12巻 プロム〜自粛要請
2月。 奉仕部の関係性の継続に向けて、雪乃は家業承継と八幡とを諦めると宣言する。いろははプロム計画を奉仕部に持ち込む。雪乃はそれに協力し、結衣と八幡との仲を深めさせるが、雪ノ下母がプロム中止を告げる。八幡はそれら全てに反発する。
前半の主題は雪乃の依頼。言葉にされない依頼を展開すれば、「家業承継を諦める事ができれば、八幡のことも諦められるだろうから、そうすれば3人でまだ過ごせる。それを待っていて欲しい」となる。 「ちゃんと始められると思うから」 あるいは雪乃案2 参照。
後半の主題は陽乃による「共依存」の指摘。「共依存」とは、雪乃に干渉しようとする八幡を牽制する為の言葉であって、実際に雪乃と八幡が共依存の状態にある訳ではない。実際に 3人に共依存は認められない 。
しかし八幡は雪乃に関わり続ける為に「共依存を否定する」という行為、言葉に縋る。八幡が共依存という言葉に縋った理由は、共依存という言葉が、「好意を含まない」という意味を暗黙に含むから、だと考える。 「共依存」は八幡が好意を認めないから機能する 参照。
Interlude...vol.12, l.0020
話者は八幡。後悔するとしても「確かな答え」を言うべきだ。本当は、冷たくて残酷な、悲しいだけの本物なんて、欲しくはない。
確かな答えがあえかな終わりを告げるのだと知っている。/だから、その答えを口にするべきだ。/その選択を、きっと悔やむと知っていても。vol.12, l.0032
「確かな答え」は結衣案への同意、もしくは結衣を選ぶこと。 「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」はまちがっている。 参照。
少なくともこの時点の「確かな答え」は雪乃を選択する事ではない。雪乃を選択した後の俺ガイル新に、 今の俺はあの時とは違う、確かな答えを口にするべきだ。
vol.N4, p.022 とある。
やがて、季節は移ろい、雪は解けゆく。vol.12, l.0037
雪乃の依頼は、家業承継を諦める自身を見届けて欲しい。曰く、そうすれば始められる。
結衣はそれが雪乃の答えかどうかを疑うし、雪乃も自信はない。
「マステ?インドの挨拶?」/「あなた、挨拶もしないのに無駄な知識は持ってるのね」vol.12, l.0118
「挨拶もなるべくしないようにしてるんだ」/「ヒッキー、会話苦手すぎない!?」vol.12, l.0124
対比。全編を通して、雪乃と八幡はこの種のノリボケ的な言葉遊びを多用する。結衣は八幡のボケに突っ込めない。
「斜め下さん?」/「ちょっと天然なとこあるから!」vol.12, l.0163
同様に、全編を通して、結衣は八幡にも雪乃にも多少距離感があり、かつフォローに回る。
双方とも あたしは、そこへ行きたいんだって。
vol.12, l.1181 の実例。
あんまり追求すると、めっちゃ早口で長文の反論が来ちゃうからな。vol.12, l.0173
雪乃の設定。雪乃の長文の理屈の台詞は言い訳である。
恣意的に、意図的に。それを話さないことで、そこを気にしているのだとすぐにわかってしまう。vol.12, l.0347
三人の仲に関することに触れていない。具体的には
同じ月を見ていたvol.12, l.0361
月は「環境は変わるけれども変わらないもの」の代表。それを本歌取りして、同じ環境にいても答えは少しづつ違う、とした。
実のところ、俺はこの先のことについて考えることをずっと避けていたのだと思う。vol.12, l.0422
奉仕部の終焉への対策は8巻、生徒会長選挙頃からの暗黙のテーマである。 この冬が始まった頃から、私たちはずっと、その終わりを意識していたのだから
vol.14, l.1041 。にもかかわらず、八幡は、奉仕部の終焉に対して直接の行動をとっていない。その当初から 「……お前も、ちゃんと考えたほうがいいぞ」
vol.08, l.0836 という口先だけである。
こう見えて、雪ノ下陽乃は酔っていない。vol.12, l.0598
陽乃は雪乃の家業承継が真の願いではない事を察し、それでも雪乃の自立の意思を支持する。
陽乃は八幡にも雪乃を見守る立場を要求する。
「……あの人、まだいるのか」vol.12, l.0630
不明。 「今だって、どう振る舞っていいかわかってないんでしょ?」
vol.11, l.3087 という陽乃の介入から一日しか経っていない。
「これは……せめて、これだけはちゃんと言葉にして、納得できるようにしたい」vol.12, l.0822
「せめて、これだけは」。つまり雪乃は稼業承継を言葉にして納得して諦める。八幡への好意は言葉にせず納得もしないまま諦める。
「ま、いっか。少しはマシになった」vol.12, l.0836
「言葉にせず諦める何かがある」ことに陽乃が気付いたということ。言葉にした家業の承継の訴えが 代償行為
vol.14, l.3675 であることを陽乃が把握したということ。
陽乃さんが気にしているこの手の煙草、タールがガツンと重い、昔ながらの昭和ストロングスタイルな煙草の匂いはvol.12, l.0996
(バレンタインデーの夜の)陽乃の飲みの相手が平塚であるということ。平塚の煙草の描写は 癖が強いタールの臭い
vol.12, l.2135 / タールがガツンと香るあのクセの強い匂いが漂う
vol.12, l.4342 。
逆に言えば高校時代の教師と飲んで酔える大学生はまずいない。
「何より、どっちだって構わない。どっちでも変わらないのよ。うまくいったって諦めたって……」/「そうやってたくさん諦めて大人になっていくもんよ」vol.12, l.1041
陽乃が構わないのは、
であって、陽乃が大人になる上で諦めたものは
であろう。
「君は、いつも『お兄ちゃん』してるけど」/何を当たり前のことを。/意識するまでもなく、この身は常にお兄ちゃんとして生きるようにできている。むしろ胸を張ってそう言える。vol.12, l.1073
齟齬。陽乃は八幡に「雪乃に解答を示し過ぎる、雪乃を自立させろ」と言っている。八幡は自分は小町の兄だと考えている。
Interlude...vol.12, l.1143
結衣は、雪乃宅で、雪乃と八幡のデスティニーランドのライドの写真を見つける。これにより結衣は雪乃から八幡への好意を確信するが、見なかったことにする。結衣は八幡と雪乃の関係に疎外感を覚える。
パンダのぬいぐるみvol.12, l.1154
恐らく 俺はパンさんを雪ノ下に押し付ける
vol.03, l.1515 として八幡がクレーンゲームで店員に取ってもらったもの。
ああ、やっぱり。って、それだけ思った。vol.12, l.1164
雪ノ下はいつの間にか買い物でもしてきたのか
vol.09, l.4201 で購入した写真。
なかったことにはならないけれど、忘れてしまうことはできるから。きっと、彼女もそうするつもりなんだから。vol.12, l.1167
「ちゃんと自分で考えて納得して、……諦めたい」
vol.12, l.0534 が、家業継承だけではなく八幡への好意を諦めるという意味であることに、結衣が気付いている傍証。
つまり結衣は、雪乃の八幡を諦める意思を知ったその夜に、雪乃が八幡に好意を持つ事を確信する。
ほんとはずっと昔から気づいていた。vol.12, l.1169
物語の冒頭、 由比ヶ浜は仲間になりたそうな目でこちらを見ていた。
vol.01, l.1090 から。
何度もその扉の前に立つけれど/ただ隙間から覗いて聞き耳を立てることばかり。vol.12, l.1170
例えばマラソン大会後の保健室。
あたしは、そこへ行きたいんだって。vol.12, l.1181
結衣は雪乃と八幡に混ざりたい。恋愛であるにも関わらず、結衣に雪乃を排除する意思はない。
本物なんて、ほしくなかった。vol.12, l.1182
結衣は八幡の言う本物に含まれない。結衣が本物に言及するのはここ、内心でのみ。
不意打ちに、比企谷小町はあらたまる。vol.12, l.1183
2/15。小町の入試二日目。
川崎沙希曰く八幡はいつも甘やかしている。
八幡から見た小町は何も言わなくとも伝わる。しかし小町は自立を告げる。
「たまにはっていうか、あんたいつもそうじゃん」/「……自覚無いんだ」vol.12, l.1439
川崎沙希の設定の回収。沙希は八幡をいつも見ている。
「高校と大学じゃ全然学費違うじゃん」vol.12, l.1352
いろいろあって川崎沙希は拗ねている。
vol.02, l.1385 のこと。八幡が川崎にスカラシップ制を紹介したエピソード。
沙希はこのエピソードを覚えていた八幡に対して照れて、その照れ隠しをしている。
「小町、いろんなことできるようになったからさ」/「小町でもできることがあるっていうか、ちゃんと役に立ってるっていうか……」vol.12, l.1741
小町の設定回収ではある。
あるいは小町は理想解の提示役。八幡が、雪乃、結衣、葉山、等に対して、「お兄ちゃん」する、彼女らを甘やかす、願いを叶えようとするのは、八幡は、かつてぼっちだった反動で、誰かのために役に立ってることが嬉しいから、かも知れない。
「お兄ちゃん、ありがとう。お世話になりました」vol.12, l.1765 /「兄離れってやつなんですかね」vol.12, l.1802
小町は理想解の提示役。小町はプロムを手がけようとする雪乃の状況に等しい。「自分でやってみたい」雪乃を見送る、見守る事が正答。
「ちゃんと兄離れしろ」
vol.05, l.1381 を引くかも知れない。
「ほい、どっちにする?」/片方は白菜がやや多め、もう片方は豚肉が多め。さして大差があるわけでもない。vol.12, l.1313
小町は理想解の提示役。プロム自粛要請に対する正答。誤前提提示は雪ノ下母には機能していないので、ダミープロムを「ひどいプロム」にする必要がなかった。
今日まで、その鍵には一度も触れたことがない。vol.12, l.1806
日常パート。戸塚、葉山、平塚。
いろははプロムの依頼を持ち込む。雪乃は奉仕部としてではなく自分でやってみたいと受ける。
「大変だったみたいだな。少しは肩の荷が下りたか?」/葉山は、雪ノ下が実家に戻ったことを誰から聞いたのだろうか。vol.12, l.1955
不明。葉山の言う「大変」が雪乃が実家に戻ったことを指すかかさえも。
「ひざ掛け持ってるのにまた買ったの?膝いくつあるの?ムカデ?」/「違うから!雑誌買ったら付録でついてきただけだから!」vol.12, l.2085
八幡のボケに対する結衣の典型的な応答。結衣は八幡のボケに突っ込まない。
眼差しに普段の鋭さはなく、けれどときおり見せる優しい瞳とも違っていた。vol.12, l.2177
あれは寂寥と呼ぶべきものだった
vol.13, l.0123 。平塚が離任について言い淀む表現。
「だんしんくいーん、んふふっ、ふんふんふーん」vol.12, l.2333
恐らく ABBA の Dancing Queen. プロムの動画は US の TV ドラマシリーズ GLEE, Season2 の Prom Queen.
ついでに俺ガイル完オープニングの女性陣のズンドコ節は LADY GAGA の JUDUS だろうか。
「『マッドマックス』とか『アベンジャーズ』とか好きって言い出す女は絶対彼氏の影響ですし」vol.12, l.2354
雪乃の言う「依存」は単なるミラーリングの部類だということ。
たった一つの本物に、焦がれるほどに憧れたから
vol.13, l.4542 って言い出す雪乃は絶対八幡の影響ですし。
「……いい映画だけれどね」vol.12, l.2370
ヒロインのアメリの造形は雪乃に多少重なる。
アメリはコミュ障で、他人の幸せを陰ながら助ける事で自己承認欲求を満たす。恋をするが、自身で恋の表明をしたことがなく、めんどくさいアプローチを続ける。
「ゆきのんは……自分の力でやってみたいんだよね」/「今やるしかないって、今から始めれば間に合うかもしれないって……。私も、たぶんそうだから」vol.12, l.2573
雪乃の意図は、
ということ。
ようやく理解したのだ。あの綺麗な一礼に何を見出していたのか。あの迂遠な言葉が何を言おうとしていたのか。既視感があって当たり前だ。腑に落ちたのも至極当然。その安堵も寂寥も俺は既に味わっている。vol.12, l.2596
雪乃の自立の意思を八幡が把握したということ。
「あの綺麗な一礼」とは 「こないだは、その、ありがとう……」
/ 背筋が伸びたきれいな姿勢と可愛らしいつむじとほのかな笑みを前にもどこかで見た気がした
vol.12, l.2225 。これを小町の自立の宣言、 「お兄ちゃん、ありがとう。お世話になりました」
/ そう言って、しずしずと三つ指ついてゆっくりとお辞儀した。
vol.12, l.1765 と重ねている。
「あの迂遠な言葉」とは 「私は一人でもこのプロムについて責任もってやり遂げるつもりでいる」
vol.12, l.2558 。
「なるほど、だいたいわかりました」vol.12, l.2598
「わたしがプロムの話、しなければこじれなかったのかなって」
vol.13, l.1140 か。
「こちらこそよろしくです、雪乃先輩」/言葉尻に違和感を覚えたのか首を捻る雪ノ下をよそに、vol.12, l.2606
いろはが雪乃の名前呼びを始める。恐らくきっかけは 「今やるしかないって、今から始めれば間に合うかもしれないって……。私も、たぶんそうだから」
/ 一色が驚きに目を瞠る
vol.12, l.2758 。なお、名字呼びの最後は 「では、やりましょう」
/ 「雪ノ下先輩超好き!」
vol.12, l.2504
奉仕部部室の鍵は雪乃の心の扉の鍵の明喩。
その鍵はいつも彼女だけが持っていて、俺は触れたことさえないvol.12, l.2112 。
大事なものをそこへしまうように、かちゃりと鍵がかけられた。vol.12, l.2620
閉ざした扉が、二度と開くことのないように、固く鍵を掛けた。vol.13, l.4538
「鍵、開けてもらってもいいかしら」/
雪ノ下が俺に向かって、鍵を放り投げる。vol.14, l.5173
やはり、一色いろはは最強の後輩である。vol.12, l.2622
日常パート。八幡は戸塚を遊びに誘える様になった。材木座は最後の挑戦を語る。
小町、川崎大師、総武高校に合格する。
川崎がプロム準備に参加。プロムの進捗は順調。いろはは八幡の過保護を指摘する。
八幡はプロム紹介動画撮影に参加する。雪乃は八幡と結衣を踊らせる。
「戸塚、そのうち暇な日あるか?」vol.12, l.2737
八幡が特に理由もなく誰かを誘える様になった表現。八幡の成長を示す。
結衣に対する 「……お前、そのうち暇な日ってあるか?」
vol.11, l.0165 は、バレンタインデー直前であって、言外に奉仕部の終焉対策という意図を含む。
「ヒロインが途中で離脱するのが辛いんだよなぁ〜」vol.12, l.2818 /「来年はもう受験だからな……最後の挑戦だよ」vol.12, l.2855
八幡の立場でのプロム編の要約のネタバレ。雪乃が離脱するのが辛い。来年はもう受験だから、部活がなくなってしまえば雪乃との接点が失われるから、最後の挑戦。
「別に諦めるわけではない。高校生の今だから書けるものもあれば、大学に入ったおかげで書けるものもあるだろう。最短距離が常に正しいわけではないからな。回り道とて我の覇道よ」vol.12, l.2873
材木座は八幡の斜め下の解法の提案役。普通に読めば共依存に固執することあるいはダミープロム案。だけれども 「……けど、お前はそれを待たなくていい」
vol.14, l.4367 の真意、雪乃ENDを選択した理由、かも知れない。
「この顔がそう見える?」/「それ、正直に答えた方がいいですか?」vol.12, l.3119
正直に答えれば八幡に都合が悪い。 まじまじ見てしまったらうっかり頷いちゃいそうだからしょうがないね!
/ ここで折れたらなんか一色の可愛さに負けたみたいになっちゃうし……
vol.12, l.3105 。
いろはは昼休み内に八幡の協力を仰がねばならず、この種の冗長なやり取りを早々に打ち切ったということ。それでもその協力の内容を話せなかった。
ちょっと別の話をしていたらそっちに意識が……。vol.12, l.3467
「わたし、先輩の妹じゃないですからね」
vol.12, l.3228 。
「……なるほど」vol.12, l.3154
雪乃が 自分の力でやってみたい
vol.12, l.2753 理由が、八幡の 過保護
vol.12, l.3160 からの離脱である事に気付いた表現。
背筋を伸ばして胸を張り、顎を引く。あと、うろたえない、だったか。確かそんなふうに教えられた気がする。/やがてああと思い出したように/無言のままにそっと俺の左肘に手を添えた。いつだかと同じく。vol.12, l.3700
「背筋を伸ばして胸を張りなさい。顎は引く」
/ 「いちいちうろたえない。由比ヶ浜さん、同じようにして」
/ 由比ヶ浜は大人しく雪ノ下の指示に従った。要するに俺の左肘に手を添えた。
vol.02, l.2545 を参照する。
八幡と結衣の双方が雪乃の指導を思い返し雪乃の指示に従う表現。雪乃がこの撮影を意図的に設定したものであること、それを八幡と結衣が理解していること、を表現するだろう。
「あたしたちでいいのかな」vol.12, l.3748
この時点で結衣は雪乃の八幡への好意に気付いている為に、その好意との背反を気にしている。雪乃が八幡を諦めるのみではなく、さらに積極的に結衣に譲ろうとしている事を懸念している。 彼女のお願いはもう決まってる。
/ あたしと同じであたしと反対
vol.13, l.1540 の根拠。
だから、まぁ、誰もこっちなんて見ちゃいない。俺を見てるのは由比ヶ浜だけだ。vol.12, l.3789
恐らく八幡が雪乃のことを考えない様にしている表現。
雪乃やいろはを含め、登場人物の多くがここで結衣と踊る八幡を見ている可能性がある。
ふと、由比ヶ浜結衣は未来に思いを馳せる。vol.12, l.3808
八幡は結衣を誘いデートする。小町の合格祝いに手作りケーキを作るべく結衣と約束する。
雪ノ下母が現れ、保護者会理事としての体裁で、プロムの中止を依頼する。雪ノ下母はいろはも平塚も受け流す。
雪乃は自力での遂行を訴える。陽乃は「人生を賭ける雪乃のその責を負えるか」として、共依存と言う言葉を持ち出して八幡を牽制する。
平塚は八幡らに離任を告げる。
「うん、わかった。じゃ、お疲れ様! 頑張ってね! 手伝えることあったらまた声かけて」vol.12, l.3876
結衣は正しい。結衣は雪乃の根を詰めすぎる性格を懸念し、しかし雪乃の自立の意思を正しく把握して応援している。
「……どっか寄ってくか?」/驚いているというよりも、もはや呆けているに等しい顔をされてしまった。意外どころか意味わかんないって感じのリアクション。vol.12, l.3890
結衣はこれまでに(フランクに)八幡に誘われたことがない。戸塚に対する 「そのうち暇な日あるか?」
/ 戸塚はぽかーんと口を開けて、大きな瞳をぱちくりしてらっしゃいました。
vol.12, l.2737 と同様の応答。この時点では それもやはり戸塚彩加だからこそ成立しているのだろう。
vol.12, l.2776 としていたが、次に結衣で試してみた、ということ。
すなわち それらしき理由を何とか捻り出し
/ 由比ヶ浜は得心行ったらしく
vol.12, l.3894 は齟齬。結衣は誘われた理由が解らなかった訳ではない。
小町に散々に言われたことを思い出した。vol.12, l.3902
直接には「味も中身も同じだよ……」
vol.12, l.1673。 間接的には頭をフル回転させてそれらしき理由を何とか捻り出し
vol.12, l.3895 に対する「派手なことじゃなくていいし、特別なことじゃなくていいの」
vol.12, l.1675 。
それが憎からず思っている相手であれば、なおのこと。/本当に、心が揺れる。vol.12, l.4075
結衣が八幡に渡したバレンタインのクッキーの評価。 「ヒッキーも揺れんの?」
/ 「あーもう超揺れるね」
vol.01, l.1336 を引く。
「プロムが実現したら、母は雪乃ちゃんへの認識を多少は改めるかもしれない。もちろん雪乃ちゃん自身の力でやれば、だけどね。……それに手を出す意味、わかってる?」vol.12, l.4390
陽乃のこの台詞によって、プロムの実施と八幡からの独立とが一体化する。つまり、この言葉によって、本来は別物であった
という手段と、
という目的とが一つになり、
という目的意識を持った、ということ。
この同一化が陽乃の意図であれば、陽乃は八幡の干渉を止めるべく雪ノ下家の事情を持ち出したが、それは逆に雪乃の選択肢を狭めた、陽乃の企みは概ねいつも上手くいかない、ということ。
著者の意図であれば、構成上の技法であって、登場人物の目的を単純にし、読者の負荷を軽減した、ということ。
それはつまるところ、彼女の将来に、人生に、責を負うことができるのかと、そう問われた気がした。vol.12, l.4390
八幡の理解は正しい。最終的な八幡の解は 「お前の人生歪める権利を俺にくれ」
vol.14, l.5057 。
「自分が何者かなんてことに悩むような」vol.12, l.4479
アイデンティティ。 「……それがあれば、私は救えると思ったから」
vol.09, l.4258 の「それ」の解。
雪ノ下母の話法はいわゆる説得術、クッション話法の典型。相手の意見には表面上同調しておいて好意を稼ぎ、しかし自身の意見は変えない。この種の話法は訓練で身につけるスキルの部類であって、逆に言えば雪乃母の性格を直接に示すものではない。
この種の説得術への典型的な対抗法は統計を根拠にすること。例えば八幡や雪乃は生徒や保護者にアンケートを取る、第三者に取らせる、などして反対派が無視できる程に少数であることを示せば良かった。
「これまでの謝恩会でも、特に不満があったわけではないのでしょう?」vol.12, l.4216
相手が是か非かで答えればどちらであっても結論を「従来の謝恩会と同等」に持ち込むことができる。正答はいろはのように例えば「何かしたい」という正面からの主張。
「先生のご意見はごもっともだと思います。」/「では、また改めて伺いますので、今後は学校側とご相談させていただいても?」vol.12, l.4266
イエスアンド話法。雪ノ下母は平塚と事を構えず、しかし今後平塚を無視すると宣言している。なお平塚もそれを理解している。
「無理をする必要はないんだから」vol.12, l.4278
ほぼ「何もするな」の意。
「本当に勘がいい子だよ。全部わかってるんだもん。雪乃ちゃんの考えも、本音も、ぜーんぶ」vol.12, l.4464
結衣が雪乃の本音を確信した理由は、勘ではなく、八幡と雪乃のディスティニィーランドでの写真を見たから。陽乃は高確率でまちがっている。
その選択を、きっと悔やむと知っていても。vol.12, l.4565
結衣は小町へのケーキ手作りの為に八幡を家に誘う。
プロム自粛決定。平塚は八幡に自ら動く理由を作らせる。
八幡は結衣を置き去りに学校に戻る。
ツッコミどころは多いがvol.12, l.4584
だろうか。八幡がグループラインに参加していないのは自然で必然で当然。
プロムの自粛をラインに流したのはいろは。章題曰く どうしても、一色いろはには確かめたいことがある
vol.13, l.0486 から。
『中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない。これで察したまえ。そのうえで聞くが、それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?』vol.12, l.4601
「葉山が教えないってことは、お前には知られたくないってことなんじゃねぇのか。」
vol.10, l.2139 と同じ状況。
このときに三浦は 「それでも知りたい」
としてさらに葉山に踏み込むという解を見せた。であるから、八幡は雪乃に踏み込む事ができた、のだろう。それが 「いつか、助けるって約束したから」
vol.12, l.4601 というまちがっている解であったとしても。
『それでも私はずっと待つよ。……だから、言葉にしてくれ』vol.12, l.4623
メタな視点では、平塚は常に正しいわけではない事を示す。
平塚は雪乃の自立の意思、雪乃が八幡を拒む理由、の双方を理解していて、平塚は、 「安易に手を貸すことが正しいのか、それはわからない。」
vol.13, l.0301 の通り、雪乃の意思と八幡の過保護の対立を懸念している。ここでの八幡の 「いつか、助けるって約束したから」
vol.12, l.4625 という回答は、平塚を満足させる。しかしこの言葉、ここで八幡が雪乃に干渉した事は、 「 だから、この勝負も、この関係も……、これで終わりにしましょう。」
vol.13, l.4522 に至る。すなわち、平塚はまちがっていた。
「いつか、助けるって約束したから」
という答が平塚を満足させた理由は、この言葉に八幡自身の意思が伺えるから、だと考える。雪乃と八幡が対立する状況は生徒会長戦時と同様であって、八幡が仕事や部活や小町、八幡自身以外を理由としている限り、かつての 俺が見つけ出した、俺の答え、俺の理由で動かなければならなかったのに。
vol.09, l.2898 と同じ間違いを起こす。言い換えれば、八幡が行動し成功すれば雪乃の自立の意思が挫ける。よって八幡には雪乃の自立の意思を挫くだけの正当性が必要である。例えば八幡が動く理由を仕事量の最小化や部活動の維持という些細なものにしたならば、プロムを実施できようができまいが、あるいはそれでプロムを実施できてしまったとすればなおさら、雪乃はその些細な理由で自身の自立の意思を損なわれた事になる。よって、八幡が雪乃を助けようとするならば、その理由は雪乃の自立の意思を挫く価値のあるものでなければならない。平塚は八幡にこの理由を用意させた、と考える。
なお、 「いつか、助けるって約束したから」
vol.12, l.4625 は、ディスティニーランドでの 「いつか、私を助けてね」
vol.09, l.4195 を指す。しかし少なくとも雪乃がこの事態に備えて用意しておいた言葉ではないし、平塚がこのやり取り自体を知るはずもない。
Interlude...vol.12, l.4655
結衣の独白。
結衣は、結衣は雪乃を助けようとする八幡を止められず、「雪乃を助けるな」と八幡に告げる役を、雪乃に押し付けた。
最初の最初から、彼はあたしのヒーローだったからvol.12, l.4662
それはもう颯爽とヒーロー的に超かっこよく
vol.01, l.2294 。但し八幡はこの発言の時点では結衣がサブレの飼い主であることを認識していなかった。
彼女が考えていることも思っていることもちゃんとわかっていて、でも、彼女みたいに諦めたり、譲ったり、拒否したりできなかった。/すごくかんたんなことのはずなのに、/全部、彼女のせいにしてそうしなかった。vol.12, l.4667
雪乃は、自身が八幡を諦め八幡を結衣に譲ろうと考えて、八幡の助けを拒否した。
結衣は、雪乃が八幡を諦めたくないと思っている事をわかっていた。
結衣は、それらの雪乃の思考と感情とを理由にして、八幡を諦めたり、八幡を雪乃に譲ったり、八幡が雪乃を助けに行く事を止めたりしなかった。