14巻 プロム〜ダミープロム

14巻 プロム〜ダミープロム

プロム後に奉仕部は瓦解する。自らのまちがいを悟った八幡は、結衣に関係性の修復を託し、雪乃を繋ぎ止める。結衣、小町、いろはの暗躍により新奉仕部として再生する。本編了。

Prelude1vol.14, l.0025

3/5夜。雪乃は結衣を呼び出す。

Prelude, 前奏曲、には、結衣と雪乃との関係が始まった夜、という意味を重ねていよう。

この結衣と雪乃の逢った夜以降結衣の言動は一貫していない。恐らく、奉仕部の関係性を継続するべく行動している。 本物の本質あるいは結衣案2とその変化 参照。

ここまで走ってきたのだろう。まだ息が上がっていてvol.14, l.0060

齟齬。結衣の独白に拠れば 言葉が出ないくらいに、その微笑みが綺麗だった。息を呑むって、きっとこういうことを言うんだと思う。 / 走ってきたから息が上がってたことにしてvol.14, l.0623

それでも、比企谷八幡の日常は続いていく。vol.14, l.0063

八幡は、雪乃は八幡の助けを受け流し、八幡依存からの脱却を貫いた、と雪乃の思考を誤解する。

八幡は結衣に「結衣の願いを叶えること」が雪乃の願いだと伝える。結衣の願いは「八幡の願いを叶えること」。

「そんな感じだから、みんなで集まってお祝いするっていうのは、ちょっと難しいかもしれない」vol.14, l.0260

「お祝いしてもらったりプレゼント貰ったりするのは嬉しいのですが、そいうのはまたみんなで集まったときにでいいのです」vol.13, l.3589 の回収。

ちょいと首を巡らせてみると、 / 皆めいめいに退屈をやり過ごしていた。vol.14, l.0313

相模、川崎、戸塚のみ描写される。三浦葉山を含めて、結衣方面を見ていないということ。意図不明。

「今日、時間あるか?」 / 「微妙かも。優美子たちと遊び行くかも」vol.14, l.0390

これ以降結衣は八幡との会話を回避しようとする。この時点で結衣は 「勝負の話。終わったの」vol.14, l.1041「だからせめて、あなたの願いを叶えたい」vol.14, l.1047 を聞いているから。

その素早い行動が昔日の雪ノ下雪乃を髣髴とさせる。vol.14, l.0455

齟齬。八幡は雪乃の行動力を評価している。しかし雪乃は たった一言伝えるだけなのに、随分と長い時間を掛けてしまった。vol.14, l.0026 とひどく逡巡した。

この章にはコミュニケーション失敗による齟齬が多数存在する。ロミオとジュリエットはコミュニケーション失敗による心中の物語であって、それに重ねる為だろう。

「勝負は終わりだ」 / 「そんなの、ヒッキーが勝手に言ってるだけだよ」vol.14, l.0529

矛盾。結衣は八幡の言う勝負の終わりを認めない。しかしこの時点で既に結衣は雪乃から 「勝負の話。終わったの」vol.14, l.1042 として勝負の終わりを聞いている。

雪ノ下は俺が立案したダミープロムは勝敗度外視の当て馬であることを即座に看破し、それを見越したうえで勝負を受けた。

まちがっている。八幡が対立を訴え雪乃が勝負を受けた時点で八幡の案は未定である。かつ、雪乃は 「彼ならきっとそうするんだろうなってわかっていて、なのに私はそれを拒めなかった」vol.14, l.0643 とする。雪乃は特に覚悟はしていない。

「だから、お前の願いを叶えさせてくれ」 / こんな一言を言うために、えらく時間がかかってしまった。vol.14, l.0536

齟齬。結衣は明らかに話をはぐらかしている。但し八幡の独白の通り「えらく時間が」は「一年間」をも指し、八幡にとって奉仕部が終わった表現、でもあろう。

Prelude2vol.14, l.0593

3/5夜。結衣は雪乃との会話を通して奉仕部の終焉を自覚する。

いずれ、この関係性にも慣れる時がくる。vol.14, l.0656

ダミープロム打ち上げ計画。

雪乃も八幡も「知り合い」程度の距離感への調整に失敗するが、八幡はいずれ慣れると考える。

「……大丈夫そうだな」 / 「今んとこまぁ何とかって感じです。」 / 「間に合うようにはしているつもり」 / 「って感じですね」vol.14, l.0969

齟齬。雪乃がまだ八幡との関係性に慣れていない表現。

八幡は結衣と雪乃の関係性について「大丈夫そうだな」と言っている。いろはもそれを理解して応答している。が、雪乃はそれを察知できず、「順調か?」の問いに答えている。

いろはは雪乃と八幡の関係を維持すべく行動している。 一色いろはも考えて行動している 参照。

「身分が上の人間に直接話しかけるのは不遜だって考え方もあるの。知らない?」vol.14, l.0992

冗談ではあって、しかし雪乃は嘘をつかない。雪乃は八幡とは今は通訳を挟まないと話せないということ。

Prelude3vol.14, l.1018

雪乃が結衣に曰く、「終わりにしたい」。結衣の望む「今のままで全部欲しい」に近い形に八幡がしてくれるはずだ。

嘘を吐かずに、本当のことを言わずに伝えるのは難しくてvol.14, l.1045

今の雪乃が八幡を諦める理由は、八幡の干渉により自立に失敗したことのみならず、 「こんな紛い物みたいな関係性はまちがっている。あなたが望んでくれたものとはきっと違う」vol.13, l.4517 という、八幡の依頼の未達成、である。すなわち結衣には関係がない。結衣への説明は難しかろう。

きっと、その香りをかぐたびに、思い出す季節がある。vol.14, l.1082

ダミープロム打ち上げ。三浦、八幡に「結衣に半端な事するな」と告げる。

結衣と結衣母とで小町への誕生日プレゼントとして桃缶でフルーツタルトを作る。

八幡は、小町へのプレゼントは小町と作る事にして、自作のタルトに隠し味を加えたものを結衣にホワイトデーとして贈る。

「ボドゲか〜、私も結構やるよ」 / 「人狼とか」 / 「脱出ゲームとか?」vol.14, l.1172

人狼も脱出ゲームもボードゲームではない。海老名姫菜がさしてボドゲをやっていないということ。とはいえここでは「結構やるよ」「結構流行ってるよね」に対して話題を展開させない遊戯部が悪い。

「マイナスはまだ取り返せるだろ」 / 「なぁ、君は……」vol.14, l.1484

葉山から八幡に対する応援あるいは発破。葉山は既に取り返せない。 だから、彼に押し付けたのだ。せめて、彼らだけはと。vol.13, l.3226

「何年か経って、大人になった時に桃を食べたら、こういうことあったなーって思い出すでしょ? 手作りお菓子ってそういうのが素敵なの」 / 「男の子にはこれが一番効くんだから」vol.14, l.1720

結衣の初回依頼での「桃缶」は、クッキーではなくかつ充分な料理の腕があれば、模範解答だった、ということ。結衣は概ね正しいという傍証。なおこのとき雪乃は 「隠し味はいいの、桃缶とかは今度にしましょう」vol.01, l.1194 として否定した。

いつだったか、雪ノ下と一緒に出掛けた先で買ったものだ。vol.14, l.1763

誕生日プレゼントとして 薄いピンクを基調とした装飾の少なめなエプロンだった。vol.03, l.1407 で購入したもの。

プロム篇は3..4巻の伏線の回収が多く、エプロンも何らかの暗喩もしくは伏線であろうが不明。

その光景はカタログに載ってそうなくらいの幸福感がある。vol.14, l.1770

結婚生活を意識した表現。

「あとは隠し味を入れれば完成ね」vol.14, l.1870

「隠し味とは何か」。文中には「まごころ」以外に解がない。実際に後に明かされる解は真心こもってていいと思う〜vol.A3, l.3264

典型的な解は愛情だろう。それを問われ、しかし逃げを繰り返して、問い詰められた果ての回答が「まごころ」であるのだから、つまりは八幡は結衣に対して誠実であろうとしていて、しかしそれは愛情ではない、ということ。さらに ガハママは正否を告げる代わりにふっと微笑んだ。vol.14, l.1886 とは、由比ヶ浜母は八幡のその意図を看破したということ。

なお、結衣による正答は ケーキ出す時にマグカップで飲み物も一緒に出してそのカップが実はプレゼントなんだよー!vol.12, l.4064 。この時点で既に小町の奉仕部入りを予期していたかもしれない。

「ちょっと早いんだけど」vol.14, l.2004

ホワイトデー。

三浦の問いかけに対する答えらしきものをふと思う。vol.14, l.2019

三浦の問いかけとは 「あんた、どう思ってんの?」 / 「結衣のこと」vol.14, l.1321 。直前の叙景からして否定的な答えではなかろう。

そんな、ありえない想像をした。vol.14, l.2064

八幡は結衣との関係は長くは続かないと考えている。

Prelude4vol.14, l.2023

結衣は雪乃の気持ちを聞き、雪乃は結衣の気持ちを聞く。雪乃は八幡への恋心を認める。

だから、今や雪乃と結衣と八幡の願いは等しい。結衣は雪乃に「八幡は雪乃に何かを諦めてほしくない」と告げる。しかし雪乃はまだ諦めている。

「ゆきのんの気持ちごと、全部貰う」 / 「あたしの気持ちも全部貰って?」vol.14, l.2039

「あたしが勝ったら、全部貰う」vol.11, l.3961 の反復。

ずっと、見ないようにして、気づかないふりして、知らないことにしていたけどvol.14, l.2053

恐らく ずっと見ない振りして、ずっと知らないふりして、ずっとわからないふりをしてきた。 / 本当は気づいているのに。vol.13, l.2518 の反復。

そして、雪ノ下雪乃は静かに手を振る。vol.14, l.2114

卒業式後プロム。

雪乃母は雪乃の意思を把握する。八幡は雪乃に干渉してはならないと悟る。陽乃は八幡を理解ししかし失望する。

いろはは八幡に生徒会で奉仕部を吸収する選択肢を示す。八幡はそれを拒否する。それでもいろはは結衣や雪乃との時間を作る。

八幡は結衣と踊る。最後に雪乃と馴れ合う。ロミオとジュリエットに自分たちを重ねる。

男女にくっきり分けられて、クラスごとに横一列五十音順に並べられている中でvol.14, l.2148

初出は 俺のすぐ前の番号が葉山だ。そして、そのすぐ前が戸部。そのさらに前が戸塚vol.06.5, l.2697

涼やかな黒髪と白い細面が、今どんな表情をしているかは、きっともう見ることはないのだ。vol.14, l.2200 / 陽乃さんはこの後のプロムにも顔を出すのだろうか。俺とはもう関係のないことだがvol.14, l.2242

つまり八幡はプロム本番を手伝う事はないと考えている。

実際に八幡は、結衣に生徒会室へと誘われ、いろはに雪乃との会話の機会を設けられ、プロム後に陽乃と平塚に会わなければ、雪乃との復縁に至る事はなかった。

「お前ら、文化してるかー!」vol.14, l.2387

「お前ら、文化してるかー!?」vol.06, l.2611

雪ノ下は / マスキングテープを取り出すと、 / それぞれのフェーダーの下に貼った。 / 俺は / そのテープに『雪ノ下』『一色』『予備』と書き込んでいく。vol.14, l.2689

八幡と雪乃で意思疎通に全く問題がない表現。

「だいじょぶそう?」 / 「慣れればなんとかなる」vol.14, l.2762

話題はPA卓操作でもあり、雪乃との会話でもあり。

「キュー出し、これでするわ」 / 「おお、なんか懐かしいな」 / だが、雪ノ下は特に何を言うこともなく、くるっと背を向ける。vol.14, l.2787

雪乃は感情を八幡に見せない。雪乃の感情は描写されない。

「彼、お上手なの。私も踊らされたくらい」 / 「わざわざ当て馬を立てて時間稼ぎをしただけの甲斐はあるわ」 / 「なかなかよくできた計画ね」vol.14, l.2870

雪乃母は八幡と雪乃が協調していたと思っている。であるから恐らく雪乃母は雪乃と八幡が対立していること、雪乃が八幡を諦めようとしていること、を知らない。

この場にいる誰も彼も、ただ楽しければそれでいいという連中だ。](vol.14, l.3137)

八幡も。

ただ一人、俺を見ているのは由比ヶ浜だけだ。vol.14, l.3138

まちがっている。平塚は見ている。 「見てて楽しかったよ」vol.14, l.3351 。雪乃は見ているだろうし、陽乃やいろはも恐らくは。

ややスローテンポな曲だ。 / 「……そろそろ戻るわ」vol.14, l.3157

八幡は結衣とスローダンスを踊らない。

けれど、今は俺と彼女の二人だけらしい。vol.14, l.3214

であるから、同様に、まずまちがっていよう。いろはは聞いているだろうし、陽乃も恐らくは。

「そう。それであなたはどこにいるの?客席?」vol.14, l.3199

「それよりさっきからどこにいるの?客席?」vol.06, l.2650 を引く。

幸せだった頃の回顧・追憶の表現であって、雪乃も八幡も終焉を意識し、八幡の地の文もひどく感傷的である。ロミオとジュリエットまでも引用するが為に、悲壮感さえ漂う。がしかしこの馴れ合いは くだらない冗談を飛ばしてvol.14, l.3248 に含まれ、すなわち、八幡の考える「正しい距離感」の範疇である。八幡と雪乃はもっと近い距離感を求めていた、という表現である。

『これで終わりにしましょう』 / 雪ノ下がさっと手を上げ、俺にハンドサインでキューを振る。 / 「はいよっと」 / それに、インカムで返すことはなく、独り言で返事をした。vol.14, l.3253

八幡は「これで終わりにしましょう」を無視した。「それ」とはハンドサインによるキュー。つまり「はいよっと」はキューに対する応答。「はいよっと」は「これで終わりにしましょう」に対する応答としては軽い。

Interludevol.14, l.3271

雪乃も自身をジュリエットに重ねていた。

ロメオとジュリエット

シェイクスピアの恋愛悲劇。

恋仲のロミオとジュリエットは、ジュリエットの実家に交際を反対される。ジュリエットは実家を説得すべく服毒して仮死状態になる。しかしそれを知らないロメオは仮死状態のジュリエットを見て自殺する。仮死状態から目覚めたジュリエットもロメオの遺体を見て後追い自殺する。

このすれ違った末の心中を、八幡は あんなハッピーエンドにはとても及ばないvol.14, l.3236 、雪乃は あんなにわかりやすく幸せな結末を迎えることはないvol.14, l.3275 と表現する。

さらに雪乃は、 私は毒薬みたいに甘い言葉を飲み込んだ。そうして、私は私を眠らせる。vol.14, l.3281 として、服毒するジュリエットに自身を重ねる。殺した自分の恋心への同調を 『お願い、絶対叶えてね』vol.14, l.3246 として八幡に託す。

この後の八幡と雪乃をロメオとジュリエットに準えるならば、八幡はこの後雪乃の冷えた態度を受けて雪乃への想いを諦め、雪乃はその八幡を受けて八幡への想いを諦める、と続くのだろう。

そして八幡と雪乃は、その緩慢な終焉よりも、共に死ねる方が幸福だ、と考えている。

あるいは平塚はそれを 余人に理解されない / 閉じた幸福vol.09, l.4896 と許容する。葉山は 共になくてはならない存在で、一緒に地獄に落ちられたなら、そんなにも幸せなことはないvol.13, l.3238 と妬む。

一方で結衣には悲壮感がない。八幡と雪乃の悲劇はたかだか恋人関係になれない程度であって、接触がなくなる訳ではない。 恐らく 「二週間口きかないとかそんな感じじゃない?」vol.N1, p.070 はプロム後からダミープロム再始動までの時期を指している。

颯爽と、平塚静は前を歩く。vol.14, l.3292

プロム終了後。

雪乃は母親に「父の仕事に携わりたい」と訴えて認知される。雪乃と結衣は三人の関係の終焉に合意する。八幡は逃げる。

陽乃は雪乃の実家継承の願いは代償行為だと指摘する。

平塚は「共依存」という言葉から八幡を解放し、言葉も行動も尽くせと行動指針を与える。

八幡は結衣を傷付けて雪乃を選ぶ事を決心する。

「でも、よかったね、ゆきのん」vol.14, l.3443

結衣の「よかったね」は「母とコミュニケーションを取れたこと」に対して、だろう。

但し、「雪乃が家業承継できる可能性が生まれたこと」と考えるならば、結衣がまちがっている、かも知れない。結衣は「よかったね」と評しているが、陽乃や雪乃は 「イエスもノーも言っていない実質的なゼロ回答だった」vol.14, l.3654 とする。

「けど、もう……大丈夫。これからは一人で、もっとちゃんとうまくやれるように頑張るから」 / 「だから……」 / 言葉の続きはついぞ聞こえはしなかったが、どんなことを口にしようとしたのかはおおよそ理解できていた。vol.14, l.3583

八幡は、あるいは読者は、この雪乃の聞こえなかった言葉を 『お願い、絶対叶えてね』vol.14, l.3246 に類する言葉だとしていよう。だがしかし、八幡はまちがえていて、「だから、助けて」だったとする事もできる。 「だから、これで終わりにしましょう」 参照。

取り返しがつかないほどに歪んでしまったこの関係は俺たちが求めたものではおそらくなくて、どうしようもない偽物だ。 / だからせめて、この模造品に、壊れるほどの傷をつけ、たった一つの本物に。vol.14, l.3970

「偽物」は八幡と雪乃の関係、「模造品」は八幡と結衣の関係。であれば「本物」とは傷つけられた結衣と八幡の関係のこと。但し「壊れるほどの傷をつけ」はこの時点での八幡の決意に過ぎず、この「本物」は結衣が修復した新奉仕部のそれらではない。

転換点あるいはロレンスがジュリエットの意図をロミオに伝えていたならば

陽乃は恐らくプロムでの八幡と雪乃の会話を傍聴していた。いずれにせよ陽乃は八幡に「雪乃の願いは代償行為だ」と指摘し、行動を促す。 陽乃による指摘とまちがいの自覚 参照。

陽乃の指摘を受けて、八幡は、「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」こそが「歪んだ欺瞞」であった、結衣の言う「ずっとこのまま」を受け入れるべきだった、事に気付く。 「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」はまちがっている。 参照。

いつかのように、由比ヶ浜結衣は希う。vol.14, l.3972

総武高校入学許可者説明会。

八幡は小町に「奉仕部は俺が無くす」と宣言する。

結衣は八幡と雪乃との関係を維持しようと努力し、しかし八幡は結衣を切り捨てる。

「奉仕部はなくなるぞ」 / 「なぜなら俺がなくすからだ」 / これはあの時、応えることができなかった俺の結論だ。vol.14, l.4062

「あの時」とは、プロム後の 「終わらせるなら、今がいいと思う。」 / 「ゆきのんがそれでいいなら、いいよ」 / 「………俺は」vol.14, l.3535

彼女はいつも待ってくれていたのだ。俺を、あるいは俺たちを。vol.14, l.4117

典型は 「あたしね、ゆきのんのことは待つことにしたの」 / 「でも、待っててもどうしようもない人は / 待たないで、……こっちから行くの」vol.06, l.2874

結衣は精神面や対人スキル面で八幡や雪乃よりも成熟していて、本編中でも、適切な選択肢を多数示したり、齟齬を未然に防いだりしている。他方で八幡も雪乃もそれらをまだ少しづつ学習している。この状況を 「待ってくれていた」 と表現している。

「……俺は、終わらせてもいいと思ってる」 / あの時、彼女たちに面と向かって言えなかった言葉がようやく言えた。vol.14, l.4241

「あの時」とは 「終わらせるなら、今がいいと思う。」 / 「ゆきのんがそれでいいなら、いいよ」 / 「………俺は」vol.14, l.3535

「えっと……寄ってく?」vol.14, l.4161

なおこの日に結衣親は在宅している。 顔を上げると、ママがいたvol.14, l.4398 。であるので結衣の「お願い」とは性的な事だとは考えにくい。

「本当に、大事なお願い」(vol.14, l.4224)

「本当に、大事なお願い」vol.14, l.4224 に始まる八幡との会話の中においても結衣は自案を状況に適合させ続ける。本当に大事なお願い あるいは結衣案3 参照。

「お前はそれを待たなくていい」

「……けど、お前はそれを待たなくていい」vol.14, l.4367 は、

という帰結による台詞である。 「お前はそれを待たなくていい」 参照。

Interludevol.14, l.4384

結衣、号泣。

Interludevol.14, l.4404

いろは、ダミープロム実施を知り、八幡の目的が雪乃であることに思い至る。

先輩の周りでこういうのを手伝ってくれる人は、わたし以外では一人しかいない。vol.14 l.4456

沙希や小町がいるのでそんなこともない。けれどそもそもいろはもたぶん手伝わない。

先輩の悪口大会なら別の時にしてほしい。そしたらわたしが絶対優勝するのに。vol.14 l.4549

八幡の悪口大会は interlude 何はともあれ、由比ヶ浜結衣は相槌を打つ。vol. N2, p.004 にて回収。参加者は結衣、いろは、小町。

想いは、触れた熱だけが確かに伝えている。vol.14, l.4557

八幡案。目的は雪乃と再度関わる機会を持つこと。ダミープロムを復活させ、陽乃経由で雪ノ下母を呼び出し、それにより雪乃の「雪ノ下家の問題」という言い訳を封じる。その上で雪乃にダミープロムへの協力を依頼する。

八幡、雪乃にほとんどプロポーズ。雪乃、受ける。

ダミープロムを通じて八幡が雪乃を翻意させた過程は ダミープロム もしくは八幡案2 参照。

もう一度、その扉は開かれる。vol.14, l.5127

ダミープロムは合同プロムとして実現へ。

葉山戸部三浦海老名戸塚川崎、いろはと生徒会、材木座遊戯部、結衣、等が集結し、マンパワー問題が解決する。海浜総合により予算問題が解決する。

八幡と雪乃はロケハンを兼ねてデートする。周囲は二人の関係を察するも、二人は恋人宣言はしない。

「もともと捨て案としての企画だったから」vol.14, l.5207

雪ノ下母や陽乃と同じく雪乃も初見で八幡のプロム案が捨て案であることを見抜いている。

「疲れすぎて語彙力死んじゃってるじゃん……」vol.14, l.5282 / 「見慣れてるのも安心感があっていいが、新鮮なのもそれはそれでいいな。うん。いい……」vol.14, l.5300

雪乃の語彙力低下を揶揄しつつ自身も語彙力を捨てている。いわゆる天丼。

「あなた、本当に千葉好きね。」vol.14, l.5328 / 俺より数歩先んじて / 「あなた、本当に千葉が好きなのね」vol.14, l.5360

雪乃は故意に表情を隠す。故に雪乃の感情、表情は描写されない。例えば 「はぁ……馬鹿な理由ね。」 / 「っ……、馬鹿な理由ね」vol.03, l.1723 と等しい。

みんな、薄々察しながら気を使って黙ってたの……?vol.14, l.5939

八幡がコミュニティに参加していること、対人関係スキルを獲得したこと、成長していることを示す。かつて八幡は周囲を観察し噂を冷笑する側だった。今や観察され噂される側になっている。

但しサウナのエピソード自体は戸塚が男性であることの開示だろう。

「うむ、我も熱くて限界だ!」 / 「僕も……」vol.14, l.5949

もしかして材木座は返答に困る八幡を助けたかもしれない。

すぐに、先を行っていた一色に追いつくとvol.14, l.6023

結衣はまだ雪乃や八幡には合流しない。

俺は無言で手を差し出す。 / 「一人で立てるのに……」 / 「知ってる」vol.14, l.6025

二人の距離感、さらには「共依存」という言葉を克服した様、を示す。 マイクをセットした。 / 「……これくらい自分でやるのに」vol.14, l.2798 を引く。

Interludevol.14, l.6034

結衣、いろはと小町に元気づけられ、八幡と雪乃の場に加わる。

「先輩の妹……。 あ、お米の人」vol.14, l.6053

「は? 小町……? 誰ですか? お米?」vol.11, l.0335 。八幡にチョコレートを贈る誰かがいろはにとってどれだけ印象深かったか、潜在的な敵であるか、が伺える。

「兄の妹の小町です。兄の尻ぬぐ…お手伝いにやってまいりました!」 / 難しそうな言葉を分かりやすく言い直してvol.14, l.6058

齟齬?難しいか?

「初対面の女子はこうやって呼び方でちゃんと序列付けとかないと後で揉めるし」vol.14, l.6081

「なにヶ浜ちゃんだったっけ?」vol.05, l.1890 , 「ま、いいや。委員長ちゃんね」vol.06, l.1358 など、概ね陽乃の手法。かつ、 ああ、こいつ、有力者に取り入り、あわよくばそのノウハウを得ようとしているのでは……vol.10, l.3064 として、いろはは陽乃のノウハウを得ようとしていた。

「本気で酔う前に寝たふりしてその場をしのぐのが八幡メンタルなんです」 / ほんとにそう、絶対そう。わかる。vol.14, l.6088

結衣が実際にその場をしのがれた 「えっと……寄ってく?」 / 「いや、やめとくわ。また晩飯ごちそうになっちゃいそうだし」vol.14, l.4161 を回収するだろうか。

「誰からも愛されなかった兄をこの十五年誰が愛してきたと思っているのですか」vol.14, l.6098

小町のキャラクター設定の回収。無償の愛を供する母親役に相当しよう。

とはいえ結2を見るに親から金と飯はもらってる。ので「誰からも」はちょっと言い過ぎ。

「小さい頃の兄はそれはもう可愛くて……」 / 前に二人で出かけた時に、そんなこと言ってたなーって思いだしてvol.14, l.6099

「小さい頃の俺とか超可愛いからな。」vol.12, l.4035

「人の気持ちどころか自分の気持ちも踏みにじるカスなんです!」vol.14, l.6123

典型的には嘘告白のこと。あるいは 「……けど、お前はそれを待たなくていい」vol.14, l.4367 さえも。

「彼女がいる人好きになっちゃいけないなんて法律ありましたっけ?」 / 「諦めないでいいのは女の子の特権です!」vol.14, l.6136

結衣の動機付けであると同時に、いろはのキャラクター設定の回収でもある。

「向こうが振り込んできたらそれはそれでって感じですけどわざわざ待ち変えたり手を崩してまでベタオリする気はないんで」vol.14, l.6141

麻雀。一色の八萬(はちまん)待ち。

「えー……お米ちゃん誰の味方なの?」 / 「無論、兄の味方です。」vol.14, l.6161

プロム後の奉仕部再設立計画。 「奉仕部はなくなるぞ」vol.14, l.4062 を受けての行動。

「兄の味方です」 とは、

ので、それらの理由を代わりに用意する、ということ。 「いろは先輩にも悪い話じゃないかと」vol.14, l.6159 とは、

ということ。いろは曰く、 わたしとは利害が一致しているからvol.N1 p.069

あたしが居たいと思う場所へ、駆け出した。vol.14, l.6172

「ヒッキーとゆきのんがいるところにあたしもいたいって思う」vol.14, l.4324

その青は、月日に色あせても変わらず青い。vol.14, l.6173

平塚離任式、その後に合同プロム開催。

雪乃母と陽乃は八幡を雪ノ下家に受け入れる。八幡が理解するに、雪ノ下家は対立と敵対がコミュニケーションと教育である。

結衣曰く、自身の願いも叶った。八幡に何かを言い淀む。

八幡と平塚は「本物」を語り、別れる。

雪乃は拙くとも自分の言葉で八幡に告白する。

「砂浜へ出る人のためにマットを適宜交換するのは館内スタッフを統括するあなたが見ておいて。」vol.14, l.6194

この期に及んでまだ伏線。最高だなぁ……。回収は 「ホールに砂が入らないよう、マットを適宜交換するようにって」vol.14, l.6509

いつだか、陽乃さんが言っていたことを思い出す。 / 敵の存在こそがもっとも人を育てるのだと。vol.14, l.6228

文化祭での 「敵がしっかりしていないと成長もしないからね」vol.06, l.2454

この親子は、あるいはこの姉妹は、対立することがコミュニケーションであり、敵対することがエデュケーションなのだ。vol.14, l.6267

雪ノ下母及び陽乃の設定の回収。すなわち雪ノ下母も陽乃も徹頭徹尾雪乃を愛し教育している。

「比企谷くん。ご迷惑おかけするけど、よろしくね」vol.14, l.6273

雪ノ下母が八幡を認めた表現。八幡の 「そのへんの責任も、まぁ、取れるなら取るつもりです」vol.14, l.4835 への返答。あるいは陽乃の 「……覚悟決めてね?」vol.14, l.6228 と合わせ、さらに八幡も雪ノ下家の教育の対象である、という表現。

「君と踊るのをすっかり忘れていた」vol.14, l.6377

「私も君と踊ってみたかった」vol.14, l.3362 の回収。

その青すぎるくらいに青々とした背表紙vol.14, l.6433

メタだが物理書籍版ガガガ文庫の背表紙は青い。

「共感と、馴れ合いと、好奇心と、憐れみと、尊敬と、嫉妬と」vol.14, l.6446

「サクラダリセット」というラノベからの引用。強い意味は持つまい。

俺ガイルには意味を持たない引用、パロディ、は大量に存在する。だけれども、意味を持つ決め台詞、重要な台詞、ではその種の引用はしていない。

かつ、俺ガイルでは、この種の羅列はそれぞれに参照先を持つ。 だが、八幡から雪乃に対する感情表現に哀れみ、尊敬、嫉妬、等は描写されない。

であるから、元ネタが解る人間がくすりとできればいい程度の言葉遊び、だろう。なおハチミツとクローバーの引用と思しき「あなたの人生をわたしにください」も同様。

この台詞がパロディであることを重視するなら例えばさらに下記を示すかも知れない。

「だから、ずっと、疑い続けます。」vol.14, l.6455

最終的な「本物」の定義。この宣言は八幡の平塚からの卒業を示すだろう。 本物とは脱構築である 参照。

「リア充爆発しろー!」vol.14, l.6479

1巻冒頭の八幡の課題レポート 「高校生活を振り返って」vol.01, l.0017 の最後。

「……ねぇ」 / 「なんでもない。また今度にする」vol.14, l.6327

何を言い止したか不明。告白しようとして雪乃に先を譲っただろうか。

「あなたが好きよ。比企谷くん」vol.14, l.6541

愛情表現として著しく拙い。しかしだからこそ自分で考えた自分の言葉であって、 「今だって、どう振る舞っていいかわかってないんでしょ?」vol.11, l.3087 からの成長を示す。

だから、比企谷八幡はそう言った。vol.14, l.6550

新学期。奉仕部部室で合同プロムの残務処理。

雪乃母が八幡を認める。

小町といろはが結託して奉仕部を設立。結衣が参加し八幡に告白する。了。

数いる知り合いの中でも葉山隼人と海老名姫菜というvol.14, l.6560

マラソン大会での葉山の進路の回収。つまり葉山は文系を選択した。

「あたしの好きな人にね、彼女みたいな感じの人がいるんだけど、それがあたしの一番大事な友達で……。」vol.14, l.6677

告白。「みたいな」。八幡と雪乃はこの時点でもまだ交際を認めていない。

「これからもずっと仲良くしたいの。どうしたらいいかな?」vol.14, l.6677

1巻での結衣の依頼の回収。すなわち1巻での結衣の依頼は「八幡と仲良くなりたい」。 結衣の依頼は「料理を上達したい」ではない。 参照。

かつ、結衣と雪乃の間に、初回依頼時と同様に今も八幡の知らない密約が存在することの対比。 その密約とは 「ゆきのんの気持ちごと、全部貰う」 / 「あたしの気持ちも全部貰って?」vol.14, l.2039 という気持ちの交換。