シナリオ分岐マルチエンド型俺ガイル
「その提案には乗れない。」
vol.11, l.4239 以降、俺ガイルの本文の構造は、コマンド選択型のビジュアルノベルゲーム的のそれに近い。随所にフラグや選択肢と思しき表現が現れる。八幡や結衣は自分の意思で行動しており、その選択肢に従ってストーリーが分岐する。サブキャラのBADエンドが存在する。しかし当然ながら八幡が選んだ選択しか描写されない。本稿ではそれら選択肢を抽出し、さらに、異なる選択をした場合の展開を想像してみる。
なお、より以前から、俺ガイルanotherからすれば恐らくは10巻から、この構造を取ってはいる。
ずっと、このままでいたいなvol.11, l.4213 という提案に
あのアトラクションvol.12, l.1223 の写真を
「雪乃ちゃん自身の力でやれば、だけどね。……それに手を出す意味、わかってる?」vol.12, l.4605 他、八幡は雪ノ下家の事情に
光る雫が流れたvol.12, l.4865 結衣を見て、八幡は
雪乃は八幡も家業承継も諦める事ができる。そして卒業後には 「たまになんかで顔合わせて、世間話のひとつもして、連絡とって集まりもして」
/ 「しばらくは頑張ってみても、絶対疎遠になる」
vol.14, l.4287 END。
これが普通の高校生の人付き合いではある。
プロム自粛の報と結衣の涙とを比べて、八幡が結衣の涙を優先したのであれば、そこで結衣は八幡に告白するだろう。恐らく11巻で告白を促し続けた通りに八幡はそれを受け入れるだろう。
八幡が平塚を訪れる日が翌日となっても彼らは雪乃に協力できる。比企谷の名を使えば本編と同じくプロム自体も実施可能だろう。やがて結衣は雪乃との関係を修復し、あるいは新奉仕部やアンソロジーと同様に八幡を雪乃と共有し、そして在学中はこの三人での関係を維持できよう。
しかし、雪乃に 「何かを諦めてほしくないんじゃないかな」
vol.14, l.2099 が伝わらない。であるからプロムが成功したとしても雪乃は本質的には八幡を諦めようとする。以降は雪乃疎遠BADと等しい。
『それでも私はずっと待つよ。……だから、言葉にしてくれ』vol.12, l.4841
平塚が八幡から雪乃への想いを確認するための言葉、平塚がそのルートを自ら閉じる為の言葉、にも見える。
例えば平塚は過去の彼氏と言葉にすることなく別れ、その言葉をずっと待っている、などの隠し設定があるかも知れない。妄想だけど。いや知らんけど。
対立vol.13, l.1009
「あたしも手伝っちゃダメかな」vol.13, l.1597 に対し
「そういえばお名前、伺っていたかしら?」vol.13, l.4554 に対し
雪ノ下母がプロム実施を許可しないなら、陽乃も雪ノ下母も雪乃の自立を認めず、雪乃はそのまま雪ノ下家に囚われ、やがて雪ノ下家の駒となる。
「なんでそこまでするんですか?」/「責任がある」/「なんか思ってたのと違う答えが来たので」vol.13, l.0733
八幡がいろはフラグを折った表現。いろはからの八幡への実質的な告白、 「責任、とってくださいね」
vol.09, l.4684 の反復であって、つまりいろはの立場からすれば自身の告白の言葉と振られる言葉とが等しい。
但しいろはルート自体は本編終了後も残る。曰く、 「彼女がいる人好きになっちゃいけないなんて法律ありましたっけ?」
/ 「諦めないでいいのは女の子の特権です!」
vol.14, l.6147 。
「面倒だよね」/「恋とか愛とか性とか」/「恥ずかしいからそういう話あんましたくないんだけど」vol.13, l.3639
八幡が海老名フラグを折った表現。海老名と八幡の決定的な差。海老名は恋とか愛とか性とかに興味がない。八幡にとってはなまじリアリティがある話
。
「でも、まぁなんとかなるんじゃない?」/「結局、比企谷くんは私とは違うから」vol.13, l.3649
同じく海老名フラグが折れた表現。
海老名は 「誰も理解できないし、理解されたくもない」
vol.07, l.3362 。であるから、 理解することを諦める
vol.05, l.2376 八幡に対して、海老名は 「私、ヒキタニくんとならうまく付き合えるかもね」
vol.07, l.3368 と言った。
今は八幡は 俺はわかりたいのだ。
/ 知って安心したい
vol.09, l.3228 と考えている。であるから、海老名は八幡とはもはやうまく付き合えない。
しかし「結局」の一言からして海老名は八幡の変化を羨む気持ちもあるのだろう。
海老名さんの言葉をあえて訂正するようなことはせず、俺は沈黙を選んだ。今更わざわざ言葉に直すようなことでもない。vol.13, l.3699
八幡はその海老名ルート終了を受け入れている。
たぶん、俺は初めて、戸塚彩加という男の子をちゃんと見たのだと思う。vol.10, l.2724 /俺の友達、戸塚彩加だ。vol.14, l.0331
「七十歳で独身だったらお互い一緒の介護施設入って暮らそうな」/「なにそのプロポーズ斬新。」vol.13, l.1901
「最悪お兄ちゃんだけでもぎりぎりセーフ」/その声音には暖かさが滲んでいて、vol.13, l.3772
戸塚、材木座、小町は「誰ともフラグが立たなかった場合のEND」 を担う。友人と友情ENDや妹END。
海老名や平塚と異なり川崎には明示的なルート消失の表現は見つからない。下記のいずれかか。
「ただ、それでも、俺はあっちのプロムを、実現させてやりたい、……と思ってる」/
「そういう半端はできない。筋は通さないと」/
「……でも、応援はしてる」vol.13, l.2066 が相当する。
「ゆきのんの気持ち」vol.14, l.2049 を
「ヒッキーも」/
「何かを諦めてほしくない」vol.14, l.2099 を伝えられる。ルート継続。
「ヒッキーも」/
「何かを諦めてほしくない」vol.14, l.2099 が伝わらない。雪乃は自身の八幡への好意を諦める。ロメジュリBAD
「なし崩しになぁなぁの関係続けるのって」vol.14, l.2998
「えっと……寄ってく?」vol.14, l.4161
「もし本当にいいなら、本当に終わりなら。」vol.14, l.4224
この模造品に、壊れるほどの傷をつけ、たった一つの本物に。vol.14, l.3970 の決意に反する。フラグ的には平塚ENDだろうか。
雪乃は八幡への好意を諦めようとしている。結衣が雪乃から八幡への好意を聞き出す事がなければ、「ヒッキーも」
/ 「何かを諦めてほしくない」
が伝わることがなければ、雪乃は八幡への好意を諦める。
雪乃は 私と彼と彼女の関係性も
/ 違う名前を与えられたとしても、変わることはない。
vol.14, l.3280 という言葉の毒薬を飲み込み、自身の八幡への好意を眠らせる。八幡は、雪乃の真意を察することができず、雪乃の冷えた態度を見て雪乃への想いを自ら殺す。雪乃はその諦めた八幡を見て、八幡への想いを殺す。
もし八幡が陽乃や平塚の薫陶を受けず、 この模造品に、壊れるほどの傷をつけ、たった一つの本物に。
vol.14, l.3970 という決心をしないなら、八幡は結衣を切り捨てない。よって雪乃との復縁、雪乃の翻意は結衣が担う事になる。
この雪乃の翻意は、結衣が八幡に最後のお願いをすることで実現できる。例えば、八幡に雪乃への告白をお願いすればよい。 「終わったのなら、また始めればいい」
vol.03, l.2788 という言葉に従って。そして八幡は 普通にやってくれればいいのに、なんかすっごい変なやり方
vol.14, l.1069 、つまりは本編と同じく合同プロムで雪乃を説得し、結衣のお願いを 全部叶えて
vol.14, l.0547 、雪乃のお願いを 全部叶え
vol.14, l.1057 ることができる。そうして三人での関係がまた始まる。
やがて結衣は 「傷も痛みも、全部欲しい」
vol.14, l.2047 が為に八幡に告白するだろう。しかしそこにお願いは不要だろうし、八幡がそれを受け入れるか否かも問題ではない。それが傷であったとしても、それを共有できる程の雪乃との友情は、恋愛よりもずっと意味がある。
このルートが、結衣が言うところの、 「あたし、ちゃんとしようと思ってる。これが終わったら……、ちゃんとするの」
vol.13, l.2978 であろうと考える。このルートの場合雪乃は家業継承は諦める事になる。が、家業承継は、雪乃の本当の願いでも問題でもない。