雪ノ下の問題は雪ノ下自身が解決すべきではなかった
たった一つの答えしか許されていないことを知っていながら、それを選ぶことを避け続け、言い訳を重ねて保留し、詭弁だらけの詐術でもって、歪んだ欺瞞を強要した。優しさに縋り、誠実さに甘え、ひと時の夢に酔ったふりをして、正しい答えと言い張った。vol.14, l.3725
本編の結末やアンソロジーに描かれる新奉仕部の八幡は、馴れ合いを否定しない。本編中の八幡の態度と矛盾する。すなわち本編末期のどこかで八幡は変化あるいは成長している。上記引用箇所が示す自省こそが、八幡が変化したその理由である。
この引用文は、雪乃が代償行為を選択した理由が、八幡自身の発言であること、を示す。本稿は、その八幡の発言が 「その提案には乗れない。雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」
vol.11, l.3987 であることを示す。
なおこのモノローグはアニメ「俺ガイル完」では登場しない。「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」 という台詞が前作「俺ガイル続」内であるため、だと思われる。
前記の八幡のモノローグと、葛西臨海公園での八幡の思考の展開とが、対句的な構造を成す。具体的には下記の様に対応する。
たった一つの答えしか許されていないことを知っていながら、それを選ぶことを避け続け、vol.14, l.3725,以下同
彼女だけはずっと、正しい答えを見ていた気がする。/
けれどーー。vol.11, l.3974,以下同
言い訳を重ねて保留し、
歪なものを歪なままにしておくことは、正しさたりえるのか。それが、希ったものの正体なのだろうか。
詭弁だらけの詐術でもって
雪ノ下が、自身の未来を誰かに委ねるなんて、そんなことあっていいはずがない。由比ヶ浜が、ずるい女の子だなんて、そんなこと言わせておいていいはずがない。
歪んだ欺瞞を強要した。
「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」
優しさに縋り、
でも、だからこそ、委ねてしまってはいけない。その優しさに逃げてはいけない。
誠実さに甘え
その優しさに嘘で返してしまってはいけない。
ひと時の夢に酔ったふりをして、
俺は理想を押しつけたい。微睡みの中で生きていけるほどに強くはないから。自分を疑った末に、大切に思う誰かに嘘を付きたくはないから。
正しい答えと言い張った。
誤魔化しのない、俺の望む答えを、手にしたいのだ。
さらにこの対句構造を展開し、欠けた目的語を補えば、下記となる。
たった一つの答えしか許されていないことを知っていながら、それを選ぶことを避け続け、
言い訳を重ねて保留し、
詭弁だらけの詐術でもって
歪んだ欺瞞を強要した。
優しさに縋り、
誠実さに甘え
「あなた一人の責任でそうなっているなら、あなた一人で解決するべき問題でしょう」vol.09, l.2983 と「雪ノ下は嘘をつかない」とに従い、「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」を受け入れさせてしまった。
ひと時の夢に酔ったふりをして、
正しい答えと言い張った。