結衣案3 「本当に大事なお願い」
プロムを終え、雪乃は八幡を諦められず、八幡は奉仕部の終了を認められず、雪乃案2は膠着する。一方で結衣は自身と八幡の交際が実現不可能だと悟る。 三学期編概要 参照。
この状況で結衣は 「本当に、大事なお願い」
vol.14, l.4224 を用いて八幡に働きかける。しかし八幡はこの時点で雪乃を追う為に結衣を切り捨てる決心をしている。この八幡と結衣の会話中にも結衣案は変化し続ける。これらを結衣案3として示す。
結衣案3は明示されないが、例えば「『お願い』として奉仕部を再設立し、密約により結衣と雪乃は八幡を共有する」である。
「これで、ほんとにいいと思う?」vol.14, l.4221
プロムを終えた時点で既に結衣は三人での関係を続ける準備を完了している。
即ち
「何かを諦めてほしくないんじゃないかな」vol.14, l.2099 /
「気持ちが変わっちゃったら、どんなに近くにいても、すごく遠いの」vol.14, l.2103
「ゆきのんの気持ちごと、全部貰う」/
「あたしの気持ちも全部貰って?」vol.14, l.2039
そうやって言い訳が用意されているなら、俺はきっと自分を納得させることができる。vol.11, l.3970
である。ので、例えば 「これで、ほんとにいいと思う?」
vol.14, l.4221 の応答に応じて以下の様に行動すれば良い。
昨日話したあれvol.14, l.0936 などを通じて雪乃に関わればよい。結衣は八幡との交際が永続しないと承知してはいるものの、卒業まで程度であれば維持できよう。
小町が何かしなくても、あの人たちならそうしたと思います。vol.N1 p.011 の通り、八幡が奉仕部を再設立し、結衣が雪乃を誘えばよい。
「絶対言って」であることから、八幡が何らかの行動を起こす場合には結衣のお願いはそれを後押しするものであろう、とする。
もっとも 「これで、ほんとにいいと思う?」
の様な聞き方で「ほんとにいい」と答える訳がないので、「奉仕部を終わらせていい」場合の回答を用意する必要は(普通は)ない。
「このまま関わることを諦めたら、たぶんそのまま。……それは、ちょっと納得いかなくてな」vol.14, l.4288
八幡は雪乃を追うと宣言する。よって結衣は最終的な「お願い」を 「だから絶対言って」
vol.14, l.4326 に変える。
由比ヶ浜は拳一つ分距離を開けて座り直し/潤んだ瞳。vol.14, l.4305
結衣が八幡に距離を置いた描写。八幡への告白を中止した描写。
「ヒッキーとゆきのんがいるところにあたしもいたいって思う」/彼女は希うように呟いた。vol.14, l.4324
同じく結衣が八幡と雪乃に対して一歩を引いている表現。
「希う」は結衣が三人で居ることを望む時のキーワードである。章題の いつかのように、由比ヶ浜結衣は希う。
vol.14, l.3972 を含めて、 「三人で、行きたいの…」
/ その希うような声音で十分に伝わる。
vol.11, l.3466 を参照する。「三人」であるから、ここでは、結衣は自身が切り捨てられるとは考えていない。
「あたしのお願いはね、もうずっと前から決まってるの」vol.14, l.4319
「ずっと前」とは初登場時の 由比ヶ浜は仲間になりたそうな目でこちらを見ていた。
vol.01, l.1090 。
「一言程度で伝わるかよ」vol.14, l.4347
本来八幡が結衣を切り捨てる理由は、 その言葉の先を、俺が効く資格はない。
vol.14, l.4288 とある通り、結衣の告白を未然に防ぐ為である。つまり、結衣がお願いを「だから絶対言って」に変更した時点で、既に八幡は結衣を切り捨てる必要がない。
「一言程度で伝わるかよ」/由比ヶ浜は放心したように俺を見ていた。vol.14, l.4347
齟齬。「一言程度で伝わるかよ」
が結衣が失恋を実感した一言である。しかし八幡はそれを把握しない。 「……けど、お前はそれを待たなくていい」
vol.14, l.4367 は八幡が結衣を傷付けると自覚している言葉であるが、しかし実際に結衣を傷つけた言葉ではない。
結衣が指摘した様に、かつて八幡は伝える努力をしていない。であるからこの台詞は八幡にとって雪乃の扱いが結衣と異なることを示す。
「一言言えばいいだけなのに」
vol.14, l.4346 と 好きだなんて、たった一言じゃ言えない
vol.14, l.4401 は矛盾する。であるからこれらの「一言」は異なる。 「一言言えばいいだけなのに」
は「好きだ」等を想定せず、 俺はあいつと関わりがなくなるのが嫌で、それが納得いってねぇんだ
vol.14, l.4273 に類する言葉であったのだろうと思われる。
そうして結衣は 「……けど、お前はそれを待たなくていい」
vol.14, l.4367 で切り捨てられ、結衣はこれを 「なにそれ、待たないよ」
と受け流し、話を打ち切る。
結衣はプロム篇を通じて行動を変化させている。
この状況に応じて解を変え続ける姿勢は、平塚が 「その違和感についてずっと考えなさい」
vol.11, l.2398 とし、八幡が 「だから、ずっと、疑い続けます。」
vol.14, l.6454 と応答した、本物を求める姿勢に等しい。しかし、結衣のこの姿勢あるいは能力こそが、八幡が結衣を切り捨てる手段を取る前提となっている。 「お前はそれを待たなくていい」 参照。