新1巻 新クラス、新奉仕部
4月半ば。 八幡の新しいクラスと、小町を新部長とする奉仕部、とを描く。
prelude かくして、比企谷小町はかく語りき。vol.N1, p.004
物語の導入。話者は小町。聞き手は不明。読者に語りかける体を取る。
おねーちゃーん!/おかわり?vol.N1, p.006
現時点で本章の聞き手の同定は不可能。これを平塚だろうとする主な理由。
あるいは 「陽乃さん情報によるとですね」
vol.N1, p.060 を根拠として陽乃とも取れる。
小町が何かしなくても、あの人たちならそうしたと思います。vol.N1, p.011
「本当に終わりなら。あたしのお願いちゃんと言うから。……本当に、大事なお願い」
vol.14, l.4224 の「大事なお願い」が奉仕部の再設立であったということ。
小町は(八幡には取れない)正答を示す。「そうした」は新奉仕部の設立、とする。「あの人たち」であるので八幡のみではない。雪乃は「助けて」と言われなければ助けられない。であるから主に結衣。
あるいは聞き手を平塚だろうとするまた別の理由。陽乃に奉仕部の再設立を肯定的に報告することは多少不自然である。
だから、思春期は終わらない。vol.N1, p.012
4月半ば。新クラス。富岡美緒登場。クラス会の相談。八幡と葉山は言葉を交わさずとも解りあえている。
俺のむず痒さの原因が半身で振り返った。/応える代わりに、わずかに顎を振る。vol.N1, p.014
だが、その程度の理解ではまだまだ葉山隼人、ひいては葉山グループへの理解が足りていない。vol.N1, p.018 p.021
名前覚えてなかっただろと言いたげな蔑みが見て取れた。vol.N1, p.028
八幡と葉山の新たな距離感。彼らは一切の言葉なく意思疎通できる。
「日程とか詳細決まったら教えてくれ」/このマジックワードを口にすれば、自分が主導する気はないと暗に示すことができるのだ。vol.N1, p.024
八幡には少なくともクラス会を拒否する意思はない、裏方として参加する意思があるということ。
アホみたいにめんどくさい気難しい拗らせ爽やか闇属性イケメンvol.N1, p.021
葉山の簡潔な設定。主に10巻のマラソン大会や13巻の対陽乃のモノローグで描かれる内面の要約。つまりは葉山は八幡の 同位体
vol.03, l.0015 であって、葉山と八幡は(爽やかイケメン以外?)ほぼ等しい。
当然のことながら、富岡さんが俺から目を逸らすことはない。/「この後とかどう? ……ですか? クラス会、というか、ご飯会?みたいなの……」vol.N1, p.029
富岡は八幡に直接告げている。八幡はそれを把握していない。
それでも、彼女彼女らの日常は続いていくvol.N1, p.038
新奉仕部。小町は八幡が雪乃母らと食事すると告げる。
おニューの髪留めでvol.N1, p.039 。
プレゼントの類は描かれていない。 「小町ちゃんだからヘアピンとか」
vol.13, l.3930 に従えば結衣によるものか。
「ありがと」vol.N1, p.045
八幡の成長。
かつて 「紅茶、……冷めるわよ」
/ 「……猫舌なんだよ」
/ こうわざわざ用意されてそれを受け取れないほど天の邪鬼でもない。
vol.07, l.0246 では感謝できなかった。 紙コップ代わりとはいえ、いただきものをして、へそを曲げるほど偏屈でも幼くもない。
/ 「……ありがとな、湯呑み」
vol.09, l.5285 では自意識過剰だった。
正直なところを言えば、今もってこの部活や関係性や、あるいは現状に違和感がないわけじゃない。/ふとした瞬間に、抜けない棘の存在に気づいて、それがチクリと胸を苛む時がある。/けれど、その傷跡や痛みも含めて、ここが自分の居場所の一つだと思える。vol.N1, p.056
八幡から見たプロム篇の顛末。八幡が結衣の奉仕部再参加に伴う痛みを察しているということ。但しこの時点では八幡は結衣のそれらを察しているだけであって対処していない。つまり結衣に甘えている。
「違和感」とはバレンタインお料理イベントの馴れ合いを評した 「あー、なんか違和感っていうか」
vol.11, l.2381 を引く。
「抜けない棘」は、 抜けない棘みたいな、なにかまだ割り切れないものがあって、それを口にできなかったから、小町にその先を言わなかったんじゃないかなって
vol.N1, p.008 に従えば、「お前はそれを待たなくていい」
vol.14, l.4367 に連なる、 壊れるほどの傷をつけ
vol.14, l.3970 たこと。もしくはさらに八幡から結衣への描かれなかった感情。
「傷跡や痛み」の「傷」は、その「抜けない棘」のことではある。が、結衣が雪乃に告げた 「傷も痛みも、全部欲しい」
vol.14, l.2047 を引くだろう。であれば、結衣が、お料理イベントの様な馴れ合いの実現の為に、八幡が結衣を切り捨てた事を把握した上で、それでもさらに新奉仕部に再参加したこと、その再参加に伴う(八幡視点の本編には描写されていない)結衣の感情や思考、を八幡が察しているということだろう。
であるから、
正直なところを言えば、今もってこの部活や関係性や、あるいは現状に違和感がないわけじゃない。
ふとした瞬間に、抜けない棘の存在に気づいて、それがチクリと胸を苛む時がある。
けれど、その傷跡や痛みも含めて、ここが自分の居場所の一つだと思える。
の意となる。
「陽乃さん情報によるとですね」vol.N1, p.060
陽乃が外堀を埋めるべく小町や葉山を使っている。 「どうせあの子、逃げらんないんだし」
vol.A1, l.3255 。
「兄は今日、雪乃さんママとお食事に行くとかなんとか」/「へぇー」vol.N1, p061 /いや、まぁ、一人見送ってない奴いるけど。いいけど別に。そっちの方が気が楽だし。いいけどね、ほんと!vol.N1, p066
いろはの態度の不自然な強調。本編中に多数登場する「へー」という興味なさそうな応答は、いろはが興味を持っている表現だ、という設定の開示。
interludevol.N1, p.068
いろは視点。結衣やいろはによる八幡や雪乃の性格設定の開示。
はるさん先輩は/わたしの思うところの理想形ではあるけれどvol.N1, p.069
いろはの陽乃像。 「なんかはるさん先輩超かっこいいです!」
/ ああ、こいつ、有力者に取り入り、あわよくばそのノウハウを得ようとしているのでは……
vol.10, l.3064。
それでも深いところでは何を考えているのか、今一つ読み取れない。vol.N1, p.069
いろはの小町像。一方で八幡は小町を 底が浅いくせに腹黒く
vol.14 l.6648 と評する。過ごした時間の差だろう。
「二週間口きかないとかそんな感じじゃない?」vol.N1, p.070
恐らくプロム前後あるいはプロム終了からダミープロム開始までの期間。
いろはがこの期間を「あれ」と表現している、つまりいろはが具体的に知る事柄である、ので生徒会長戦以降。かつ生徒会長戦以降クリスマス前の「本物が欲しい」までは八幡と雪乃は対立し続けている。
自分の機嫌は自分で取るというか、存外そこそこ大人なのかもしれない。vol.N1, p.074 /雪乃先輩は/こと先輩絡みの話になるとめっちゃ乙女だ。なんならクソ雑魚メンタルまである。vol.N1, p.075
いろはによる八幡と雪乃の人物像。八幡の方が雪乃よりも精神面では成長している。
「けど逆に、ゆきのんが、勝手に、何か思い詰めて、凹む」vol.N1, p.074
前例多数。文化祭前半、修学旅行の嘘告白からクリスマス前まで、初回プロム準備中、等。
そして今回もその通りの顛末となる。彼に答えを委ねたくせに、その言葉を聞けなかったことに、落ち込んでいるのが、私
vol.N2, p.086 。
最っ高に女の子してる感じがたまらなく好きだ/恋する女の子や諦めない女の子がわたしは好きだvol.N1, p.075
いろはの雪乃観と結衣観。
恋する女の子や諦めない女の子がわたしは好きだ/わたしはわたしが好きだから、わたしと同じ人はだいたい好き。vol.N1, p.075
いろはの行動原理。プロムや新奉仕部設立など、いろはが結衣や雪乃を後押しする理由。
この後、三人でカフェ行って先輩の悪口大会で盛り上がりましょうね……vol.N1, p.076
カフェは 「新しいカフェできたの知ってます?」
vol.N1, p.042 。先輩の悪口大会は 先輩の悪口大会なら別の時にしてほしい。そしたらわたしが絶対優勝するのに。
vol.14 l.4549 。
前略、道の上より、千葉が誇る世界の車窓から。vol.N1, p.078
八幡と雪乃は雪ノ下家との食事に向かう。八幡はネクタイを忘れた事を理由に逃げようとするが、しかし小町が雪乃に預けていた。
雪ノ下雪乃高いところダメ説vol.N1, p.080
初出は 「普通の子なのよね。可愛いものが好きで、猫が好きで、おばけと高いところが嫌いで、自分が何者かなんてことに悩むような」
vol.12, l.4478 。陽乃の言の多くは信用ならないが、それでも雪乃評は正しい。
知っているつもり、解っているつもりだが、それでも聞いておきたい。vol.N1, p.083
生徒会長戦やクリスマスイベント前後の種の八幡と雪乃のコミュニケーション不全はもう起こさないということ。
「お互いを知っていたとしても、理解できるかはまた別の問題だもの」
vol.08, l.0392, 「できているつもりで……、わかっているつもりでいただけだもの」
vol.09, l.2554 を引く。但しいずれも雪乃から八幡への台詞であって、八幡の台詞ではない。
「虫は無理ね」/「俺も無理だ」vol.N1, p.084
「いつか比企谷くんを好きになってくれる昆虫が現れるわ」
vol.01, l.3530 の伏線の回収。のわけがない。