12巻 プロム〜自粛要請

12巻 プロム〜自粛要請

2月。

奉仕部の関係性の継続に向けて、雪乃は家業承継と八幡とを諦めると宣言する。いろははプロム計画を奉仕部に持ち込む。雪乃はそれに協力し、結衣と八幡との仲を深めさせるが、雪ノ下母がプロム中止を告げる。八幡はそれら全てに反発する。

前半の主題は雪乃の依頼。言葉にされない依頼を展開すれば、「家業承継を諦める事ができれば、八幡のことも諦められるだろうから、そうすれば3人でまだ過ごせる。それを待っていて欲しい」となる。 雪乃案2 「ちゃんと始められると思うから」 参照。

後半の主題は陽乃による「共依存」の指摘。「共依存」とは、雪乃に干渉しようとする八幡を牽制する為の言葉であって、実際に雪乃と八幡が共依存の状態にある訳ではない。実際に 八幡と雪乃は共依存ではない。

しかし八幡は雪乃に関わり続ける為に「共依存を否定する」という行為、言葉に縋る。八幡が共依存という言葉に縋った理由は、共依存という言葉が、「好意を含まない」という意味を暗黙に含むから、だと考える。 しかし共依存という記号は機能する。 参照。

Interlude...

1. バレンタインデーの夕方、 葛西臨海公園 vol.12, l.0020

八幡の独白。後悔するとしても「確かな答え」ではなく「その答え」を言うべきだ。本当は本物なんて欲しくはない。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡

確かな答えがあえかな終わりを告げるのだと知っている。 / だから、その答えを口にするべきだ。vol.12, l.0034

「確かな答え」とは雪乃を選択すること。 今の俺はあの時とは違う、確かな答えを口にするべきだ。vol.N4, p.022 。単純には八幡が雪乃に告白しても雪乃はそれを断ることを知っているということ。

「その答え」は結衣案への同意、もしくは結衣を選ぶこと。 「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」はまちがっている。 参照。

1. やがて、季節は移ろい、雪は解けゆく。

1. バレンタインデーの夜、 海にほど近い夜の公園 vol.12, l.0039

回想。雪乃の依頼、諦めたい、それを見届けて欲しい。「そうすれば、ちゃんと始められると思うから」。結衣はそれが雪乃の答えかどうかを疑うし、雪乃も自信はない。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 一色いろは, 比企谷小町, 平塚静, 戸塚彩加, 雪ノ下陽乃, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 鶴見留美, 雪ノ下父, 雪ノ下母, 比企谷父, 比企谷母, 相模南
  • 聖地
    • 海にほど近い夜の公園 : 「この街から遠く離れて暮らすこともなかったし」「ふと見上げれば、雪ノ下の住む二棟からなるタワーマンション」であるので、幕張海浜公園。公園の端に自動販売機があるので、Bブロック南端のわんぱく広場か。アニメでは葛西臨海公園。

「マステ?インドの挨拶?」 / 「あなた、挨拶もろくにしないのに無駄な知識は持ってるのね」vol.12, l.0125

「挨拶もなるべくしないようにしてるんだ」 / 「ヒッキー、会話苦手すぎない!?」vol.12, l.0128

対比。全編を通して、雪乃と八幡はこの種のノリボケ的な言葉遊びを多用する。結衣は八幡のボケに突っ込めない。

「斜め下さん?」 / 「ちょっと天然なとこあるから!」vol.12, l.0183

同様に、全編を通して、結衣は八幡にも雪乃にも多少距離感があり、かつフォローに回る。

双方とも あたしは、そこへ行きたいんだって。vol.12, l.1245 の実例。

あんまり追求すると、めっちゃ早口で長文の反論が来ちゃうからな。vol.12, l.0180

雪乃の設定。雪乃の長文の理屈の台詞は言い訳である。

恣意的に、意図的に。それを話さないことで、そこを気にしているのだとすぐにわかってしまう。vol.12, l.0365

三人の仲に関することに触れていない。具体的には

あるいはこの回想では川なんとかさんは言及されない。

同じ月を見ていたvol.12, l.0380

月は「環境が変わっても変わらないもの」の代表。それを本歌取りして、同じ環境にいても答えは少しづつ違う、とした。

実のところ、俺はこの先のことについて考えることをずっと避けていたのだと思う。vol.12, l.0445

奉仕部の終焉への対策は8巻、生徒会長選挙頃からの暗黙のテーマである。 この冬が始まった頃から、私たちはずっと、その終わりを意識していたのだからvol.14, l.1041 。にもかかわらず、八幡は、奉仕部の終焉に対して直接の行動をとっていない。その当初から 「......お前も、ちゃんと考えたほうがいいぞ」vol.08, l.0882 という口先だけである。

2. こう見えて、雪ノ下陽乃は酔っていない。

1. 夜、 雪ノ下が住むマンション vol.12, l.0634

マンション入り口で陽乃と鉢合わせ。雪乃は陽乃に話がある、と告げる。陽乃は八幡と結衣を部屋に誘う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 雪ノ下陽乃
  • 聖地
    • 雪ノ下が住むマンション : セントラルパークイースト幕張パークタワーもしくはセントラルパークウエスト幕張シータワー。アニメでは前者。原作では後者の可能性もある。パークタワーでは次章で陸橋を渡らない。

「......あの人、まだいるのか」vol.12, l.0667

実は 「今だって、どう振る舞っていいかわかってないんでしょ?」vol.11, l.3288 から一日しか経っていない。二年くらい経ってた気がするけれども。

2. 夜、 雪ノ下宅 vol.12, l.0731

雪乃は帰省し雪ノ下母に将来の希望について話すと宣言する。「せめて、これだけはちゃんと言葉にして、納得できるようにしたい」。陽乃はそれが真の願いではない事を察し、それでも雪乃を全肯定する。結衣は雪乃の引っ越しを手伝う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 雪ノ下陽乃
  • 言及される人物
    • 雪ノ下母, 比企谷父

「これは......せめて、これだけはちゃんと言葉にして、納得できるようにしたい」vol.12, l.0868

「せめて、これだけは」。つまり雪乃は稼業承継を言葉にして納得して諦める。八幡への好意は言葉にせず納得もしないまま諦める。

「ま、いっか。少しはマシになった」vol.12, l.0884

「言葉にせず諦める何かがある」ことに陽乃が気付いたということ。言葉にした家業の承継の訴えが 代償行為vol.14, l.3675 であることを陽乃が把握したということ。

3. 夜。 雪ノ下が住むマンション, 大通りを越える陸橋, 夜の公園, 長く続く噴水に沿った並木道, アウトレットモール, 海浜幕張駅 vol.12, l.1013

陽乃の飲みの相手は平塚。陽乃は自身を諦めた。陽乃は八幡にも見守る事を要求する。陽乃の予言、八幡も「酔えない」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下陽乃
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 比企谷小町
  • 聖地
    • 大通りを越える陸橋 : 公園大通りを超える幕張海浜公園のマリンデッキ。
    • 夜の公園 : 幕張海浜公園。「枯草色の野原」であるのでマリンデッキから花時計のある広場。
    • 長く続く噴水に沿った並木道 : にぎわいの広場。
    • アウトレットモール : 三井アウトレットパーク幕張。「左へ折れればコンビニ」はプレナ幕張のミニストップだろう。

陽乃さんが気にしているこの手の煙草、タールがガツンと重い、昔ながらの昭和ストロングスタイルな煙草の匂いはvol.12, l.1050

(バレンタインデーの夜の)陽乃の飲みの相手が平塚であるということ。平塚の煙草の描写は クセが強いタールの臭いvol.12, l.2244 / タールがガツンと香るあのクセの強い匂いが漂うvol.12, l.4553 。 あるいは平塚は陽乃が酒に酔えない事を知っている。「俺は酔えないんだそうです」 / 「まぁ、陽乃はそうだが」vol.14, l.3884

逆に言えば高校時代の教師と飲んで酔える大学生はまずいない。

「何より、どっちだって構わない。どっちでも変わらないのよ。うまくいったって諦めたって......」 / 「そうやってたくさん諦めて大人になっていくもんよ」vol.12, l.1112

陽乃が構わないのは、

であって、陽乃が大人になる上で諦めたものは

であろう。

「君は、いつも『お兄ちゃん』してるけど」 / 何を当たり前のことを。 / 意識するまでもなく、この身は常にお兄ちゃんとして生きるようにできている。むしろ胸を張ってそう言える。vol.12, l.1134

齟齬もしくは逃避。陽乃は八幡に「雪乃に解答を示し過ぎる、雪乃を自立させろ」と言っている。八幡は自分は小町の兄だと考えている。

Interlude...

1. 夜、 雪乃の部屋 vol.12, l.1207

結衣の独白。結衣はディスティニーランドでの八雪の写真を見つけ安堵する。雪乃に八幡への好意を指摘しても雪乃は否定する、だから結衣には黙する以外の選択肢がない。「本物なんて、ほしくなかった。」

  • 登場人物
    • 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃

パンダのぬいぐるみvol.12, l.1218

恐らく 俺はパンさんを雪ノ下に押し付ける vol.03, l.1591 として八幡がクレーンゲームで店員に取ってもらったもの。

ああ、やっぱり。って、それだけ思った。vol.12, l.1227

雪ノ下はいつの間にか買い物でもしてきたのかvol.09, l.4414 で購入した写真。

なかったことにはならないけれど、忘れてしまうことはできるから。きっと、彼女もそうするつもりなんだから。vol.12, l.1231

「ちゃんと自分で考えて納得して、......諦めたい」vol.12, l.0570 が、家業継承だけではなく八幡への好意を諦めるという意味であることに、結衣が気付いている傍証。

つまり結衣は、雪乃の八幡を諦める意思を知ったその夜に、雪乃が八幡に好意を持つ事を確信する。

ほんとはずっと昔から気づいていた。vol.12, l.1244

物語の冒頭、 由比ヶ浜は仲間になりたそうな目でこちらを見ていた。vol.01, l.1143 から。

何度もその扉の前に立つけれど / ただ隙間から覗いて聞き耳を立てることばかり。vol.12, l.1243

例えばマラソン大会後の保健室。

あたしは、そこへ行きたいんだって。vol.12, l.1245

結衣は雪乃と八幡に混ざりたい。恋愛であるにも関わらず、結衣に雪乃を排除する意思はない。

本物なんて、ほしくなかった。vol.12, l.1246

結衣は八幡の言う本物に含まれない。結衣が本物に言及するのはここ、内心でのみ。

3. 不意打ちに、比企谷小町はあらたまる。

1. 2/15 朝、 比企谷宅 vol.12, l.1249

小町は面接日。八幡と小町の間では言外の意図が通じる。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 比企谷父, 比企谷母

2. そろそろお昼も近くなろうかという頃合い。 稲毛海岸駅, マリンピア, サンマルクカフェ vol.12, l.1323

八幡は小町を迎えに出て川崎沙希・京華と遇う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 川崎沙希, 川崎京華
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 比企谷小町
  • 聖地
    • サンマルクカフェ : サンマルクカフェ マリンピア稲毛海岸店。

3. 午前中、 サンマルクカフェ vol.12, l.1391

八幡が小町待ちであるのと同じく川崎は大志待ち。京華を餌付ける八幡に、川崎「甘やかさないでよ」「いつもそうじゃん」「自覚無いんだ」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 川崎沙希, 川崎京華
  • 言及される人物
    • 比企谷小町, 川崎大志

「たまにはっていうか、あんたいつもそうじゃん」 / 「......自覚無いんだ」vol.12, l.1516

川崎沙希の設定の回収。沙希は八幡をいつも見ている。八幡をいつも見ている自覚が無いのは川崎も。天丼。

「高校と大学じゃ全然学費違うじゃん」vol.12, l.1612

いろいろあって川崎沙希は拗ねている。vol.02, l.1462 のこと。八幡が川崎にスカラシップ制を紹介したエピソード。

沙希はこのエピソードを覚えていた八幡に対して照れて、その照れ隠しをしている。

4. いくばくかの時間が経った後、 サンマルクカフェ vol.12, l.1623

小町合流。八幡と沙希とは対照的に小町と京華はコミュニケーションに長ける。八幡と小町は買い物して帰る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町, 川崎沙希, 川崎京華
  • 言及される人物
    • 比企谷父, 比企谷母

5. 昼、 比企谷宅 vol.12, l.1769

小町は自立を示し八幡に感謝する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 比企谷父, 比企谷母, カマクラ

「小町、いろんなことできるようになったからさ」 / 「小町でもできることがあるっていうか、ちゃんと役に立ってるっていうか......」vol.12, l.1830

小町の相当に家庭的だという設定の理由の回収ではある。

あるいはさらに小町は理想解の提示役。八幡が、雪乃、結衣、葉山、等に対して、「お兄ちゃん」する、彼女らを甘やかす、願いを叶えようとするのは、八幡は、かつてぼっちだった反動で、誰かのために役に立ってることが嬉しいから、かも知れない。

「お兄ちゃん、ありがとう。お世話になりました」vol.12, l.1854 / 「兄離れってやつなんですかね」vol.12, l.1893

小町は理想解の提示役。小町はプロムを手がけようとする雪乃の状況に等しい。「自分でやってみたい」雪乃を見送る、見守る事が正答。

「ちゃんと兄離れしろ」vol.05, l.1452 を引くかも知れない。

4. 今日まで、その鍵には一度も触れたことがない。

1. 朝。 通学路, 駐輪場, 廊下, 教室, 自販機 vol.12, l.1898

奉仕部は新入部員を募集しない。八幡は自身の変化に由来するクラス内の関係性の変化を自覚する。葉山と陽乃の話法が似ている。葉山は雪乃の変化を肯定的に捉える。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 戸塚彩加, 葉山隼人
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町, 川崎沙希, 雪ノ下陽乃, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔

「大変だったみたいだな。少しは肩の荷が下りたか?」 / 葉山は、雪ノ下が実家に戻ったことを誰から聞いたのだろうか。vol.12, l.2092

不明。葉山の言う「大変」が雪乃が実家に戻ったことを指すかかさえも。

2. 放課後。 廊下, 奉仕部室前 vol.12, l.2113

八幡は三浦や海老名を学年当初よりも知り、彼女らの見方も変わった。結衣は八幡のボケに応じない。結衣も八幡も奉仕部の終焉を確信している。八幡は奉仕部室の鍵に触れた事がない。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜

「ひざ掛け持ってるのにまた買ったの?膝いくつあるの?ムカデ?」 / 「違うから!雑誌買ったら付録でついてきただけだから!」vol.12, l.2192

八幡のボケに対する結衣の典型的な応答。結衣は八幡のボケに突っ込まない。

  • その鍵はいつも彼女だけが持っていて、俺は触れたことさえないvol.12, l.2219

奉仕部部室の鍵は雪乃の心の扉の鍵の明喩。

3. 放課後。 職員室応接スペース, 奉仕部室 vol.12, l.2221

八幡は奉仕部室の鍵を取りに職員室を訪れる。平塚は転勤を八幡に言えない。雪乃は八幡と結衣に感謝する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 平塚静
  • 言及される人物
    • 比企谷父, 比企谷母

眼差しに普段の鋭さはなく、けれどときおり見せる優しい瞳とも違っていた。vol.12, l.2288

あれは寂寥と呼ぶべきものだったvol.13, l.0126 。平塚が離任について言い淀む表現。

4. 放課後、 奉仕部室 vol.12, l.2363

一色いろはが奉仕部に映画を持ち込む。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは

5. 夜、 奉仕部室 vol.12, l.2428

いろはの依頼、プロム。「今始めれば間に合うかもしれないから」。雪乃がそれに同調して奉仕部ではなく一人で請ける。結衣と八幡は見届ける。いろはが雪乃を名前呼びする。雪乃は翌日から生徒会室に行く。八幡はこれが奉仕部の終わりだと考える。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 平塚静

「だんしんくいーん、んふふっ、ふんふんふーん」vol.12, l.2452

恐らく ABBA の Dancing Queen. プロムの動画は US の TV ドラマシリーズ GLEE, Season2 の Prom Queen.

ついでに俺ガイル完オープニングの女性陣のズンドコ節は LADY GAGA の JUDUS だろうか。

「『マッドマックス』とか『アベンジャーズ』とか好きって言い出す女は絶対彼氏の影響ですし」vol.12, l.2473

雪乃の言う「依存」は単なるミラーリングの部類だということ。

たった一つの本物に、焦がれるほどに憧れたからvol.13, l.4766 って言い出す雪乃は絶対八幡の影響ですし。

「......いい映画だけれどね」vol.12, l.2490

ヒロインのアメリの造形は雪乃に多少重なる。

アメリはコミュ障で、他人の幸せを陰ながら助ける事で自己承認欲求を満たす。恋をするが、自身で恋の表明をしたことがなく、めんどくさいアプローチを続ける。

「ゆきのんは......自分の力でやってみたいんだよね」 / 「今やるしかないって、今から始めれば間に合うかもしれないって......。私も、たぶんそうだから」vol.12, l.2708

雪乃の意図は、

ということ。

ようやく理解したのだ。あの綺麗な一礼に何を見出していたのか。あの迂遠な言葉が何を言おうとしていたのか。既視感があって当たり前だ。腑に落ちたのも至極当然。その安堵も寂寥も俺は既に味わっている。vol.12, l.2725

雪乃の自立の意思を八幡が把握したということ。

「あの綺麗な一礼」とは 「こないだは、その、ありがとう......」 / 背筋が伸びた綺麗な姿勢と可愛らしいつむじとほのかな笑みを前にもどこかで見た気がしたvol.12, l.2341 。これを小町の自立の宣言、 「お兄ちゃん、ありがとう。お世話になりました」 / そう言って、しずしずと三つ指ついてゆっくりとお辞儀した。vol.12, l.1854 と重ねている。

「あの迂遠な言葉」とは 「私は一人でもこのプロムについて責任もってやり遂げるつもりでいる」vol.12, l.2687

「なるほど、だいたいわかりました」vol.12, l.2730

「わたしがプロムの話、しなければこじれなかったのかなって」vol.13, l.1190 か。

「こちらこそよろしくです、雪乃先輩」 / 言葉尻に違和感を覚えたのか首を捻る雪ノ下をよそに、vol.12, l.2739

いろはが雪乃の名前呼びを始める。恐らくきっかけは 「今やるしかないって、今から始めれば間に合うかもしれないって......。私も、たぶんそうだから」 / 一色が驚きに目を瞠るvol.12, l.2709 。なお、名字呼びの最後は 「では、やりましょう」 / 「雪ノ下先輩超好き!」vol.12, l.2673

5. やはり、一色いろはは最強の後輩である。

1. 翌日放課後。 教室, 廊下 vol.12, l.2757

八幡も結衣も部室に行かない。八幡は雪乃を見かけ、しかし話しかけない。八幡と雪乃には接点がない。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 三浦優美子, 海老名姫菜
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 一色いろは, 比企谷小町

2. 数日後の放課後。 教室, 廊下 vol.12, l.2828

八幡は奉仕部に参加せず暇。戸塚を遊びに誘う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 戸塚彩加
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣

「戸塚、そのうち暇な日あるか?」vol.12, l.2875

八幡が特に理由もなく誰かを誘える様になった表現。八幡の成長を示す。

結衣に対する 「......お前、そのうち暇な日ってあるか?」vol.11, l.0173 は、バレンタインデー直前であって、言外に奉仕部の終焉対策という意図を含む。

3. 数日後の放課後、 駅前のサイゼ vol.12, l.2923

材木座の受験前の最後の挑戦。「ヒロインが途中で離脱するのが辛い」「最短距離が常に正しいわけではない」

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 材木座義輝
  • 言及される人物
    • 比企谷小町
  • 聖地
    • 駅前のサイゼ : サイゼリヤ稲毛海岸駅前店

「ヒロインが途中で離脱するのが辛いんだよなぁ〜」vol.12, l.2959 / 「来年はもう受験だからな......最後の挑戦だよ」vol.12, l.2997

八幡の立場でのプロム編の要約のネタバレ。雪乃が離脱するのが辛い。来年はもう受験だから、部活がなくなってしまえば雪乃との接点が失われるから、最後の挑戦。

「別に諦めるわけではない。高校生の今だから書けるものもあれば、大学に入ったおかげで書けるものもあるだろう。最短距離が常に正しいわけではないからな。回り道とて我の覇道よ」vol.12, l.3017

材木座は八幡の斜め下の解法の提案役。普通に読めば共依存に固執することあるいはダミープロム案。だけれども 「......けど、お前はそれを待たなくていい」vol.14, l.4367 の真意、雪乃ENDを選択した理由、かも知れない。

4. 小町合格発表。 比企谷家, 教室, 正門前 vol.12, l.3030

小町、川崎大志、総武高校合格。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町, 川崎沙希, 川崎大志, 葉山隼人, 戸部翔, 大岡, 大和
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 比企谷父, 比企谷母

5. 昼休み、 教室 vol.12, l.3177

雪乃が川崎に何かを依頼する。八幡は雪乃に話しかけない。三浦と海老名は結衣を気遣う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 川崎沙希, 三浦優美子
  • 言及される人物
    • 比企谷小町, 海老名姫菜

6. 昼休み、 八幡の昼食スポット vol.12, l.3224

いろはは八幡の「過保護」を指摘し、八幡に放課後の手伝いを依頼する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 副会長, 書記ちゃん

「この顔がそう見える?」 / 「それ、正直に答えたほうがいいですか?」vol.12, l.3276

正直に答えれば八幡に都合が悪い。 まじまじ見てしまったらうっかり頷いちゃいそうだからしょうがないね! / ここで折れたらなんか一色の可愛さに負けたみたいになっちゃうし......vol.12, l.3262

いろはは昼休み内に八幡の協力を仰がねばならず、この種の冗長なやり取りを早々に打ち切ったということ。それでもその協力の内容を話せなかった。

「......なるほど」vol.12, l.3313

雪乃が 自分の力でやってみたいvol.12, l.2703 理由が、八幡の 過保護vol.12, l.3319 からの離脱である事に気付いた表現。

7. 放課後、 生徒会室 vol.12, l.3400

八幡と結衣はプロムの手伝いに生徒会室を訪れる。雪乃によりプロム準備は順調。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 比企谷父, 由比ヶ浜父, 一色父

背筋を伸ばして胸を張り、顎を引く。あと、うろたえない、だったか。確かそんなふうに教えられた気がする。 / やがてああと思い出したように / 無言のままにそっと俺の左肘に手を添えた。いつだかと同じく。vol.12, l.3886

「背筋を伸ばして胸を張りなさい。顎は引く」 / 「いちいちうろたえない。由比ヶ浜さん、同じようにして」 / 由比ヶ浜は大人しく雪ノ下の指示に従った。要するに俺の左肘に手を添えた。vol.02, l.2696 を参照する。

八幡と結衣の双方が雪乃の指導を思い返し雪乃の指示に従う表現。雪乃がこの撮影を意図的に設定したものであること、それを八幡と結衣が理解していること、を表現するだろう。

8. 放課後、 体育館 vol.12, l.3610

プロムの紹介動画作成。一色は雪乃に頼っていた自身を省みる。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 川崎沙希, 戸部翔

ちょっと別の話をしていたらそっちに意識が......。vol.12, l.3638

「わたし、先輩の妹じゃないですからね」vol.12, l.3390

9. 放課後、 ステージ袖の前室 vol.12, l.3750

雪乃は一色をエスコート。川崎は結衣の着付け。八幡は結衣をエスコートする。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 川崎沙希
  • 言及される人物
    • 戸部翔

10. 放課後、 体育館 vol.12, l.3888

雪乃は八幡と結衣に踊る様要請し、その通りに八幡と結衣は踊る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 戸部翔

「あたしたちでいいのかな」vol.12, l.3933

この時点で結衣は雪乃の八幡への好意に気付いている為に、その好意との背反を気にしている。雪乃が八幡を諦めるのみではなく、さらに積極的に結衣に譲ろうとしている事を懸念している。 彼女のお願いはもう決まってる。 / あたしと同じであたしと反対vol.13, l.1608 の根拠。

だから、まぁ、誰もこっちなんて見ちゃいない。俺を見てるのは由比ヶ浜だけだ。vol.12, l.3976

恐らく八幡が雪乃のことを考えない様にしている表現。

雪乃やいろはを含め、登場人物の多くがここで結衣と踊る八幡を見ている可能性がある。

6. ふと、由比ヶ浜結衣は未来に思いを馳せる。

1. 数日後の放課後、 生徒会室 vol.12, l.3996

動画確認、SNS上でも好評。八幡は結衣を遊びに誘う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 比企谷小町, 三浦優美子

「うん、わかった。じゃ、お疲れ様! 頑張ってね! 手伝えることあったらまた声かけて」vol.12, l.4066

結衣は正しい。結衣は雪乃の根を詰めすぎる性格を懸念し、しかし雪乃の自立の意思を正しく把握して応援している。

「......どっか寄ってくか?」 / 驚いているというよりも、もはや呆けているに等しい顔をされてしまった。意外どころか意味わかんないって感じのリアクション。vol.12, l.4081

結衣はこれまでに(フランクに)八幡に誘われたことがない。戸塚に対する 「そのうち暇な日あるか?」 / 戸塚はぽかーんと口を開けて、大きな瞳をぱちくりしてらっしゃいました。vol.12, l.2889 と同様の応答。この時点では それもやはり戸塚彩加だからこそ成立しているのだろう。vol.12, l.2915 としていたが、次に結衣で試してみた、ということ。

すなわち それらしき理由を何とか捻り出し / 由比ヶ浜は得心行ったらしくvol.12, l.4086 は齟齬。結衣は誘われた理由が解らなかった訳ではない。

小町に散々に言われたことを思い出した。vol.12, l.4094

直接には「味も中身も同じだよ......」vol.12, l.1758 。 間接的には頭をフル回転させてそれらしき理由を何とか捻り出しvol.12, l.4084 に対する「派手なことじゃなくていいし、特別なことじゃなくていいの」vol.12, l.1760

2. 動画確認後、夕方。 東京BAYららぽーと, イケア vol.12, l.4105

八結でららぽーと/IKEAデート。マッ缶の自販機。将来の夢。小町の合格祝いに手作りケーキ。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 比企谷小町, 由比ヶ浜父
  • 聖地
    • 東京BAYららぽーと : JR南船橋駅。稲毛海岸駅から5駅。幕張豊砂駅は2023年開業。
    • イケア : IKEA Tokyo-Bay.

それが憎からず思っている相手であれば、なおのこと。 / 本当に、心が揺れる。vol.12, l.4271

結衣が八幡に渡したバレンタインのクッキーの評価。 「ヒッキーも揺れんの?」 / 「あーもう超揺れるね」vol.01, l.1401 を引く。

3. 翌日 放課後。 教室, 応接室, 駐輪場, 中高浜公園, 稲毛海岸駅前 vol.12, l.4275

雪ノ下母が来校、プロム開催に対する懸念を伝える。雪ノ下母はいろはも平塚も受け流す。八幡は雪乃を助けようとし、雪乃はそれを拒否。陽乃は平塚の異動を暴く。陽乃は共依存と言う言葉を持ち出して八幡を牽制する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 平塚静, 雪ノ下陽乃, 雪ノ下母
  • 言及される人物
    • 三浦優美子, 雪ノ下父, 比企谷父

「プロムが実現したら、母は雪乃ちゃんへの認識を多少は改めるかもしれない。もちろん雪乃ちゃん自身の力でやれば、だけどね。......それに手を出す意味、わかってる?」vol.12, l.4604

陽乃のこの台詞によって、プロムの実施と八幡からの独立とが一体化する。つまり、この言葉によって、本来は別物であった

という手段と、

という目的とが一つになり、

という目的意識を持った、ということ。

この同一化が陽乃の意図であれば、陽乃は八幡の干渉を止めるべく雪ノ下家の事情を持ち出したが、それは逆に雪乃の選択肢を狭めた、陽乃の企みは概ねいつも上手くいかない、ということ。

著者の意図であれば、構成上の技法であって、登場人物の目的を単純にし、読者の負荷を軽減した、ということ。

それはつまるところ、彼女の将来に、人生に、責を負うことができるのかと、そう問われた気がした。vol.12, l.4608

八幡の理解は正しい。最終的な八幡の解は 「お前の人生歪める権利を俺にくれ」vol.14, l.5052

「自分が何者かなんてことに悩むような」vol.12, l.4700

アイデンティティ。 「......それがあれば、私は救えると思ったから」vol.09, l.4473 の「それ」の解。

雪ノ下母

雪ノ下母の話法はいわゆる説得術、クッション話法の典型。相手の意見には表面上同調しておいて好意を稼ぎ、しかし自身の意見は変えない。この種の話法は訓練で身につけるスキルの部類であって、逆に言えば雪乃母の性格を直接に示すものではない。

この種の説得術への典型的な対抗法は統計を根拠にすること。例えば八幡や雪乃は生徒や保護者にアンケートを取る、第三者に取らせる、などして反対派が無視できる程に少数であることを示せば良かった。

「これまでの謝恩会でも、特に不満があったわけではないのでしょう?」vol.12, l.4421

相手が是か非かで答えればどちらであっても結論を「従来の謝恩会と同等」に持ち込むことができる。正答はいろはのように例えば「何かしたい」という正面からの主張。

「先生のご意見はごもっともだと思います。」 / 「では、また改めて伺いますので、今後は学校側とご相談させていただいても?」vol.12, l.4474

イエスアンド話法。雪ノ下母は平塚と事を構えず、しかし今後平塚を無視すると宣言している。なお平塚もそれを理解している。

「無理をする必要はないんだから」vol.12, l.4486

ほぼ「何もするな」の意。

「本当に勘がいい子だよ。全部わかってるんだもん。雪乃ちゃんの考えも、本音も、ぜーんぶ」vol.12, l.4683

結衣が雪乃の本音を確信した理由は、勘ではなく、八幡と雪乃のディスティニィーランドでの写真を見たから。陽乃は高確率でまちがっている。

7. その選択を、きっと悔やむと知っていても。

1. 後日下校中。 教室, 駅へ続く道 vol.12, l.4791

結衣は小町へのケーキ手作りの為に八幡を家に誘う。プロム中止の連絡。平塚は八幡にプロムを手伝う理由を問う。八幡の答は「いつか、助けるって約束したから」。八幡は学校に戻り、結衣は泣く。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 平塚静
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 一色いろは, 比企谷小町, 由比ヶ浜母

「あ、でね、手作りケーキの話したじゃん? 」 vol.12, l.4800

八幡は結衣に自宅に誘われた直後に逃げている。

あるいは結衣は八幡を自宅に誘った直後に逃げられている。

ツッコミどころは多いがvol.12, l.4810

だろうか。八幡がグループラインに参加していないのは自然で必然で当然。

プロムの自粛をラインに流したのはいろは。章題曰く どうしても、一色いろはには確かめたいことがあるvol.13, l.0507 から。

『中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない。これで察したまえ。そのうえで聞くが、それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?』vol.12, l.4829

「葉山が教えないってことは、お前には知られたくないってことなんじゃねぇのか。」vol.10, l.2261 と同じ状況。

このときに三浦は 「それでも知りたい」 としてさらに葉山に踏み込むという解を見せた。であるから、八幡は雪乃に踏み込む事ができた、のだろう。それが 「いつか、助けるって約束したから」vol.12, l.4853 というまちがっている解であったとしても。

『それでも私はずっと待つよ。......だから、言葉にしてくれ』vol.12, l.4841

メタな視点では、平塚は常に正しいわけではない事を示す。

平塚は雪乃の自立の意思、雪乃が八幡を拒む理由、の双方を理解していて、平塚は、 「安易に手を貸すことが正しいのか、それはわからない。」vol.13, l.0312 の通り、雪乃の意思と八幡の過保護の対立を懸念している。ここでの八幡の 「いつか、助けるって約束したから」vol.12, l.4853 という回答は、平塚を満足させる。しかしこの言葉、ここで八幡が雪乃に干渉した事は、 「だから、この勝負も、この関係も......、これで終わりにしましょう。」vol.13, l.4745 に至る。すなわち、平塚はまちがっていた。

「いつか、助けるって約束したから」 という答が平塚を満足させた理由は、この言葉に八幡自身の意思が伺えるから、だと考える。雪乃と八幡が対立する状況は生徒会長戦時と同様であって、八幡が仕事や部活や小町、八幡自身以外を理由としている限り、かつての 俺が見つけ出した、俺の答え、俺の理由で動かなければならなかったのに。vol.09, l.3039 と同じ間違いを起こす。言い換えれば、八幡が行動し成功すれば雪乃の自立の意思が挫ける。よって八幡には雪乃の自立の意思を挫くだけの正当性が必要である。例えば八幡が動く理由を仕事量の最小化や部活動の維持という些細なものにしたならば、プロムを実施できようができまいが、あるいはそれでプロムを実施できてしまったとすればなおさら、雪乃はその些細な理由で自身の自立の意思を損なわれた事になる。よって、八幡が雪乃を助けようとするならば、その理由は雪乃の自立の意思を挫く価値のあるものでなければならない。平塚は八幡にこの理由を用意させた、と考える。

なお、 「いつか、助けるって約束したから」vol.12, l.4853 は、ディスティニーランドでの 「いつか、私を助けてね」vol.09, l.4407 を指す。しかし少なくとも雪乃がこの事態に備えて用意しておいた言葉ではないし、平塚がこのやり取り自体を知るはずもない。

Interlude...

1. 直後 vol.12, l.4884

結衣の独白。結衣は学校に向かう八幡を止められず、八幡を諦め拒否する役目を雪乃に押し付けた。

  • 登場人物
    • 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃

最初の最初から、彼はあたしのヒーローだったからvol.12, l.4891

それはもう颯爽とヒーロー的に超かっこよくvol.01, l.2407 。但し八幡はこの発言の時点では結衣がサブレの飼い主であることを認識していなかった。

彼女が考えていることも思っていることもちゃんとわかっていて、でも、彼女みたいに諦めたり、譲ったり、拒否したりできなかった。 / すごくかんたんなことのはずなのに、 / 全部、彼女のせいにしてそうしなかった。vol.12, l.4898

雪乃は、自身が八幡を諦め八幡を結衣に譲ろうと考えて、八幡の助けを拒否した。

結衣は、雪乃が八幡を諦めたくないと思っている事をわかっていた。

結衣は、それらの雪乃の思考と感情とを理由にして、八幡を諦めたり、八幡を雪乃に譲ったり、八幡が雪乃を助けに行く事を止めたりしなかった。