「本物が欲しい」

「本物が欲しい」

本稿は9巻の「本物が欲しい」という発言でのその本物の定義、吐露に至る過程とその顛末、を示す。

14巻、プロム編末における「本物」については 本物とは脱構築である を参照。

最初は「本物」は八幡が受け入れがたいものを否定する道具であった。

「本物」とは、八幡が受け入れがたいものを「本物ではない」として否定する道具であった。 たぶん、昔からそれだけが欲しくてそれ以外はいらなくて、それ以外のものを憎んですらいた。vol.09, l.2910 とまで表現されるもの。

俺は本物の笑顔を知っている。媚びたり、騙したり、誤魔化したりしない、本物を。vol.03, l.1726

によれば、本物とは陽乃とは異なる雪乃の笑顔。

結衣の八幡への好意

偶発的な事故で芽生えただけの感情を、自己犠牲を払ったおかげで向けられた同情を、他の誰かが救ったとしても生まれていた可能性のある恋情を、本物と認めることはできないvol.03, l.2781

結衣の八幡への好意が、本物ではない、とされた。

上辺だけのもの

「上辺だけのもの」は、その維持に自他何らかの犠牲がなければ成り立たない。よってそれは本物ではない。

八幡、留美らの人間関係を指して 「誰かを貶めないと仲良くしてられないようなのが本物なわけねぇだろ」vol.04, l.3017

鶴見留美を排他する事により成立していたその周囲の人間関係は本物ではない。

あるいは戸部と海老名の告白後の葉山らの関係や、雪乃の生徒会長立候補阻止により淀んだ奉仕部も、維持に努力を必要とする。よって本物ではない。

めんどくさいもの

そういうめんどくささが嫌でずっと放棄してきた。頑張って取り繕うのはきっと本物ではないから。vol.08, l.1736

スクールカーストに属すこと、周囲に合わせること。

理想を押し付けていた勘違い

「ただ一方的に願望押しつけてたというか、勘違いしてただけで、それを本物とは呼ばない」vol.08, l.1736

中学時代の八幡から見た折本、文化祭までの八幡と雪乃。

その本物は奉仕部を壊す。

「それで壊れてしまうのなら、それまでのものでしかない……。違う?」 / 「もう、無理して来なくてもいいわ……」vol.09, l.2560

この八幡と雪乃の会話が、8巻末での本物の定義である

が間違っている事を示す。但し八幡自身は 現実とかけ離れた、愚かしくもきれいな幻想vol.08, l.4170 として、この本物の定義は既にまちがっていると断じている。

何も言わなければ通じない

八幡も雪乃も奉仕部の瀬戸際に臨んで尚「何も言わない」。

八幡はいろはのクリスマスイベントを手伝っている件を雪乃や結衣に伝えない。雪乃は生徒会長選後から自分の願いを表現しない。

「しばらく早く帰っていいか」 / 「そうね、特に忙しいというわけでもないけれど」 / その後に続く言葉を待ったが、なかなか出てこない。vol.09, l.1699

例えば雪乃は八幡に早く帰って欲しくない、閉塞した奉仕部をどうにかしたい。けれどもそれを表現しない。

「あなたの個人的な行動まで私がどうこうできるわけではないし、そんな資格もないもの。」 / 「私の許可が必要?」 / 「いいや、ただの確認だ」vol.09, l.2517

雪乃は、八幡の個人的な行動に関わらせて欲しい、奉仕部の活動にして欲しい。しかし、雪乃は八幡がいろはを助けていることを奉仕部としての活動とするか否か、を問うている。この前後の雪乃は八幡を責めてはおらず、 肩にかけたかばんを掴む手がきゅっと強く握られる。 と、描写としてはむしろ乞い縋っている。

雪乃は自身の願いを自虐的に、卑下するかの様に表現し、八幡はこれを裏返さずに理解する。解りやすく言えば「勘違いしないでよねあなたの為じゃないんだからね!」「そうか俺のためではないのか」という会話。

何もしなければ理解できない

「雪ノ下もか?」vol.09, l.1615 / 「ゆきのん、生徒会長やりたかったのかな……」vol.09, l.1649

八幡も結衣も雪乃の意図を雪乃に直接は確認しない。

「ひとりだからひとりでやってるだけだ」 / 「お前だってそうだろ」 / 確信を、いや期待を込めて俺はそう言った。 / 「できているつもりで……、わかっているつもりでいただけだもの」vol.09, l.2533-

雪乃はできていなかった、理解できていなかった。

八幡は、生徒会長選の票集めであれ、クリスマスイベントの手伝いであれ、ひとりで実行した。八幡は結衣や雪乃に協力を求めたり説明したりはしなかった。

八幡は、雪乃が生徒会長選に出馬する意図を黙していたことを念頭に、雪乃も奉仕部の為の行動であれひとりで行動した、と期待するが、しかし雪乃はこれを「できていなかった」とする。

だから何かあれば壊れてしまう

「それで壊れてしまうのなら、それまでのものでしかない……。違う?」 / 「もう、無理して来なくてもいいわ……」vol.09, l.2560

雪乃は八幡を真に気遣っている。前後の雪乃の描写からして、怒りや当てこすりを含む表現ではない。

しかし八幡は、あるいは読者も、雪乃を裏切った八幡を糾弾する言葉であると捉える。

平塚は八幡に問題解決法を教える。

修学旅行での嘘告白以降、奉仕部が危機に至る過程で、平塚は、八幡の問題を

だと指摘し、さらに直接的に解法を示す。

ブレストによる感情の推定方法

八幡は「感情を理解しない」と指摘され続けてきた。実際にクリスマスイベントを手伝いたいと言えない雪乃の感情を察する事ができていない。

なお八幡は「感情を理解できない」訳ではない。 理解されないことを嘆かず、理解することを諦めるvol.05, l.2260 を理想としている故に、つまり自意識上、他人の感情を理解しようとしない、のである。あるいはさらに嘘告白はで結衣の感情を予測した上で、しかし結衣の感情を傷つける行動を自発的に取り、それをして「理解していない」証拠、とさえしている様に伺える。

「ならもっと考えろ。計算しかできないなら計算しつくせ。全部の答えを出して消去法で一つずつ潰せ。残ったものが君の答えだ」vol.09, l.2730

平塚は感情を理解しない八幡に感情の推定方法を教える。「感情を理屈で類推せよ」と、「網羅して否定せよ」の二つの方法の組み合わせである。

「理屈で感情を類推せよ」は、共感力を欠く、いわゆるパーソナリティ障害を持つ人々に対する治療法の引用かと思われる。情動的な共感力に欠ける人物に対して、学習により認知的な共感力を持たせて、他人の感情を類推できる様に育て、社会に適合させる、という手法である。

「網羅して否定せよ」は一般的なブレインストーミングの作法である。ブレインストーミングを用いつつアイディアを網羅して収束させない玉縄らとの対比である。

弁証法による大切なものの受け入れ方

  1. 「大切なものだから、傷つけたくない」vol.09, l.2776
  2. 「傷つけないなんてことはできない」vol.09, l.2781
  3. 「大切に思うからこそ、傷つけてしまったと感じる」vol.09, l.2786
  4. 「誰かを大切に思うということは、その人を傷つける覚悟をすることだよ」vol.09, l.2789

平塚は八幡の相反する躊躇いをこの様に止揚してみせる。

弁証法である。哲学の一手段でもあるが、ここではブレインストーミングと同じく発想法の一種としての扱いだろう。思考を飛躍させる手段、発明に至る手段。「覚悟をする」という発明を導入する事で、「大切に思う」と「傷つけたくない」という相反を克服して、誰かを大切に思う事ができるようになる、ということ。

これにより、八幡は「本物が欲しい」に辿り着く。

まず、八幡は、クリスマス合同イベントを 理想的な形で成功させる為の手段vol.09, l.2875 を考える。

  1. クリスマス合同イベントを遂行するには、誰かに助けを求めれば良い。
  2. 八幡は材木座にも小町にも奉仕部にも助けを求められない
  3. 八幡は助けを求めたい、しかし得られない。
  4. ちょっとダメな弁証法に従い、よって、助けを求めて与えられるものは偽物である。
  5. よって、自身が動く理由を小町に求めた事はまちがっていた、 俺の理由で動かなければならなかったvol.09, l.2897

さらに、動く理由を網羅して否定して感情を求める。「なぜなぜ五回分析」、トヨタ社の品質保証手法に等しい。但しブレインストーミングの浅く広い発想とは異なり、深く狭く発想していく手法であって、 「考えるべきポイントを間違えない」vol.09, l.2760 事が必要な手法である。

  1. いろはと留美の為にクリスマスイベントを成功させたい
  2. クリスマスイベントを成功させたいのはいろはを会長に推したから
  3. いろはを会長に推したのは雪乃と結衣を会長にさせたくないから
  4. 二人を会長にさせないのは小町に理由をもらったから
  5. 小町に理由をもらったのは、 欲しいものがあったからvol.09, l.2909

以上により、八幡は、何かが欲しい、どうすればいいか、という問いを得る。

問いはできた。なら、考えよう。俺の答えを。vol.09, l.2845

「問い」は「本物が欲しい、が、どうすればいいか」。答えは「一つ、依頼がしたい」vol.09, l.2954

この答えはしかしまちがっている。 今度こそ正しい方法で、正しい手順で、一つ一つ正解を積み上げ直すvol.09, l.2953 ことを意図した解だが、しかし 思考や論理でしかなくて、計算であって手段であって、策謀でしかない。vol.09, l.3071 として自省する。

八幡と雪乃は「言っても伝わらない」を繰り返し、

結衣が会話に口を挟まない状況では、雪乃と八幡は「勘違いしないでよねあなたの為じゃないんだからね!」「そうか俺のためではないのだな」を続ける。

「けれど……」 / 「元凶といえば俺が元凶なのはわかってる」vol.09, l.2963

恐らく、雪乃は、クリスマスイベント対応に協力する 資格がないvol.09, l.2515 を肯定された事に言及しようとしている。八幡はそれをさらに自分の責任として自ら退路を経ってしまっている。

「あなたのせい、と、そう言うわけね」 / 「……まぁ、否定はできない」vol.09, l.2977

留美のことに関しても、雪乃は「八幡だけのせいではない」と言って欲しい。が、八幡は他人に頼ろうとしない。

「……あなた一人の責任でそうなっているなら、あなた一人で解決するべき問題でしょう」 / 「……だな。悪い、忘れてくれ」vol.09, l.2983

雪乃は「八幡一人の責任でそうなった訳ではない」と言って欲しい。クリスマスイベントにしても留美にしても責任を共有して共に解決したい。しかし八幡には通じない。

しかし結衣には言えば伝わる。

「違うよ、二人が言ってること全然違うもん」 / 「こうなってるのってヒッキーだけが悪いんじゃなくて、あたしも、そうだし……」vol.09, l.2998

結衣は二人の齟齬を正しく表現してみせる。つまり雪乃は「八幡だけではなく自分も悪い」と言いたい。

それでも結衣と雪乃であっても「言わなければ通じない」。

「ゆきのんの言ってること、ちょっとずるいと思う」vol.09, l.3010

「あなたも、卑怯だわ」 参照。

それらを受けて八幡は本物を再定義する。

理解したいだなんて、ひどく独善的で、独裁的で、傲慢な願いだ。 / その醜い自己満足を押し付け合うことができて、その傲慢さを許容できる関係性が存在するのなら。vol.09, l.3078

新しい本物の定義である。8巻末のそれと異なり、現実とかけ離れてはいない。

相互理解自体は単純に人間関係に必須のものであって、実際にこの時点で結衣は受け手としてこの条件を満たす。さらには 「ぼくたちも、ちゃんと八幡のこと理解したいから」vol.13, l.1943 とする戸塚、川崎、材木座らも。

その「本物」は結衣を含まないが、

「でも、そのぶんちゃんと話せば、ヒッキーともっと話せば、あたしは……」 / 誰もが『言わなきゃわからない』と口にするのだ。言うことや伝えることの辛さも知らずにvol.09, l.3050

まちがっている。八幡は自身が言う側、伝える側に立つ状況しか考えておらず、聞く側に立つ状況を考えていない。理解したいという自己満足を押しつける側には立てども、受け入れる側に立ってはいない。

ここで八幡が中断した結衣の言葉は、 「……けど、その分、あたしがわかろうとするからいいの。ゆきのんもたぶんそうだよ」vol.14, l.4311 と続く。結衣は「言わなきゃわからない」に対して「言えばわかろうとする」と訴える。すなわち結衣はこの時点で八幡の考えている本物の条件、「わかりたい」という 醜い自己満足を押し付け合うことが出来て、その傲慢さを許容できる関係性vol.09, l.3081 を満たす。

自分が理解されないことは知っているし、理解してほしいとも思わない。 / 俺はわかりたいのだ。vol.09, l.3076

八幡の翻意、あるいは成長。 八幡の理想である 理解されないことを嘆かず、理解することを諦めるvol.05, l.2260 の後半のみを否定している。

由比ヶ浜が俺を呼んで、そっと手を伸ばす / 伸ばされた手は届かなくて、力なく下ろされた。vol.09, l.3101

八幡の言う「本物」に結衣が含まれない事に結衣が気付いた表現。結衣からは八幡には手が届かない。

だから、今行かなきゃ…… / もう一度、由比ヶ浜が俺の手を引く。 / その手を優しく払った / 途端に、由比ヶ浜の手は力なく落ちて、泣きそうな顔になる。 / 手をつなぐのはもっと別の時だ。今は自分の脚でちゃんと歩く。vol.09, l.3125

八幡はこの手を払った理由を結衣に言わない。結衣には伝わらない。

しかし「本物」は結衣無しには成立せず、

「今しかない、あんなゆきのん、初めて見たから!」vol.09, l.3125

八幡は留美にも葉山らにも先送りによる解決を繰り返した。今度は結衣が先送りを選ばせない。 選択肢を選び直せたとしたらvol.08, l.4346 とされた分岐がまさにこの瞬間であって、この分岐において、結衣は正しい行動を選択できる。実際に今を逃せば三人が揃う機会はもうない。

あるいは平塚も 「今だよ、比企谷。……今なんだ」vol.09, l.2827 と言及している。しかし八幡は自らは動かなかった。

「あなたの言う本物っていったい何?」 / 「ゆきのん、大丈夫だよ」 / 「あたしも実はよくわかんなかったから……」vol.09, l.3164

結衣は正しい。まず感情を収める。

「わからない」として雪乃は逃げ出した。雪乃は「わからない」に引きずられ、「本物」の定義を問う。そこで八幡は正面から「本物」の定義を考えてしまい、答えられない。しかし結衣は本物の定義の問答を続けることなく、衝動的に逃げ出した雪乃に対して「大丈夫」として安心させる。

「あたし、今のままじゃやだよ……」vol.09, l.3177

最も的確に三人の願いを表現する言葉。

結衣は八幡が要した様な問題解決法、雪乃が弄した話法を必要としない。対話しようとする八幡や雪乃の努力と葛藤を無に帰す表現であって、(もし八幡と雪乃が本当に対話で合意に到れるのであれば)雪乃に「卑怯」と揶揄されてしかるべきではある。

「あなたの依頼、受けるわ」 / 「あたしも、手伝う」vol.09, l.3199

結衣からの距離を感じさせる表現。

「あなたの依頼、受けるって言ったじゃない」vol.09, l.5295 に従えば、雪乃の考える「依頼」は「本物が欲しい」である。結衣は、雪乃が「本物が欲しい」を依頼だと考えていることと、八幡の言う本物に自身が含まれない事、の双方を理解した上で、「クリスマスイベントの手伝い」を依頼だとした。

翌日、結衣は 日中はこちらへ近づいてくることはなかったvol.09, l.3278 し、八幡が 「由比ヶ浜が来てからでもいいか」vol.09, l.3308 と言葉にするまで部室に入ってこない。さらに今後、八幡が本物を語る時、結衣は疎外感を覚える。最終的に、結衣はこの疎外感を終幕まで持ち続け、 本物なんて、ほしくなかったvol.12, l.1182 との独白に至る。

やはりその本物は人間関係を壊す

八幡と雪乃は会議を通して上辺に堕ちた奉仕部を否定する

八幡と雪乃は玉縄による会議を否定する。この否定を通してさらに停滞していた頃の奉仕部を否定している。

誰もが納得できる答えのためと嘯いて、全員に我慢を強いて、皆に傷を押し付けて、誰しもに噓を飲み込ませ、自分を押し殺させることによって。 / ああ、まるでどこかの虚ろな箱だ。vol.09, l.4789

玉縄は相手の意見を否定せず、誰もに傷を強いて、責任を分散させ、合議制を貫く。八幡はその玉縄に停滞していた頃の奉仕部の姿を重ねる。

「虚ろな箱」とは まるであの部室のようだ。なのに、あんな虚ろな箱を手に入れようとしていた。vol.09, l.2590 の引用。

「策を弄した、言葉を弄した、言質をとって安心しようとした。」vol.09, l.4800

八幡は玉縄に策に溺れた過去の自分を重ねている。SNSで偽垢を弄し、 「俺たちも普通にしてやるのが一番なんじゃねぇの」 / 「あたしたちも普通に……」 / 「……変わらないと、そう言うのね」vol.08, l.0398 と合意させた八幡と、合意に基づき進めようとする玉縄は等しい。

雪乃はさらに進み、しかしまちがえる。

「あなたの好きにしたらいいわ」vol.09, l.4710

恐らくはこれが雪乃が八幡への依存を始めた言葉であろう。

「曖昧な言葉で話をした気になって、わかった気になって、なに一つ行動を起こさない。そんなの前に進むわけがないわ……。」vol.09, l.4818

一義的には玉縄らを非難している。が、雪乃もかつての奉仕部、八幡を非難している。

「曖昧な言葉」とは「本物が欲しい」。行動しない八幡に対しての、前に進む宣言。後に 「……あなたの依頼、受けるって言ったじゃない」vol.09, l.5296 として本物を求めると表明する。

とはいえ、雪乃のこの行動とは具体的には、八幡と同様の行動を取ることであって、すなわち、八幡と共に会議を破壊することであった。

平塚は、雪乃のこの行動について、 「一緒に傷つくのなら、それは傷ではないのかもしれないな。」 として理解は示しつつも、 「余人に理解されない幸福は閉じた幸福だとも言えるからな」vol.09, l.4896 として懸念した。10巻以降の共依存の導入である。

八幡も罠には気付いている。

たぶん俺が願ったものは世間一般でいう正しい関係性ではない。取った手を水底に引きずり込んでいくようなものなのだろう。vol.09, l.4908

八幡はこの「本物」が万人に普遍的なものではなく個人の主観的なものであること、共依存的であることは既に自覚している。

一人で生きられるようになって、初めて誰かと歩いて行く資格がある。一人で生きられるから、一人でできるから、きっと誰かと生きていける。vol.09, l.4986

すなわち、一人で生きられないなら、誰かと歩く資格がない。10章以降の雪乃の依存性に対する否定であり、雪乃の認知的葛藤の一端となる。