一色いろはも考えて行動している
まず前提として、一色いろはは八幡に好意を持っている。 「一色いろはってほんと八幡のことなんだと思ってるんですかねー」 参照。
かつ、俺ガイル新で、いろはの設定は、
恋する女の子や諦めない女の子がわたしは好きだ/わたしはわたしが好きだから、わたしと同じ人はだいたい好き。vol.N1, p.075
と開示される。
それであったとしても、14巻のいろはは八幡にとって、物語にとって都合が良すぎる。
本稿はこのいろはの行動を網羅する。
すなわち、いろはは、自身が奉仕部の関係性を破壊したと考えている。であるから、プロム準備中にその修復に手を貸そうとしていた。
「やっぱり来ちゃいましたか……」vol.13, l.0529
章題の どうしても、一色いろはには確かめたいことがある。
vol.13, l.0486 と合わせ、結衣にプロムの自粛を伝えたのはいろはだろう。
「それでも、……手伝ってくれますか?」/瞳の奥には寒気がするほどの真剣さが潜んでいる。vol.13, l.0597
八幡の雪乃への感情、雪乃の独立を応援する気持ちと、雪乃に関わりたい気持ちのどちらが強いか、を問うている。八幡は手伝う事を表明した。雪乃に関わりたい気持ちの方が強い。つまり八幡は自分の為に行動しているということ。
「誰かのためになることなんてしてきてねぇよ」/「同じ、なんですかね……」/頷きを返すと、一色は俯いた。vol.13, l.0603
齟齬。かつ、八幡が雪乃の為ではなく八幡自身の欲求に従って動いている事を示す。
八幡の理解は、誰かのためになることはしてきていない、だから今回の手伝いも雪乃のためではない、と言うこと。いろはの理解は、常に八幡は誰かの為に行動してきたから、今回の八幡の行動はこれまでの行動とは違う、と言うこと。
いろはの知る限り、生徒会長戦も、お料理イベントも、八幡は雪乃の為に動いてきた。
「なんでそこまでするんですか?」/「責任がある」/「なんか思ってたのと違う答えが来たので」vol.13, l.0667
設問を変えて「雪乃をどう思うか」を繰り返し問うた、諦めの悪いいろはを決定的に諦めさせる解答。この「責任がある」は、かつていろはが(ほぼ)告白した時に用いた 「責任、とってくださいね」
vol.09, l.4457 と等しい。つまりいろはの立場からすれば自身の告白の言葉と振られる言葉とが等しい。
但し八幡にはいろはを諦めさせる意図はない。 俺が口にしたのが要領を得ない言葉だったせいか
と評している。
「どこかかで区切りつけないと、このままずるずる行くところだったからな。」/「そう、ですか……」vol.13, l.1147
齟齬。いろはは自身がプロムを持ち込まなければ八幡らはこのままずるずる行けた、それでよい、と考えている。
最初は反対していたのに、結局一色の熱意に押し切られてしまったわけだ。vol.13, l.1166
まちがっている。八幡が、共依存の否定あるいはプロムに縋っている自身を無意識に否定しているということ。
八幡をプロム準備に参加させる熱意はいろはにはない。 「じゃあ、わたしたち生徒会だけでやってみます」
vol.12, l.2476 あるいは 「奉仕部が協力してくれるのが一番面倒がないんです」
vol.13, l.0715 程度である。
「ちゃんと送り出して、ちゃんとお別れしないと後悔しちゃういそうだなーって」/「そこまで平塚先生のことを……うっ」vol.13, l.1183
齟齬。八幡の解釈は「いろはが平塚を慕っている」。いろはの意図は後に明言される通り「八幡らが後悔しそう」。
いろはは雪乃の 「これで最後だから。……これでちゃんと終わりにできる」
vol.13, l.1081 を聞いている。かつ、結衣とも雪乃とも連絡が取れる。
「正直めっちゃ人手欲しいんですけど」vol.14, l.975 /「当日は手伝ってくださいね。」/「素直に手伝うって言えばいいのに。めんどくさいなぁもう」vol.14, l.1005
八幡は雪乃を避けている。いろはがそれを察した箇所。おそらくはこれを受けて、いろはと結衣は結託し、プロムに八幡が参加する余地を用意した。
「生徒会室行かない?めぐり先輩来てるって」vol.14, l.2408 /「大好きなめぐり先輩のために、一仕事頑張っていただきましょうか」vol.14, l.2593
結衣といろはの結託。八幡はプロムについて 俺とはもう関係のないことだが
vol.14, l.2242 と考えている。これに対して、結衣が生徒会室に誘い、いろはがプロムに参加させる。
いろはの意図は 「来年もやりませんか?」
/ 「部活動としてじゃなくてもいいです。形は問題じゃないんです。生徒会としてでもいいんです。」
vol.14, l.2963 を提案すること。
結衣の意図は、雪乃を交えて奉仕部を終わらせる機会、 「終わらせるなら、今がいいと思う。」
/ 「続けられるならそれでもって思うけど。ゆきのんがそれでいいなら、いいよ。」
vol.14, l.3535 、の場を作ること。
「受付に戸部先輩たち下っ端立たせとくんで、」vol.14, l.2646
「で、先輩は……」/「音響周りの補佐お願いします。」vol.14, l.2656
プロムの終了時間まで八幡を留める理由を用意しておいた、のだろう。
「来年もやりませんか?」/「部活動としてじゃなくてもいいです。形は問題じゃないんです。生徒会としてでもいいんです。」vol.14, l.2963
八幡に音響周り、誰も聞く人のいない密室での仕事、を割り当てた理由。
但し それはわたしがほんの一瞬、奉仕部がなくなるなら生徒会でできないかな、なんて考えてしまったのと少しだけ似ている。
vol.14.5, l.2442 、「ほんの一瞬」ではあるので、生徒会への移行の提案以降はアドリブによるものかも知れない。
「こう見えて諦め悪い女ですから」vol.14, l.3026
この後の八幡が結衣と雪乃と会話する機会がいろはの故意であるということ。
「ちょっと休憩してきたらどうですか?わたし、ここいますんで」vol.14, l.3054
この休憩時間中に八幡は結衣と踊る。 魔法が解けたシンデレラをお家で待っていたのは、
vol.14, l.3167 とシンデレラを引用している。のでいろはは魔法使い役であって、いろはの故意が伺える。
但し結衣と踊った後にいろはは(一義的には呼び出しに応じなかった事ではあれ)怒っていることから、いろはは八幡と雪乃との為に時間を作った可能性はある。
インカム外しちゃいまーすvol.14, l.3185
いろはは八幡と雪乃の二人きりにするという宣言。とはいえ間違いなく二人の会話を聞いていよう。
いろはは、八幡の 「責任がある」
vol.13, l.0693 という言葉で、八幡が自身に全く興味を持たない事に気付く。 「どこかかで区切りつけないと、このままずるずる行くところだったからな。」
vol.13, l.1147 という言葉で、奉仕部の終焉、崩壊に対して自身に責任の一端があると考える。
であるから、いろはは、今後も奉仕部に関わるために、奉仕部の関係を維持しようとした。八幡と結衣にプロム中のポストを用意した。結衣と踊る機会と、雪乃と会話する機会とを設けた。「ずるずる行く」事を八幡が否定する事を知りながら、それでも、 「なし崩しになぁなぁの関係続けるのって悪くなくないですか?」
vol.14, l.3007 と提案した。 躊躇する結衣に対して 「彼女がいる人好きになっちゃいけないなんて法律ありましたっけ?」
/ 「諦めないでいいのは女の子の特権です!」
vol.14, l.6136 と煽った。
すなわち、いろはが八幡らに介入した理由は、責任感によるもの、だろう。つまり、いろはは、八幡ら三人の関係が崩れたのは、いろは自身がプロムの話を持ち込んだからだと確信して、だから三人の関係を修復するべく行動している。