した上で、それでもその仲に割って入る。
「……なんかあった?」vol.N3, p.015
結衣の変化を示す。
かつて本編中の結衣は、自分からは話すことのない八幡や雪乃に対して、 考えて、想像して、察してきた
vol.N3, p.008 。典型的には八幡にチョコレートを渡せない雪乃に対して 「えーっと……あたし、先行くね?」
/ 「えっと……どうしよっか」
vol.11, p.3028 など。ここでは結衣は雪乃に直接質問する。
「そっか……」/なら、いいの。って、あたしも元気に笑うことしかできない。vol.N3, p.016
「そっか……、なら、いいの」
vol.13, l.2855 を引く。プロム篇で雪乃は「由比ヶ浜さんの願いを叶えてあげて」としたが、このとき雪乃は結衣の願いを解っていなかった、ということ。
あたしも彼女と話す時そのことに触れないようにしているから/でも、私が半歩踏み込んで、彼女が半歩踏み込んだ。(vol.N3, p.018)
「そのこと」は八幡と雪乃の仲に関すること。結衣と雪乃が互いに踏み込むことにより八幡への好意を共有する過程。
結衣の半歩は 「……なんかあった?」
vol.N3, p.015 として察さずに聞いたこと。「そっか……」
vol.N3, p.016 と引いてしまった為に半歩。
雪乃の半歩は 「本当に、なにか特別なことがあったわけではなくて、だから、説明のしようがないというか……」
vol.N3, p.018 として話そうとしたこと。 「誰かに言っていいようなことでもないと思って」
vol.N3, p.018 として引いた為に半歩。
あたしたちの関係はもう戻らない。/みんながすごく当たり前に、めっちゃ普通に、いろんな意味で、誰にでも使う、友達なんて、そんな言葉で済ませらんない。vol.N3, p.021
結衣から見た雪乃との関係性。雪乃から見た結衣もほぼ等しく 友達なんて、そんな言葉では到底足りないから
vol.N4, p.046 。
あたしは天使でも女神でもなんでもないから。vol.N3, p.023
結衣は雪乃の保護者ではなく友達だから、ということ。
「この人、天使すぎてやばいな……」
/ 「もはや女神では……」
vol.N1, p.076 との対比。このとき、結衣は八幡の件で落ち込むであろう雪乃を心配していた。いろはと小町は、その結衣の優しさや包容力を讃え、むしろドン引きしている。
結衣は、結衣も雪乃も八幡を好きであるから、雪乃が八幡の件で落ち込むのなら、一緒に落ち込める様な関係性を得よう、としている。
「ゆきのん、まーた一人で勝手に心配して勝手に凹むから」/「今度からは、一人ではないでしょうし」vol.N3, p.025
結衣と雪乃の関係性の変化を雪乃も把握して受け入れた、ということ。意味的には 「ゆきのんの気持ちごと、全部貰う」
/ 「あたしの気持ちも全部貰って?」
vol.14, l.2039 の繰り返しではある。
「すごく大事な話なの。ずっと……、ちゃんと言えなかった話」vol.N3, p.024
「あたしのお願いちゃんと言うから。……本当に、大事なお願い」
vol.14, l.4225 を引く。プロム篇での結衣のお願いが告白である、ということだろう。「ほんとにいいと思う?」の解答で分岐するとしても、少なくともその一方が。
「わざわざ私に許可を得るようなことではないでしょう?」/「わざわざ私に許可を得るようなことではないでしょう」vol.N3, p.024
対比。雪乃は前者の時点では結衣の意図を理解していない。後者は結衣が八幡に告白するという意図を知って、それを許容している表現。
その瞳は、まっすぐ彼を捉えている。vol.N3, p.028
結衣は八幡をデートに誘う。
俺の悪癖を熟知しているうえに、事の顛末を陽乃さんから聞いているらしい小町の言葉だ。それは客観性に富み、信頼できると思っていい。vol.N3, p.037
小町の設定の開示。小町はあるいは社会通念上正しく、しかし八幡が取れない解を提示してきている。言い換えれば教師役。
「ヒッキー、デートしよう!」vol.N3, p.050
「ヒッキー、デートしよう!」
vol.11, l.3400 の反復。