14.5巻 新奉仕部

14.5巻 新奉仕部

4月。 八幡らは夏頃には部活を引退する。それに備えて八幡らは新奉仕部にいろはを加入させ、奉仕部を存続させる。

再録ではあって最終章を除き考察の要素、伏線の回収、修辞、トリック、等、がほぼ存在しない。かつその初出が円盤再販特典、タイアップ、イベント用脚本、である。よって、矛盾はあるし違和感等も拭えない。が、本稿はこれらを扱わない。

いつもいつでも比企谷小町はお義姉ちゃんが欲しい。vol.14.5, l.0017

1/1。帰宅後。小町による雪乃、陽乃、川崎沙希、鶴見留美、平塚静、等のお義姉ちゃんとしての評価。

キャラクター設定の一部開示あるいは回収。

それでも、比企谷小町はお義姉ちゃんを諦めない。vol.14.5, l.0139

1/2。帰宅後。小町による結衣、三浦、海老名、葉山、等のお義姉ちゃんとしての評価。

キャラクター設定の一部開示あるいは回収。

いろは評はない。正月の時点で小町といろははまだ出会っていない。

そして、祭りは終わり、また新しい祭りが始まる。vol.14.5, l.0260

新学期寸前。八幡と小町でフェス参戦、雪乃結衣いろは戸部合流。

無茶無理無謀な合同プロムを口八丁手八丁舌先三寸どうにかこうにか乗り切って、ようやく迎えた春休み。vol.14.5, l.0310

時期に矛盾。合同プロムは 四月頭に予定されていたはずだvol.14, l.3357。対ははのんゆきのんを「どうにか乗り切っ」た、ということにする。

さりげなく、なにげなく、一色いろはは未来を紡ぐ。vol.14.5, l.1074

4/16。いろはの誕生日サプライズ寸前。

「プレゼントは一応別の用意を検討していてだな」 / なんなら放課後に渡すつもりなんだけどvol.14.5, l.1246

いろはの誕生日サプライズは現時点で未回収。

「今週末とかどうですか? わたし、暇じゃないですかー?」 / 「じゃあ、週末、楽しみにしてますねー!」vol.14.5, l.1246

いろはとの週末デートは現時点で未回収。

けれど、きっと彼女たちもまちがい続ける。vol.14.5, l.1267

5月頭。 雪乃と八幡は予備校を選ぶ。

いろはの八幡らへの依頼、「八幡らが奉仕部を抜けた後の奉仕部の存続の是非の検討」。 八幡らは、小町といろはに、新奉仕部設立のお礼、部員の証、としてマグカップを贈り、移譲を告げる。これらを受けて、小町は奉仕部を存続してもよい、とする。

俺ガイル本編と同様のホワイダニットであり、同様に先入観を用いたトリックであり、同様に謎解きはなされない。しかし俺ガイル本編と異なり、アンソロジー4いろは篇と同様に読者への挑戦状の提示をいろはが担い、アンソロジー2小町篇と同様にその解法は理屈ではなく心情に寄り添ったものである。

不意に沈黙が降りても特に気にならないvol.14.5, l.1289

八幡から見た現時点での葉山。八幡にとって最上級の友人の部類。材木座や雪乃級に。

『葉山と海老名さんに介護されている人』vol.14.5, l.1313

新たな設定、伏線、だろう。八幡は既に「葉山と海老名が一目置く人」でもある。

できることなら、あの日のように。その扉をノックもせず、無遠慮にからりと開けてくれる存在が現れてほしいと。vol.14.5, l.1559

多少の軋轢を乗り越えてくれる人物。「あの日のように」であるので、恐らく平塚ではなく がらりと音を立てて、部室の戸が開いた。 / 「やっはろー!」vol.14, l.5555

紙コップを二つ並べる。vol.14.5, l.1644

伏線。小町もいろはも紙コップを使っている。

「ほら、料理は愛情だから」/ 「いやいや、普通に技術の差ですから。雪乃先輩、結構手間暇かけてますもん」 / つい、小町の愛を疑ってしまったが、それを一色が否定してくれた。vol.14.5, l.1665

齟齬。いろはは雪乃のお茶が美味しいのは愛情ではなく技術だと言っている。

雪乃は主に紅茶を淹れる。小町は緑茶を主に淹れる。紅茶は高温で滲出させ、緑茶は低温で滲出させる。であるから緑茶の適温で紅茶を淹れてしまえば十分な香りが出ない。

かつ高温で滲出させる紅茶を猫舌に提供するべく冷ます為にはまた別の手間が必要になる。少なくとも茶葉をポットに入れたままでは茶は渋くなる。雪乃の手間暇とは恐らくここでの工夫を示す。

「うちで働く?普通のアルバイトよりは割りがいいと思うけれど」 / 「ちょうどいいタイミングだと思ったのだけれど……」vol.14.5, l.2144

「父さんに、いつか、紹介……します」 / 「そうね、六月半ばなら空いているからそこにしましょう」vol.A1, l.3518 のことか。

「小町的には、まあ、しばらくそういうのはいいかなーと思ってるんですけどねぇ……。」vol.14.5, l.2436

「興味あるなら、お米ちゃんも生徒会室来ます?」 / 「そういうのはいいです」vol.A4, l.3383 を引く。「小町的には」でとあるから、いろははそういうのはよくない、ということ。つまりこのときいろはが小町を生徒会の見学に誘った理由が、既に小町の新奉仕部からの解放だった、ということ。

わたしがほんの一瞬、奉仕部がなくなるなら生徒会でできないかな、なんて考えてしまったvol.14.5, l.2443

「部活動としてじゃなくてもいいです。形は問題じゃないんです。生徒会としてでもいいんです。」vol.14, l.2983 のこと。

少なくとも、昔のわたしは思っていたのだ。わたしを含めた異分子をそこに入れたくはないと。vol.14.5, l.2446

「いろはちゃんも一緒に撮ろうよ」 / 「まずは奉仕部の皆さんでどうぞ」vol.10.5, l.2769

そんなのどうせ一言では言えないから、言葉程度で伝えられる気はしないから、みんなの前じゃ恥ずかしすぎて言える気なんてしないから。vol.14.5, l.2554

俺が小町に伝えるべきは / もっと別のことなのだ。vol.14.5, l.2297 の顛末。「別のこと」「そんなの」は、自分達が奉仕部で得た様な経験や出逢い、それらが貴重であったこと、それらに触れる機会を小町へと継ぐこと。八幡はこの機会の価値や継承の意図を小町に伝えるべきだと解っていて、しかしそれでも言語化しない。

但し すんと鼻を鳴らして、あはっと笑う。vol.14.5, l.2555 という描写からして小町には恐らく概ね伝わっている。

白とパステルグリーンを基調としたワイルドストロベリー柄があしらわれたマグカップがある。 / 「少し遅くなってしまったけれど、奉仕部部長就任のお祝い」 / 「また奉仕部を作ってくれたことのお礼。」vol.14.5, l.2523

結衣は雪乃や八幡の言葉をわかりやすく翻訳する。であるから結衣の方が正しいのだろう。

このマグカップは Wedgwood の Wild Strawberry Collection とのこと。

「部員の証?的な感じで使って」vol.14.5, l.2532 / 「違ったんだ……」vol.14.5, l.2578

いろはを部員として受け入れる表現。

あるいはいろはにとっては あそこが、あの部室が、わたしの居場所だって呼んでいいかどうか、ちょっと微妙。vol.N4, p.006 と考えていた事が払拭されるということ。

結衣が本当にいろはが部員でないことを知らなかったのかどうかは疑わしい。いろはが評するに、 それでもあえてアホの振りしてちゃんと言葉にしてくれる人なのだvol.14.5, l.2434

「一人だけ紙コップというのも不経済でしょ」vol.14.5, l.2581

「一人だけ紙コップというのも不経済でしょ」vol.09, l.5226 の反復。

「いろは先輩が真剣に悩んでくれたからこそなのですよ。」 / 「先輩、この子やっぱり倫理観ぶっ壊れてますよ」vol.14.5, l.2602

小町と新奉仕部の将来についていろはが真剣に悩んでくれたからこそ、小町はいろはとの友情を信じて、あるいは用いて、いろはを奉仕部に巻き込むことができる、ということ。 やはり比企谷家の倫理観はぶっ壊れている 参照。

小町はその視線に若干怯えながらも楚々とした丁寧な手つきでゆっくりと紅茶を注いでいた。

「普通に技術の差ですから。雪乃先輩、結構手間暇かけてますもん」vol.14.5, l.1669 を引く。「楚々とした」は小町が雪乃の所作を真似ているということ。少なくとも小町がいる間は奉仕部部室の紅茶の技術は落ちない、その香りは変わらない、ということ。

いずれこの光景も失われ、この部屋の何もかもが変わるのだろう。 / けれど、それでも、きっと。 / きっとこの部屋の紅茶の香りは変わらない。vol.14.5, l.2634

彼女たちのいない、紅茶の香りもしないこの部屋で。vol.14.5, l.1480 との対比。あるいはさらに 紅茶の香りは、もうしない。vol.08, l.4344 も引くだろう。