13巻 自粛対策〜実施決定

13巻 自粛対策〜実施決定

八幡はダミープロムを立案する。雪ノ下母は八幡を気に入りプロム中止を撤回する。雪乃は八幡に助けられた事を理由に八幡との関係性の終了を望む。

物語の完結に向けてのサブキャラクター群の設定の開示や伏線の回収がトピックである。いろは、葉山、海老名など。

Interlude…vol.13, l.0022

八幡モノローグ。もうまちがえるわけにはいかない。

いつだって答えを出すべき場所と機会はそこにあって、その度に最適解を導きだそうとしてきた。 / けれど、けして正解を出そうとはしてこなかったのだ。vol.13, 0026

個々の句が八幡が過去に「まちがえた」シーンに対応する。

しみじみと、平塚静はいつかの昔を懐かしむ。vol.13, l.0037

平塚曰く、プロムは中止ではなく自粛である。陽乃の言う「共依存」は正しくはない。雪乃は八幡の介入を望んでいない, しかし八幡は関わりたい。この背反の解決法として平塚は「勝負」を解法として提案する。

平塚は八幡に自身の離任を告げる。

たとえ、それが世間一般における標準的な答えだったとしても、俺の、俺たちの答えなのだとは思えない。vol.13, l.0048

不明。「標準的な答え」とは泣き出した人間を放置するべきではないということ、「俺の答えだとは思えない」とは、八幡の自意識が邪魔をするということ、だとして、それが「俺たちの答えだと思えない」理由が不明。結衣に甘えている表現だろうか。

明確な形を与えたはずのものは相変わらず曖昧なままでvol.13, l.0082

八幡が雪乃を助ける理由。 「いつか、助けるって約束したから」vol.12, l.4625 という明確な言葉にしたにも関わらず、それは本当の理由とは異なる。

聞けずにそのまま蓋をしていたことは確かめずともはっきりわかってしまう。

平塚の離任。

その手の頑なさを指摘された覚えがある。vol.13, l.0308

(己の中の判断基準について) 「君の潔癖の話さ」 / 「いつか許せるときがくると思うぞ」vol.05, l.1179 か。

彼女一人に帰属すべきものに どんな肩書でどの程度の関わり合いであれば、そこに触れることが許されるのだろう。vol.13, l.0341

伏線。八幡の解は 時間とか感情とか将来とか人生とか / 諸々全部やるvol.14, l.5073 なら、雪乃の人生を歪める権利を手にすることができる。

理由など、あのたった一言あればそれで十分だ。vol.13, l.0350

「たった一言」とは、「いつか私を助けてね」vol.09, l.4194

どうしても、一色いろはには確かめたいことがある。vol.13, l.0486

八幡はいろはに「雪乃に対して責任がある」と訴える。

八幡は共依存ではないことを証明すべく雪乃と対立する。

やるべきこと、考えるべきことははっきりしている。それ以外のことを、今は除外する。vol.13, l.0504

「やるべきこと、考えるべきこと」は雪乃に関わること。あるいはプロムの実施。 「まずはプロムを終わらせる。 / 部活とか、まぁ、先のことはそれから考える」vol.13, l.1521

「それ以外のこと」はほぼ自意識に等しかろう。「やるべきことではないことを除外して考える」は、一般にはTOC, 制約理論と呼ばれる技法。目的遂行を妨げる、制約している要素を同定し、その制約の除去に集中する。

実際に八幡の行動はこの付近を境に変化する。自意識の徹底を諦め社会通念を優先する、あるいは諦める、成長する。この変化の具体例を下記に示す。

なにより、たった一言で済まされてしまうのが気に入らないvol.13, l.0685

「たった一言」とは共依存。八幡がこの言葉の否定に縋る理由。 「共依存」は八幡が好意を認めないから機能する 参照。

もっとも一言認めるだけでも相当の進歩ではある。

「なんでそこまでするんですか?」 / 「責任がある」 / 「なんか思ってたのと違う答えが来たので」vol.13, l.0667

いろはの八幡への実質的な告白、 「責任とってくださいね」vol.09, l.4457 の反復。八幡がいろはに興味を持たない事の表明。

一色いろはも考えて行動している 参照。

「なにかやることあるか?」vol.13, l.0767

八幡がプロムに縋る描写。以降、八幡は、 「自前で用意する連中は?」「逆に目立つためにあえて派手なの選ぶ奴もいるだろ」「SNSへのアップ禁止なんて守る奴いるか?」 等々、プロムに介入する余地、雪乃に関わる余地を捜す。

どれだけこちらが譲歩しても、そもそもの企画自体を認めない可能性はある。vol.13, l.0887

八幡がプロムに縋る描写。小さなリスクを過大に扱い否定させない論法。雪ノ下母がプロムに難癖をつけた論法、 どれだけ手を打とうと、絶対安全と言い切ることは誰にもできないvol.12, l.4210 に等しい。

「俺は、お前を……助けたいと思ってる」vol.13, l.0935 / 「その責任は俺にもある」vol.13, l.0946

これらの八幡の発言は正しい。 責任、とりたいというか、とらせてくれというか……vol.14, l.5045 にほぼ等しい。あるいはクリスマスイベントにて八幡は雪乃の 「あなた一人の責任でそうなっているなら、あなた一人で解決するべき問題でしょう」vol.09, l.2983 に対して同意してしまっていたが、今回は、責任を共に取るとしている。

あるいは八幡がプロムに干渉する事も恐らく正しい。雪ノ下母にすれば、雪乃案は及第点ではあるが、しかしプロム実施賛成には及ばない。雪ノ下母曰く、 「説得する要素は揃っていると思うけれど」 / 「他の皆さんのご意見を変えるには至らないんじゃないかしら」vol.13, l.4312 。雪ノ下母が雪乃に期待しているものがこの理解と打開だとするならば、雪乃の 「実現のためのロードマップも構築している」vol.13, l.0883 では不足する。

しかし、雪乃は自身の自立を訴え八幡の言葉を拒否する。人間が発達する上で自己同一性を獲得しようとする行為も正しい。八幡の発言は正しく、雪乃の拒否も正しく、ここで折り合いをつける事は難しい。 互いの正義がぶつかったときvol.13, l.0386 と平塚が予期した通りの展開となる。

敵対という手段をとる事の正誤は不明。平塚は 「勝負で雌雄を決するものと決まっている」vol.13, l.0387 と肯定し、結衣は これは言い訳なんだ。vol.13, l.1539 と許容し、葉山や海老名は否定する。

が、八幡はプロムに関わる動機、雪乃と対立する動機を あの時間が共依存ではないことの証明vol.13, l.0976 に置いた。これがまちがっている。後に共依存という 借り物の言葉vol.14, l.3968 に縋った、と省みる。対立であっても協業であっても、雪乃に関わりたいとする動機の正答は、 「手放したら二度と掴めねぇんだよ」 / 「俺は関わり続けたいと、思ってる。」vol.14, l.5032 であろう。

拒絶の為の沈黙ではなく、次に進むための空白なのだと俺には感じられた。 / 「これで…‥」vol.13, l.0997

雪乃が続けた言葉は 「これで最後だから。……これでちゃんと終わりにできる」vol.13, l.1081 。八幡がプロムへの干渉の強行を訴えたことで、雪乃は三人の終焉を決断した。

この 次に進むための空白 での雪乃の思考は 正直に言うわvol.13, l.4507 以降に示される通りであろう。すなわち、

「負けず嫌いなの、私」vol.13, l.1034

雪乃が逆転劇を見込んでいるということ。雪乃は、この段階で、八幡が雪乃案のプロムを実行させることを確信し、さらに、雪乃の勝利としてお願いを叶えさせる計画を立てた。

Interlude…vol.13, l.1036

いろは。雪乃と八幡の仲を痛感する。雪乃は「プロムは実現する」と断言し、「これで最後、ちゃんと終わりにできる」とする。

先輩の話を聞く間、ずっと伏せてた私の顔なんて見てないっていうか、見えてないことはわかってるけど、でも、そのあたりはちゃんと空気で察してほしい。vol.13, l.1050

実際に 「プロム、俺が手伝ってもいいか」vol.13, l.0900 以降、 「あの、そういう話なんですか、これ」vol.13, l.0949 といろはが介入するまで、いろはの描写がない。

「プロムは実現することになるから」vol.13, l.1070

雪乃の八幡への盲信を示す。

それを言っていいのはたぶんわたしじゃないから / 「あんまり無理しないでくださいね」vol.13, l.1078

いろはは、八幡の雪乃への干渉が、いろは含む誰にでも起きる 過保護vol.13, l.0588 とは違って、八幡は雪乃のためにではなく自身の為に雪乃に関わろうとしていること、つまり雪乃と八幡が両片想いであること、を告げようとする。 一色いろはも考えて行動している 参照。が、その好意を伝えるのは八幡自らであるべきだとして、代わりに、八幡の雪乃への心配、 「たまに平気で無茶するし。」vol.12, l.3152 を伝えた。

最後まで、由比ヶ浜結衣は見守り続ける。vol.13, l.1092

いろははマッ缶とお汁粉で、小町は鍋で二択を迫る。

いろはのプロムの動機。平塚や八幡達との別れを納得し諦める為に努力したい。あるいはその機会を八幡らに提供したい。

八幡は結衣に雪乃と対立する旨を告げる。結衣は八幡を手伝う。

最初は反対していたのに、結局一色の熱意に押し切られてしまったわけだ。vol.13, l.1166

共依存の否定に縋る八幡が言い訳を求めている表現だろう。いろはには八幡ら奉仕部に協力を求める熱意はさほどない。 「断られるのも織り込み済みです。」vol.12, l.2489

しかし、選べと言われれば選ばざるを得ない。 / 「なるほどなぁ……」vol.13, l.1302

八幡が誤前提提示に気付いた表現。

理解が得られるかどうかは別として、彼女には知っておいてもらいたい。vol.13, l.1506

八幡が何かを「知って欲しい」と初めて言及する。

恐らく 「俺は世界でただ一人、この子にだけは嫌われたくないから」vol.14, l.4231 に連なる。雪乃を手伝うことで八幡は結衣に嫌われたくないということ。

9巻で八幡が本物を定義した時点では、八幡は自身が話す側に立つケースしか考えておらず、聞く側に立つケースの発想には至っていない。 「俺はわかってもらいたいんじゃない」vol.09, l.3075 とまで明言している。これが変化、成長している。

Interlude…vol.13, l.1533

結衣。雪乃の願いと結衣の願いは似ているが全く違う。結衣は去年別のクラスだった時からずっと八幡を見ていた。だからもう少しだけ。

ちゃんと終わらせるから。 / どうか彼女と一緒にこの関係をちゃんと終わらせてください。 / だから、お願い。終わらせないで。vol.13, l.2526

願いの相手は八幡だとして、

だろうか。単純に言えば「結衣はプロム終了後も3人で居たいから八幡は自爆するな」。

ずっと見てた。クラスが違っても、気づかれてなくても、知られてなくても、知り合ってからも、ちょっとずつ仲良くなってからも、たぶんずっとずっと。vol.13, l.1549

つまり結衣は本編開始以前から八幡に好意を持っていた。 「由比ヶ浜さんは手作りクッキーを食べてほしい人がいるのだそうよ。」vol.01, l.0965 とは八幡である、という謎解き。

あらためて、比企谷八幡はかたりかける。vol.13, l.1553

八幡は教室内で結衣に声をかける。

八幡案。ダミープロムによる誤前提提示。材木座と戸塚を巻き込む。が、雪ノ下母対策が別途要る。

あらためて、比企谷八幡はかたりかける。vol.13, l.1553

章題は 満を持して、比企谷八幡はかたりかける。vol.08, l.3656 との対比。

当時は 協力を頼める相手もいない。迷惑をかけても許されるような、そういう存在、そういう関係を俺は築いてこなかった。vol.08, l.3044 として、材木座以外のメンバーは小町が収集した。今回は八幡は材木座に加えて戸塚を呼ぶ。 たぶん、俺は初めて、戸塚彩加という男の子をちゃんと見たのだと思う。vol.10, l.2578 の成果であろう。

最終的に戸塚は 友達vol.14, l.0331 と表現されるに至る。

この企画は既に失敗作の烙印を押されているのだ。vol.13, l.1642

八幡がプロムに、共依存の否定に縋っている描写。

「企画自体を認めない可能性がある」という烙印を自ら押して、自らそれに囚われている。

「新たな候補としてカロリーハーフのアイスがでてきたら、なんか食べてもいい気がしてくるな?」 / 「うん、二個食べられる……」vol.13, l.1668

結衣は概ね正しい。プロムもダミープロムも実施する。

「八幡はどうしたいの?」 / 「ぼくたちも、ちゃんと八幡のこと理解したいから」vol.13, l.1943

9巻で八幡が定義した本物、 理解したいだなんて / その醜い自己満足を押し付け合うことができて、その傲慢さを許容できる関係性が存在するのなら。vol.09, l.3078 を、結衣に続き戸塚、「ぼくたち」であるのでさらには川崎や材木座も満たしている、ということ。9巻で八幡が定義した本物、相互理解、とは単に人間関係での基本であるということ。

いつかもこうして彼らに助力を願った。vol.13, l.1956

生徒会選挙。

いつともしれず、エンドロールは流れ始める。vol.13, l.2007

八幡・結衣・材木座・遊戯部、ダミープロム案立案。雪乃らのプロム案よりも酷い案を立て、部長会を名乗り、海浜総合と話をして、SNS活動し、保護者会の目に止まる。

八幡・結衣、ネカフェで作業する。結衣は寝たふりをする。

このまま終わりまで見るか。 / あるいは、また最初から始めるか。 / それとも、これまでと変わらず、見ないふりを続けるか。vol.13, l.2505

終わる奉仕部に対する対策の比喩。八幡は奉仕部の終焉への対策を決めていない。

Interlude…vol.13, l.2508

結衣。寝た振り。感傷。

八幡と雪乃の対立を聞いてから結衣の行動には一貫性がなくなる。状況に応じて行動を変えている。 本物の本質 あるいは結衣案2とその変化 参照。

人知れず、葉山隼人は悔いている。vol.13, l.2529

ダミープロム案進行。

結衣は雪乃との現状の奉仕部の継続を諦め、しかし次へ進む。

八幡は葉山に協力を求めるも雪乃に既に潰されている。

葉山は小学校の頃の雪乃・陽乃との軋轢を告白する。

総武高校プロムサイコウプロジェクト / 重要なのは適度なわかりやすさと程よい頭の悪さだ。vol.13, l.2682

材木座は八幡の斜め下の解決の提示役。「適度なわかりやすさと程よい頭の悪さ」はダミープロムが雪ノ下母を説得し得たその成功要因。

ダミープロムはそれが当て馬であることを容易に見抜ける程度にわかりやすい。その理由が恋心である程度に頭が悪い。よって雪ノ下母は八幡のダミープロムの意図が雪乃への好意であることに気付いた。であるから雪ノ下母は雪乃プロムの実施について同意に回った。

「糖分補給にちょうど良いから」 / ようやくマッ缶の魅力に気づいたか。vol.13, l.2733

八幡の誤解あるいは韜晦。雪乃の八幡に対する未練を示す。マッ缶の魅力に気づいた所で 頬を朱に染めて / 缶を隠して しまう訳がない。

「そんなに無理する必要ないのに」 / 「……いつも無理してきたからな。これが俺の普通だ」 / 「そう……」vol.13, l.2778

齟齬。雪乃は自身に関わるなと言っている。八幡は言葉をその通りに受け取っている。しかし八幡のその応答は雪乃にとっては自身は八幡に負担を強いてきたという意味となる。

「あたしのこと、避けてた?」 / 「そうじゃないわ、そんなことない。ただ、プロムの準備や、中止の連絡が来たりして、やることが多くて」 / 「うん、だよね。ごめん……」vol.13, l.2828

避けてた。雪乃の多弁は言い訳。

この雪乃の行動はかつて雪乃が結衣を評した 「私が聞いたらあの子は行くってきっと答えるもの。」vol.03, l.0219 と等しい。

「あたしね、ヒッキー手伝ってるの」 / 「……言って、なかったか」vol.13, l.2836

ここでは、「結衣が八幡を手伝っている」という事情を、八幡と結衣は知っているが、雪乃は知らない、という宣言。

メタに解釈すれば、各キャラクターごとに知っている事が異なる、という物語構成上の宣言。雪乃が結衣の願いを知っていると言いつつ、しかし雪乃の願いは結衣の願いとは微妙に異なる、という解釈を可能とする為には、この種の宣言が必要である。

一般に小説やマンガでは、キャラクター間の情報共有のシーンは冗長である為に省略される。各キャラクターが持つ知識は同じであって、各キャラクターで行動が異なる理由は、知識の差ではなく性格によるものである。

ミステリー小説では一般に、登場人物が知っていて探偵すなわち読者に明かされない情報がある。さらにある登場人物が知っていて別の登場人物が知らない情報が存在する。その知識の差に基づいて各登場人物は異なる行動を取り、読者をミスリードする。この行動の違いを元に探偵や読者は推理する。であるからキャラクター間の情報の共有は明示的に描かれる。

俺ガイルの場合、八幡は結衣や雪乃の感情や思考を知らない。結衣と雪乃で感情や思考が共有されていること(あるいは異なること)を知らない。この「あたしね、ヒッキー手伝ってるの」という読者にとって自明な台詞は、逆説的に、その自明な台詞が存在しない限り結衣と雪乃とで共有されていない事を示す。

なお、結衣が八幡を手伝い始めたのは前日であって、これをまだ雪乃に伝えていない事自体にはさして問題はなかろう。

本当はもっと簡単な伝え方があることを俺も彼女も知っている。 / けれど、それが正しいと思えないから。 / だから、せめてまちがえないように。vol.13, l.3023

「合同追いコンについては、生徒会から既に打診されてるよ」 / 雪ノ下も自分のプランを補強するうえで、部長会を利用することに思い至ったのだろう。 / 部長会の件は向こうが先に手札を切ったというだけで、効果としてはさして変わらないvol.13, l.2961

齟齬。葉山の台詞が 「装飾に使う花についても各部活動が卒業生に贈る花束と合わせてグロスで発注するからコストダウン交渉中よ」vol.12, l.3343 を指すものであるなら、これはプロム自粛要請以前のものであって、部長会の利用を意図したものではない。

実際に14巻にて描かれるプロムに部活に関する表現は見つからないし葉山も登場しない。

「あ、ちょっと意外だったから」 / 由比ヶ浜は俺と葉山を見比べて、えへへと少し嬉しそうに笑う。 / まぁ、お優しい葉山隼人しか知らないと、俺に嫌味を言う姿はちょっと意外に映るのかもしれない。vol.13, l.2981

齟齬。八幡(と戸部)は、結衣が葉山の行動を意外に思った、と考えている。結衣は葉山と話せる八幡を意外だと思っている。でなければ「嬉しそうに」笑わない、だろう。つまり結衣は葉山がお優しいだけではない事を知っている。あるいは結衣のその嬉しそうな笑みは、葉山がその影を隠す必要のない誰かを持つ事を知った故の、葉山の為のものであるかも知れない。

「俺にはその覚悟も動機もなかったけれど……君は違うだろう?」vol.13, l.3115

葉山には雪乃を助ける動機がない、すなわち葉山は雪乃に好意を抱いていない、ということ。夏キャンプ以降ミスリードされてきた葉山と雪乃の関係の回収。 「……好きな人の話しようぜ」 / 「イニシャルでいいから!」 / 「……Y」vol.04, l.1842 など。なお、葉山が陽乃に好意を示す行動、むしろ陽乃の態度に失望する行動はこれまでも複数存在する。

「君がすべきなのはそんなことじゃないはずだ」vol.13, l.3131

八幡から見た葉山は、八幡を まったく理解できないvol.13, l.3142

しかし、葉山は 「男の意地」vol.13, l.3159 と言う言葉に、 一瞬でも揺れてしまったvol.13, l.3167 程度には、 酷く共感vol.13, l.3142 できる。

すなわち、葉山は陽乃の気を引く為に©そんなこと」に類する回りくどい事を繰り返してきた。折本らを雪乃の為に傷つけること、文化祭時に相模を失踪させかつ屋上に繋ぎ止める、など。

お前だけがそれを言ってくれる。 / だから、俺も言うことができる。vol.13, l.3133

対句。

結衣もいろはも既に八幡のダミープロム案を理解し許容してしまいあるいは否定できない。戸塚や材木座は協力さえする。ライバルと言える関係、人間関係の破綻を気にせずに、しかし指摘する義理を持つ関係は、八幡にとっても葉山にとってもお互いのみである。

「あいつが助けを必要としてなくて、それでも俺が助けたいと思うなら……、それは共依存なんかじゃない。」vol.13, l.3155

まちがっている。しかも八幡自身がこの理屈が 言葉遊びの言い逃れであることは自覚している。vol.13, l.4028 。つまり八幡が雪乃に干渉する為に共依存という言葉(の否定)に縋っている表現。

Interlude…vol.13, l.3161

陽乃と葉山の会話。陽乃が考えるに、今の八幡と雪乃から成立する想いはあり得ない。「見たいのは本物だけ」。

陽乃は葉山に興味がない。葉山には陽乃に働きかける手段がない。

「そういう言葉をわざわざ使って彼をけしかける人に心当たりがあったから」 / 「やるじゃん、名探偵。大正解」vol.13, l.3203

「けしかける」は葉山の誤解。陽乃が「共依存」という言葉を用いた意図は徹底して 「比企谷くんも見守ってあげて」vol.12, l.1063「よく我慢したじゃない。……あれでいいんだよ」vol.14, l.2913 、八幡の雪乃への干渉を抑える、であった。であるから、「やるじゃん、名探偵。大正解」は、自身のミスを故意であるかの様に収集してしまう発言。文化祭時の 「部活には居づらくなってるだろうし」vol.06, l.1406 / 「うまくいかなかったみたいだけど」vol.06, l.1410 と同様。なお恐らく陽乃は「共依存という言葉が八幡をけしかける結果になった」事をこの時点で初めて知った。

「ありえない。そうだったでしょ?」 / その言い方が、あの夏の日の言葉と重なった。vol.13, l.3216

「あの夏の日の言葉」は 「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」vol.04, l.1569 。葉山は陽乃にも雪乃にも同じ理由で見限られ疎まれている。

彼女は、自身が大切にしているものを、もうこれ以上誰にも傷つけられないようにと、先んじて自分で傷つける。vol.13, l.3219

陽乃が八幡と雪乃に干渉した理由。平塚が異動し奉仕部がなくなるなら、あるいはバレンタインイベントの様なやがて壊れる馴れ合いに堕ちてしまえば、その関係は失われる。雪乃はそれに傷つく。よって陽乃は先んじて自分で雪乃の人間関係を傷つける。

そして、傷つけた者は誰一人として許さない。vol.13, l.3219

陽乃の性格設定の回収。陽乃が自棄的な性格である理由。

陽乃は雪乃を傷つけた葉山を許さない。同様に陽乃は雪乃を傷つけた自分自身を許さない。かつ、陽乃は、 「興味がないものにはちょっかい出したりしないよ。……何もしないんだ」vol.08, l.1327

であるから、陽乃は、葉山に何もしないのと同様に、陽乃自身に対しても何もしない。陽乃は自分自身に対しても それこそ爪とぎ板ほどの価値しか見出してはいないvol.13, l.3190

よって、陽乃は、 「何より、どっちだって構わない。どっちでも変わらないのよ。うまくいったって諦めたって……」 / 「そうやってたくさん諦めて大人になっていくもんよ」vol.12, l.1041 などとして、自棄的な態度を取る。

「そんなに、……憎んでるの?」 / 誰を、とは聞かなかった。 / 「いいえ、大好きよ」 / 贖罪の機会を俺はついに得ることができなかった。vol.13, l.3221

葉山と陽乃自身を。

陽乃が「葉山を憎んでいる」と答えたならば、葉山は陽乃に贖罪する機会、理由を得る。しかし陽乃が「大好き」と答えたなら、葉山は何もできない。

贖罪の機会を俺はついに得ることができなかった。 / だから、彼に押し付けたのだ。せめて、彼らだけはと。vol.13, l.3226

葉山が八幡に 本気で、全力で向き合うべきだ。vol.13, l.3114 と諭したこと。

ああ、心底妬ましい。 / 共になくてはならない存在で、一緒に地獄に落ちられたなら、そんなにも幸せなことはない。vol.13, l.3227

「こんな」ではなく「そんな」、手元にはないものを指す代名詞であるので、葉山は陽乃と一緒に地獄に落ちる事を望んで、しかしそれができていないということ。

その悔いる姿を見て、羨ましいとさえ思った。 / そこまで鮮烈に刻み込むことができたなら、一生宝物のようにしまい込んでおけるなら、生涯忘れることができないくらいに、ただ一つのことを思い続けていられるなら。 / 俺はそれこそ悔いがないvol.13, l.3126 との対句を成す。八幡は葉山の過去の傷を、葉山は八幡の現在と未来を、共に羨み妬んでいる。

意味的には 「一緒に傷つくのなら、それは傷ではないのかもしれないな」vol.09, l.4896 を引くだろう。葉山は雪乃から八幡への関係、 閉じた幸福vol.09, l.4901 、あるいは共依存、と表現される関係を積極的に肯定する。

たとえそれが紛い物であったとしても、この世でただ一つの歪な贋作であるならば、誰も偽物などと呼べないはずだ。 / もしも俺がそれを手にしていたなら、きっとこの歪な形に一つの名前をつけられたのに。

「そんなの、紛い物じゃない。私が見たいのは本物だけ」vol.13, l.3211 への反応。陽乃(や八幡)と葉山の考え方の対比。陽乃や八幡は関係性を問うている。葉山は陽乃に興味を示されない為に、陽乃との関係性が存在せず、それを問うことができない。 「こうはなりたくない」vol.13, l.3108 と思うことさえできない。

あの時、全力で助けていれば。 / あなたは俺を許してくれましたか。vol.13, l.3232

陽乃と葉山の関係の回収。かつて葉山は雪乃を助けなかった。今は葉山は自棄的な陽乃を助けたいが、その手段がない。

「あの時、俺は全力で助けるべきだったんだ。そうすれば……」 / 「少なくとも、こうはなりたくないって思えるんじゃないか」vol.13, l.3108 を引く。すなわち、「陽乃が葉山を許す」と「葉山が現状に不満を抱く事を許される」が等しい。つまり、葉山は、陽乃に、(陽乃と葉山の関係性についての)現状に不満を抱く事を許されていない。 「いいえ、大好きよ」vol.13, l.3223 と答えられた葉山は、陽乃に自身へ関心を持たせることができない。

なぜならば、陽乃は葉山も陽乃自身も許さず、興味を示さない。故に陽乃は自身は自棄的に扱い、葉山の働き掛けを無視する。よって葉山からすれば、かつて自身が雪乃を全力で助けなかった為に、陽乃は自棄的になり、かつ葉山を無視するようになった、ということ。

なお、

は、葉山が否定したい現状ではない。葉山自身はこれらを肯定している。 「誰かの背中を無理に追う必要もない」 / 「それも含めて、俺だよ」vol.10, l.4140俺は別に関係を断ちたいわけじゃない。vol.10, l.4169 など。

レンズ越しに、海老名姫菜が見る風景は。vol.13, l.3234

八幡、ダミープロム対案計画を実行する。三浦・由比ヶ浜・海老名で海で撮影する。

3/3 (土)。小町誕生日。

海浜総合との打ち合わせの写真を撮影する。その写真を用いて材木座・遊戯部とサイトを作成、公開する。このサイトの雪乃母へのリークを陽乃に依頼する。

俺と葉山隼人は結局のところ、鏡合わせにすらなれず、互いに間違い探しを続けて、手前勝手に苛立ちをぶつけ合っているにすぎない。vol.13, l.3254

八幡と葉山が 同位体vol.03, l.0015 であることを示す。

もう何度目になるかわからない深いため息を吐いてvol.13, l.3260もう何度目になるかわからない深いため息を吐いてvol.13, l.3167 は「鏡合わせ」である。

葉山がぽかんと口を開けて、なにか珍獣でも見るような驚きとも呆れともつかない表情をするものだから、vol.13, l.3242あんな言葉に一瞬でも揺れてしまった自分が許せない。vol.13, l.3167 に対応していて、つまりまちがっているが、それを見つけられていない。

ぶつけあっているものは ああ、心底妬ましい。vol.13, l.3227羨ましいとさえ思った。vol.13, l.3126 であって、つまるところ応援と憧れである。

言語化したことで、その目的意識はより強固になった。vol.13, l.3257

まちがっている。この「目的意識」とは 「あいつが助けを必要としてなくて、それでも俺が助けたいと思うなら……、それは共依存なんかじゃない。それが証明できればいい」vol.13, l.3155 である。直後に 俺自身、それが言葉遊びの言い逃れであることは自覚しているvol.13, l.4029 に至る。

「面倒だよね、そういうの」 / 「愛とか恋とか性とか」 (vol.13, l.3470)

海老名が 「誰に告白されても付き合う気はない」vol.07, l.3055 とした直接的な理由。まして戸部を嫌っている訳ではない。

「面倒だよね」 / 「恋とか愛とか性とか」 / 「恥ずかしいからそういう話あんましたくないんだけど」vol.13, l.3470

海老名と八幡の決定的な差。海老名は恋とか愛とか性とかに興味がない。八幡にとってはなまじリアリティがある話

「お互い全然興味ないから話せることってあるじゃん?」vol.13, l.3475

海老名は八幡に興味がない。

あるいはさらに修学旅行での戸部の告白阻止で、姫菜が結衣や三浦優美子に相談しなかった理由。つまり海老名は葉山にも興味がない。

「でも、まぁなんとかなるんじゃない?」 / 「結局、比企谷くんは私とは違うから」vol.13, l.3482

「だからうまく付き合っていけないの」vol.07, l.3175 を引く。

かつて八幡は 理解することを諦めるvol.05, l.2260 を理想としていた。海老名は 「誰も理解できないし、理解されたくもない」vol.07, l.3175 と考えていた。この修学旅行の時点では海老名と八幡は似ていた。

今の八幡は 俺はわかりたいのだ。 / 知って安心したいvol.09, l.3076 と考えている。これ以降、海老名と八幡は大きく異なっている。

「そういうペシミズム?嫌いじゃない」vol.13, l.3517

八幡と海老名の違い。八幡は人間関係に対して悲観はしていない。海老名は他人に興味がない。八幡が「雪乃を直接手伝うことが難しい」という行動を取った理由は自意識、人間関係に対する恐怖、に由来するものである。

たぶん俺たちの思想には近しい部分がある。自身を腐っている云々と言い訳みたいな言葉を貼り付けて、塗り固めていたその様に、共感できるものがあった。vol.13, l.3520

かつて(7巻以前の)八幡は孤独だから取れる手段がない、として自己犠牲的な手法を用い、しかしその手法を自身の孤立を正当化する手段にしてしまった。同様に、海老名は他人への興味の欠如を隠す為に「腐女子」を装い、しかしその腐女子的な振る舞いが大切な数人とのコミュニケーション手段になってしまっている。

似ていても、近くても、同じように見えても、それぞれ違っていて、俺はこの一年かけて、それをずっと確かめてきたのだと思う。 / おそらくは、俺と彼女もまた、同様に。vol.13, l.3526

「俺と彼女」を八幡と雪乃だとするならば、

など。

互いの距離感を気にしないというか、わかっていてなお、詰めようとするのだ、昔から。vol.13, l.3638

折本の設定の回収。

「抽象的すぎるんじゃないかな、不必要な部分が多すぎて、企画意図の焦点がずれてるよ」 / 「もっと伝える力を意識したほうがいいと思うよ。」 / 「筋道が立っていないよね」vol.13, l.3691

八幡のダミープロム案の暗喩。ダミープロム案は 「関わりがなくなるのが嫌」vol.14, l.4272 という八幡の真の目的に比して婉曲に過ぎる。

あからさまに興味を失った様子で / 「相談って言ったら恋愛ごとでしょ、普通」vol.13, l.3973

共依存が陽乃の詭弁であることの傍証。「相談って言ったら恋愛ごとでしょ」は、 「さ、三角関係、とか」 / 「そんな風に思ってるんだ! ぷっ、しかもそれ自分から言い出すって面白すぎない?」vol.12, l.4508 という態度と矛盾する。

なお陽乃は葉山の 「そういう言葉をわざわざ使って彼をけしかける人に心当たりがあったから」vol.13, l.3203 により八幡がまだ雪乃に関わっている事を既に知っている。

「避けて、距離とって、そうやって何もしないでいたら、何も変わらないです。それで、たぶん、そのままダメになって終わっちゃうんです。」vol.13, l.4041

八幡や雪乃は 対立とか勝負とかそういう理由がないと、近づくこともできないvol.13, l.1538 から。結衣や八幡が自ら雪乃に関わらないと、雪乃は結衣や八幡から離れてしまい、3人でのみならず、八幡と雪乃さえも、一緒にいる事ができない。

など、結衣は八幡に雪乃との対話を二度促すも、しかし八幡は奉仕部部室を選択しない。かつ雪乃は結衣のことを 避けてたvol.13, l.2828

「比企谷くんはなんでそこまでするの?」vol.13, l.4063

陽乃は、八幡や結衣が雪乃に干渉しようがしまいが三人の関係性は終わる、八幡による雪乃への干渉は無駄である、と理解したということ。

に従えば、

である。

「比企谷くんはなんでそこまでするの?」 / 別に迷いがあるわけではない。既に答えは出ている。vol.13, l.4063

この「答え」は単純に八幡から雪乃への好意のこと。

傍らでは由比ヶ浜が身を固くして、じっと耳を澄ませている。 / 由比ヶ浜の肩から力が抜けるのが伝わってくる。 という結衣の反応、及び、後の平塚の 「自分の中で答えはあるのに、それを出す術を君は知らないだけさ」vol.14, l.3918 からして。

「ほんとのことは言わないんだね」 / 「仮にあったとしても……」 / 言いかけた言葉を飲みこんで、俺は違うことを口にする。 / 「それを言う相手はあなたじゃない」vol.13, l.4073

飲みこんだ言葉は恐らく「仮にあったとしても、伝わらない」。彼女には知っておいてもらいたい。vol.13, l.1506 など、他人に伝える意思の芽生えを示すか。

Interlude…vol.13, l.4133

結衣は共依存他陽乃の言を「好きだから」で全無視する。

「だって、こんなに痛いから……」vol.13, l.4186

結衣は概ね正しい、と設定されている。であるから陽乃の「共依存」も全無視が正しかった、のだろう。

とは言え結衣はここでは考えない。最終的に本物に対するアプローチが 「疑い続けます。」vol.14, l.6455 と定義される以上、八幡が結衣よりも雪乃を選ぶ本質的な理由でもあろう。

せめて、もうまちがえたくないと願いながら。vol.13, l.4189

3/5(月)

雪ノ下母はダミープロムの誤前提提示に気付く。八幡はかつて雪ノ下家が事故を起こした自身の名により言外に脅迫し、雪ノ下母を懐柔する。

しかし八幡が雪ノ下母を懐柔できたことは雪乃の八幡への依存を強調する。雪乃は関係の終了を訴える。雪乃の願いは「由比ヶ浜さんのお願いを叶えてあげて」。

この駒は普段まったく使いどころのない、なんなら身の置き場もない穀潰しのろくでなしだ。 / だが、ある一定条件下では女王を落とすことだってできる。vol.13, l.4347

大貧民の スペードの3。 / だが、特定ルール下ではワイルドカード・ジョーカーに対する唯一の対抗手段とされるvol.03, l.2645 が伏線。

「実際、俺みたいなどこの誰とも知らない奴じゃ説得力なかったわけですし」vol.13, l.4337 / 「プロムの際には踊ってご覧に入れますよ」vol.13, l.4369

八幡は会話を誘導している。「比企谷」の名を問わせ、名を告げた意味を明示している。

但し 雪ノ下母がプロムを認めた理由は脅迫ではない

「雪ノ下に修正案を軸にプロムを進めると伝えてくれるか。言い方は君に任せる」vol.13, l.4394

平塚は雪ノ下母に「八幡の行動の目的が雪乃のプロム実施の支援であること」を保証している。

なお平塚は雪乃の 「これで最後だから。……これでちゃんと終わりにできる」vol.13, l.1081 という決意を知らない。あるいは雪乃が 「思い詰めてしまっている」vol.13, l.0301 事を把握していて、しかしその程度を見誤っている。

「比企谷くん。また会いましょう」vol.13, l.4401

雪ノ下母が八幡を気に入った表現。誤前提提示も、名前を問わせ言外に脅迫した事も含めて。

「でも、あなたならどうにかしてしまうような気がしてた」vol.13, l.4473

「信頼が重いな……」 という皮肉が通じない程に。

「……あなたにも、わからないことはあるのね」vol.09, l.3470「これくらいのことはあなたも考えていると思っていたから」vol.09, l.3514 と同系統の盲信であろう。

「楽しかった。初めてだった。」vol.13, l.4509

一句一句が過去の雪乃と八幡の出来事に対応する。

「あなたに助けてもらえた。」 / 「だから、この勝負も、この関係も……、これで終わりにしましょう。」vol.13, l.4522

「そうすれば、ちゃんと始められる」vol.12, l.0561 との対比。 かつ、雪乃のキャラクター設定。 「だから、これで終わりにしましょう」 参照。

だから、もう何もない。俺が彼女に関わる理由はすべてなくなった。vol.13, l.4525

これらの「理由」は下記の通り。全てが真の欲求、 関わりがなくなるのが嫌vol.14, l.4272 とは異なる。

あるいは八幡が雪乃に関わりたい正しい理由は材木座が 「なりたいから好きなわけではない!……好きだから、なるのだ!」vol.03, l.2539 として示している。

まるで誰かを看取るように頷く雪ノ下にvol.13, l.4533

八幡を好きだった自身を。

Interlude…vol.13, l.4537

雪乃。どうかこれが正しい終わりでありますように。

閉ざした扉が、二度と開くことのないように、固く鍵を掛けた。vol.13, l.4538

話者は雪乃。鍵を掛けている。 その鍵はいつも彼女だけが持っていて、俺は触れたことさえないvol.12, l.2112 に従う。

せめて、壊れることがないように、そっと大事に仕舞い込み、これですべてをおしまいに。vol.13, l.4546

一生宝物のようにしまい込んでおけるならvol.13, l.3126 を引く。八幡と雪乃の思考が等しい。

どうかこれが正しい終わりでありますようにvol.13, l.4547

この終わりは、葛西臨海公園で問われた、奉仕部の終焉に対する雪乃の解法、である。三人でまた始める為に、雪乃は八幡を諦めるべく行動してきた、ということ。 「ちゃんと始められると思うから」 あるいは雪乃案2 参照。