三学期編概要

三学期編概要

俺ガイル10巻から14巻は奉仕部の三人が「来年以降も三人で仲良くしたい」を実現する物語である。本稿はその概要を示す。

10巻 依頼の原型

「とりあえずはみんな一緒ね」vol.10, l.4003 / 「……みんなで、一緒に」vol.10, l.4040

奉仕部の終焉後、翌年ないし卒業後に向けて三人は合意する。

一義的には雪乃は進路の話をしているし、結衣は打ち上げ参加の話をしている。これらは目的語を欠くダブルミーニングである。

八幡は 結局は違う場所へ、違う世界へといずれは旅立つのだろう。vol.10, l.4006 と連想しているし、 けれど失いたくはないから。vol.10, l.2134 として自覚している。ここで葉山の陽乃への未練が八幡の動機を示していよう。陽乃からの興味を失い、陽乃に対して何もできない葉山の姿は、奉仕部を失い雪乃との接点を失う八幡の将来に重なる。

11巻 依頼の言語化と解決案1

奉仕部の関係性はしかしその持続を願うには不安定に過ぎる。 奉仕部の不安定な関係 参照。

バレンタインデーはその関係性の不安定さを突き付ける。八幡、雪乃、結衣のそれぞれが解決案を示す。それぞれ八幡案1、雪乃案1、結衣案1と記す。

八幡案1は「自らは何もせず、雪乃を諦め、結衣に告白させ、それを本物の模造品とする」である。が、結衣により保留される。 お料理イベント あるいは八幡案1 参照。

雪乃案1は「結衣も雪乃も八幡に好意を表明する」である。この案は雪乃がチョコレートを渡せずに失敗する。 雪乃はチョコレートを渡せる訳がない あるいは雪乃案1 参照。

結衣案1は「全員が好意を表明しない」である。雪乃はこれに同意するが八幡が拒否する。 葛西臨海水族園 あるいは結衣案1 参照。

12巻 「ちゃんと始められると思うから」あるいは雪乃案2

雪乃は八幡に促され別案を示す。これを雪乃案2とする。八幡も結衣も雪乃案2で一旦合意する。

雪乃案2は「雪乃が八幡を諦め、八幡を結衣に譲り、今の関係を終わらせて、結衣と八幡が交際し、また始める」である。詳細は 「ちゃんと始められると思うから」 あるいは雪乃案2 参照。

13巻 結衣案2

八幡は雪乃のプロムに介入し、結果雪乃と対立し疎遠になる。この状況に対して結衣はまた別の案を立案し遂行する。これを結衣案2とする。

結衣案2は「プロム終了後に八幡に告白して振られて、結衣が雪乃と八幡とを繋ぎ留める」である。が、結衣は状況に応じて細部を変化させている。本物の本質あるいは結衣案2とその変化 参照。

13巻 雪乃案2と結衣案2の差異

八幡と雪乃は 「由比ヶ浜さんのお願いを叶えてあげて」vol.13, l.4753 として合意する。しかし雪乃が結衣案2を把握していない、との言及が繰り返される。

雪乃案2も結衣案2もその目指すところは「三人でいる」で変わらない。差はその手段にあり、雪乃案は「雪乃は八幡を諦め、八幡と結衣が交際する」、結衣案は「雪乃は八幡を諦めず、結衣が振られる」である。

14巻 結衣案2.1~2.2

結衣は、雪乃と八幡のそれぞれから 「由比ヶ浜さんのお願いを叶えてあげて」vol.13, l.4753 / 「だから、お前の願いを叶えさせてくれ」vol.14, l.0541 を聞く。これに伴い結衣は自案を修正していく。

結衣案2.2は「結衣と雪乃は八幡を共有するという密約を結び」「『簡単なお願い』として八幡との交際の実現可能性を調査し」「プロム終了を待ち」「交際可能なら『お願い』を結衣との交際、不可能なら雪乃との復縁として」「結衣が雪乃と八幡とを繋ぎ留める」である。

14巻 雪乃案2の失敗と結衣案3

プロムを終え、雪乃は八幡を諦められず、八幡は奉仕部の終了を認められず、雪乃案2は膠着する。一方で結衣は自身と八幡の交際が実現不可能だと悟る。

この状況で結衣は 「本当に、大事なお願い」vol.14, l.4224 として八幡に働きかける、しかしこの時点で八幡は後述する八幡案2として結衣を切り捨てる決心をしている。この八幡と結衣の会話中にも結衣案は変化し続ける。これらを結衣案3とする。本当に大事なお願い あるいは結衣案3 参照。

結衣案3は例えば「『お願い』として奉仕部を再設立し、密約により結衣と雪乃は八幡を共有する」となるだろう。

14巻 八幡案2

プロム終了後に、陽乃による謎解きを経て、八幡は自身がまちがっていた事に気付く。 雪ノ下の問題は雪ノ下自身が解決すべきではなかった 参照。

そして改めて奉仕部の関係性の再構築案を立案し実行に移す。以下この案を八幡案2とする。

八幡案2は具体的には

である。

自明ながら八幡案2は著しくまちがっている。

八幡のこの行動はその成立も成功も周囲の協力の産物である。結衣に誘われいろはに仕事を割り当てられなければ八幡はプロムに参加していない。プロムに参加していなければ陽乃や平塚との会話が存在しない。陽乃と会話しなければ自身がまちがっていた事に気付かない。平塚と会話しなければそもそも行動を起こしていない。プロム終了後も結衣が声を掛けるまで行動を起こさない。ダミープロムの準備にも成功にも海浜総合をはじめ多くの人を巻き込んでいる。