雪ノ下母は脅迫に屈してはいない。

雪ノ下母は脅迫に屈してはいない。

「ひきがや……」 / 「そう……、あなたが……」vol.13, l.4353

読者への挑戦状。ひきがやが、何か。

あるいは雪ノ下母は言外の脅迫という手段を用いる八幡に好感を持った。なぜ脅迫に好感を持ったか。何故その程度の理由でプロムの実施に同意したか。

あなたが、事故の被害者である比企谷八幡、かつ、雪乃が好意を寄せる相手。

つまり、雪ノ下母は、雪乃が「比企谷」、交通事故の被害者に好意を寄せていることを事前に知っていたから、プロムの実施に同意した。「そう……、あなたが……」は、事故の被害者と、雪乃の相手、のダブルミーニングである。

トリック

証拠、傍証

「今日のこと、お母さんに話したら驚くだろうなぁ……、ね?」vol.06, l.3869

文化祭後。この通りに陽乃は雪ノ下母に雪乃が比企谷に好意を寄せる事を本当に知らせた、とする。

知らせた理由は例えば 「雪乃ちゃんのためにしてあげられることはしてあげたいんだよ〜」vol.06, l.1308 。あるいは雪乃が八幡や結衣との接触を控えさせられていたとするならば、これを解除する為。 雪ノ下家は雪乃を隔離した? 参照。

「陽乃。お友達?」 / 「そ。八幡とガハマちゃん」vol.10, l.1045

正月の雪ノ下母と八幡の面着の時点で雪ノ下母は「八幡」という名前を認識しない。

なお、このとき、雪ノ下母は八幡を陽乃の友人として把握した、と解釈できる様に書かれている。考え過ぎか使われなかった伏線なのかは不明。

「リークの件はうまく伝えといてあげる」vol.13, l.4081

つまり陽乃は何かをうまく伝えていない。例えばダミープロムの責任者が比企谷であること、雪乃が八幡を諦めようとしていること。

「諸々、両親にまかせてしまった」vol.13, l.4361

雪ノ下母が八幡の名前を知らない間接的な理由。 「俺のお見舞いに来たのが家族だけ」vol.01, l.2138 とも。つまり、雪ノ下母は比企谷家との交渉はあったが、八幡とは直接に会っていない。

「大した胆力だこと」 / その眼差しはこちらを値踏みするような冷たさを持っていてvol.13, l.4377

雪ノ下母が八幡を雪乃の好意の対象として値踏みしているということ。この後雪ノ下母は八幡を値踏みし続ける。 「ほんと、大した胆力ね......」vol.N2 p.070 など。

「比企谷くん。また会いましょう」vol.13, l.4401

雪ノ下母が雪乃の好意の対象として八幡を把握していることの傍証。雪ノ下母が八幡を評価した表現ではあるが、しかし、「また会いましょう」という表現は社交辞令としては過剰であろう。

「彼、お上手なの。私も踊らされたくらい」 / 「わざわざ当て馬を立てて時間稼ぎをしただけの甲斐はあるわ」 / 「なかなかよくできた計画ね」vol.14, l.2870

雪乃母によるダミープロムの理解。八幡がダミープロムでPTA側の時間稼ぎをして、その間に雪乃はプロムの計画を進めていた、と理解している。雪乃と八幡が連携していると考えている。

自分の名前にしなかった点は評価しますvol.03, l.0015

「きゃつの通り名はアッシュ・THE・ハウンドドッグだ」 / 「だが、本名も知らぬし、何をやっている人かも知らんぞ。」vol.03, l.0544

伏線。材木座は八幡の斜め下の解法の提案役。3巻の材木座にはプロム篇に関する伏線は他にも複数存在する。

結論

雪ノ下母はその初めから八幡に敵対してはいない。八幡の態度を好意的に評価しているし、まして脅迫に屈してもいない。

八幡と雪ノ下母が対峙するシーンの主題は、八幡が、雪乃のプロムを実現させる為に、雪ノ下母に対して暗黙の脅迫という手段さえも使う、ということである。本論はこのエピソードにさらに雪ノ下母の視点を提示する。すなわち、雪ノ下母の視点に立てば、このエピソードは、娘の想い人が誤前提提示や言外の脅迫という高校生らしからぬ手練手管を弄する人物であり、かつ、それ程に娘とプロムは応援されている、と理解する機会となる。