14.5巻 新奉仕部

14.5巻 新奉仕部

4月。 八幡らは夏頃には部活を引退する。それに備えて八幡らは新奉仕部にいろはを加入させ、奉仕部を存続させる。

再録ではあって最終章を除き考察の要素、伏線の回収、修辞、トリック、等、がほぼ存在しない。かつその初出が円盤再販特典、タイアップ、イベント用脚本、である。よって、矛盾はあるし違和感等も拭えない。が、本稿はこれらを扱わない。

1. いつもいつでも比企谷小町はお義姉ちゃんが欲しい。

1. 1/1 初詣からの帰宅後、 比企谷宅 vol.14.5, l.0017

八幡の与太話

  • 登場人物
    • 比企谷八幡
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町, 三浦優美子, 比企谷父, 比企谷母

2. 1/1、 比企谷宅 vol.14.5, l.0051

小町と八幡のお義姉ちゃん候補あるいはキャラクター紹介。雪乃, 陽乃, 沙希, 留美, 平塚。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 川崎沙希, 川崎京華, 川崎大志, 平塚静, 雪ノ下陽乃, 鶴見留美, カマクラ

キャラクター設定の一部開示あるいは回収。

2. それでも、比企谷小町はお義姉ちゃんを諦めない。

1. 1/2 結衣と買い物して雪乃にプレゼントを渡した後、 比企谷宅 vol.14.5, l.0141

八幡の与太話

  • 登場人物
    • 比企谷八幡
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 雪ノ下陽乃, 葉山隼人, 雪ノ下母

2. 1/2、 比企谷宅 vol.14.5, l.0166

小町と八幡のお義姉ちゃん候補あるいはキャラクター紹介。結衣、三浦、海老名、葉山、戸部。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 由比ヶ浜結衣, 川崎沙希, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, カマクラ

3. 正月、 比企谷宅 vol.14.5, l.0251

話者は小町。クロージング。

  • 登場人物
    • 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 比企谷八幡, カマクラ

キャラクター設定の一部開示あるいは回収。

いろは評はない。正月の時点で小町といろははまだ出会っていない。

3. そして、祭りは終わり、また新しい祭りが始まる。

1. 春休み、 フェス会場 vol.14.5, l.0262

八幡の影ナレ。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡
  • 言及される人物
    • 比企谷小町

2. 春休み、 フェス会場 vol.14.5, l.0309

煽り。八幡と小町。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町

無茶無理無謀な合同プロムを口八丁手八丁舌先三寸どうにかこうにか乗り切って、ようやく迎えた春休み。vol.14.5, l.0310

時期に矛盾。合同プロムは 「ちょうど離任式の日なの」 vol.14, l.5582 かつ 離任式は四月頭に予定されていたはずだvol.14, l.3357 。まあどうでも。

3. 春休み、 フェス会場 vol.14.5, l.0371

注意事項。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは

4. 春休み、 フェス会場 vol.14.5, l.0405

休憩後の朗読劇。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 比企谷小町, 戸部翔

4. さりげなく、なにげなく一色いろはは未来を紡ぐ。

1. 4月16日休み時間、桜の花びらが蟠っていた。、 校舎中庭 vol.14.5, l.1076

放課後に奉仕部でいろは誕生日サプライズお祝いの予定。いろはは八幡と週末の予定を取り付ける。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは

「プレゼントは一応別の用意を検討していてだな」 / なんなら放課後に渡すつもりなんだけどvol.14.5, l.1246

いろはの誕生日サプライズは現時点で未回収。

「今週末とかどうですか?わたし、暇じゃないですかー?」 / 「じゃあ、週末、楽しみにしてますねー!」vol.14.5, l.1255

いろはとの週末デートは現時点で未回収。

5. けれど、きっと彼女たちもまちがい続ける。

俺ガイル本編と同様のホワイダニットであり、同様に先入観を用いたトリックであり、同様に謎解きはなされない。しかし俺ガイル本編と異なり、アンソロジー4いろは篇と同様に読者への挑戦状の提示をいろはが担い、アンソロジー2小町篇と同様にその解法は理屈ではなく心情に寄り添っている。

1. 入学後一か月やそこら経過後、 奉仕部室 vol.14.5, l.1268

八幡も小町も新クラスで順調。雪乃と結衣は部長就任のプレゼントを買いに。八幡らが引退すると小町は奉仕部室で一人になる。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 川崎沙希, 川崎京華, 川崎大志, 葉山隼人, 海老名姫菜, 折本かおり, 比企谷父, 比企谷母

不意に沈黙が降りても特に気にならないvol.14.5, l.1289

八幡から見た現時点での葉山。八幡にとって最上級の友人の部類。材木座や雪乃級に。

『葉山と海老名さんに介護されている人』vol.14.5, l.1313

新たな設定、伏線、だろう。八幡は既に「葉山と海老名が一目置く人」でもある。

できることなら、あの日のように。その扉をノックもせず、無遠慮にからりと開けてくれる存在が現れてほしいと。vol.14.5, l.1559

この「あの日のように」であるので本文中に記載されている出来事だとする。

「奉仕部の扉を」「ノックをせず」「からりと」には 先生はからりと戸を開けた。vol.01, l.0120 のみが相当する。であればその存在は、平塚が八幡の人生を導いた様に、小町の人生を導く人物。

「奉仕部の扉を」「ノックをせず」であれば、 がらりと派手な音を立てて、部室の戸が開いた。 / 「やっはろー!」vol.14, l.5555 を含む。であればその存在は、一生の友となる、多少の軋轢を乗り越えてくれる人物。

後に現れた人物がいろはであるので、後者であろう。かつ「からりと」は俺ガイルでは扉を開ける効果音として頻出するため、特定する手がかりとして適切だとは言い難い。

紙コップを二つ並べる。vol.14.5, l.1644

伏線。小町もいろはも紙コップを使っている。

2. 放課後、 奉仕部室 vol.14.5, l.1568

小町、いろは。奉仕部モノマネ大会、一色いろはの好きなところ発表合戦。いろはのキャラの再定義。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣

「ほら、料理は愛情だから」/ 「いやいや、普通に技術の差ですから。雪乃先輩、結構手間暇かけてますもん」 / つい、小町の愛を疑ってしまったが、それを一色が否定してくれた。vol.14.5, l.1670

齟齬。いろはは雪乃のお茶が美味しいのは愛情ではなく技術だと言っている。

雪乃は主に紅茶を淹れる。小町は緑茶を主に淹れる。紅茶は高温で滲出させ、緑茶は低温で滲出させる。であるから緑茶の適温で紅茶を淹れてしまえば十分な香りが出ない。

かつ高温で滲出させる紅茶を猫舌に提供するべく冷ます為にはまた別の手間が必要になる。少なくとも茶葉をポットに入れたままでは茶は渋くなる。雪乃の手間暇とは恐らくここでの工夫を示す。

3. 放課後、 奉仕部室 vol.14.5, l.1809

いろはの依頼。学校説明会向けの奉仕部の紹介、すなわち奉仕部の存続の是非の検討。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 副会長

4. 放課後、 駅からほど近いカフェ vol.14.5, l.2036

八雪、予備校見学にかこつけたデート。同じ予備校に通う事で合意。雪乃は奉仕部継続による出会いの可能性に言及。雪乃は交際一か月記念のお菓子を用意している。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃
  • 言及される人物
    • 一色いろは, 比企谷小町
  • 聖地
    • 駅からほど近いカフェ : 駅からして不明。千葉や津田沼かもしれない。

「うちで働く?普通のアルバイトよりは割りがいいと思うけれど」 / 「ちょうどいいタイミングだと思ったのだけれど......」vol.14.5, l.2153

「父さんに、いつか、紹介......します」 / 「そうね、六月半ばなら空いているからそこにしましょう」vol.A1, l.3529 のことか。

5. 同日放課後、 奉仕部室 vol.14.5, l.2364

いろは話者。結衣曰く、奉仕部参加は夏まで。いろはや小町はそれ以降の奉仕部を考えていなかった。結衣案「新入部員じゃんじゃん入れよう」。

  • 登場人物
    • 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃

「小町的には、まあ、しばらくそういうのはいいかなーと思ってるんですけどねぇ......。」vol.14.5, l.2436

「興味あるなら、お米ちゃんも生徒会室来ます?」 / 「そういうのはいいです」vol.A4, l.3383 を引く。「小町的には」でとあるから、いろははそういうのはよくない、ということ。つまりこのときいろはが小町を生徒会の見学に誘った理由が、既に小町の新奉仕部からの解放だった、ということ。

わたしがほんの一瞬、奉仕部がなくなるなら生徒会でできないかな、なんて考えてしまったvol.14.5, l.2443

「部活動としてじゃなくてもいいです。形は問題じゃないんです。生徒会としてでもいいんです。」vol.14, l.2983 のこと。

少なくとも、昔のわたしは思っていたのだ。わたしを含めた異分子をそこに入れたくはないと。vol.14.5, l.2445

「いろはちゃんも一緒に撮ろうよ」 / 「まずは奉仕部の皆さんでどうぞ」vol.10.5, l.2769 のこと。

6. 翌日放課後、 奉仕部室 vol.14.5, l.2471

八雪結、小町といろはにマグカップをプレゼント。八幡は何も言葉にしない。小町解、「いろはが奉仕部の存続を真剣に悩んでくれたから」「いろはを奉仕部に引きずり込む」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 比企谷小町

そんなのどうせ一言では言えないから、言葉程度で伝えられる気はしないから、みんなの前じゃ恥ずかしすぎて言える気なんてしないから。vol.14.5, l.2555

俺が小町に伝えるべきは / もっと別のことなのだ。vol.14.5, l.2297 の顛末。「別のこと」「そんなの」は、自分達が奉仕部で得た様な経験や出逢い、それらが貴重であったこと、それらに触れる機会を小町へと継ぐこと。八幡はこの機会の価値や継承の意図を小町に伝えるべきだと解っていて、しかしそれでも一切を言語化しない。

但し すんと鼻を鳴らして、あはっと笑う。vol.14.5, l.2559 という描写からして小町には恐らく概ね伝わっている。

白とパステルグリーンを基調としたワイルドストロベリー柄があしらわれたマグカップがある。 / 「少し遅くなってしまったけれど、奉仕部部長就任のお祝い」 / 「また奉仕部を作ってくれたことのお礼。」vol.14.5, l.2527

結衣は雪乃や八幡の言葉をわかりやすく翻訳する。であるから結衣の方が正しいのだろう。

このマグカップは Wedgwood の Wild Strawberry Collection とのこと。

「部員の証?的な感じで使って」vol.14.5, l.2532 / 「違ったんだ......」vol.14.5, l.2578

いろはを部員として受け入れる表現。

あるいはいろはにとっては あそこが、あの部室が、わたしの居場所だって呼んでいいかどうか、ちょっと微妙。vol.N4, p.006 と考えていた事が払拭されるということ。

結衣が本当にいろはが部員でないことを知らなかったのかどうかは疑わしい。いろはが評するに、 それでもあえてアホの振りしてちゃんと言葉にしてくれる人なのだvol.14.5, l.2434

「一人だけ紙コップというのも不経済でしょ」vol.14.5, l.2581

「一人だけ紙コップというのも不経済でしょ」vol.09, l.5546 の反復。

「いろは先輩が真剣に悩んでくれたからこそなのですよ。」 / 「先輩、この子やっぱり倫理観ぶっ壊れてますよ」vol.14.5, l.2602

結衣が奉仕部に参加した動機、 雪ノ下が由比ヶ浜の悩みに対して真剣に取り組んだからこそvol.01, l.1469 を引く。小町は同じ動機をいろはに見出し、それを逆手に取った、ということ。 やはり比企谷家の倫理観はぶっ壊れている 参照。

小町はその視線に若干怯えながらも楚々とした丁寧な手つきでゆっくりと紅茶を注いでいた。

「普通に技術の差ですから。雪乃先輩、結構手間暇かけてますもん」vol.14.5, l.1668 を引く。「楚々とした」は小町が雪乃の所作を真似ているということ。少なくとも小町がいる間は奉仕部部室の紅茶の技術は落ちない、その香りは変わらない、ということ。

いずれこの光景も失われ、この部屋の何もかもが変わるのだろう。 / けれど、それでも、きっと。 / きっとこの部屋の紅茶の香りは変わらない。vol.14.5, l.2634

彼女たちのいない、紅茶の香りもしないこの部屋で。vol.14.5, l.1480 との対比。あるいはさらに 紅茶の香りは、もうしない。vol.08, l.4572 も引くだろう。