08巻 生徒会長選挙

08巻 生徒会長選挙

11月。 これまで八幡は自身の行動の意図を説明しない。それを雪乃も真似て、しかし結果として奉仕部は意思疎通に失敗し鬱屈する。

7巻から9巻、嘘告白、生徒会長選挙、クリスマスイベントは、八幡がかつて雪乃に押し付けた 理解されないことを嘆かず、理解することを諦める。vol.05, l.2376 という八幡の理想がまちがっている事を示すエピソードである。八幡は嘘告白を 理解も、共感もできるはずがないvol.08, l.3117 と考えている。さらに、雪乃の生徒会長の立候補について、 雪ノ下の真意はわからないままvol.08, l.3172 対策を進める。結果として八幡は雪乃による奉仕部の生徒会移行の意図を汲み損ねる。

この巻から9巻前半にかけて、八幡の推測や行動の多くがまちがっている。雪乃の行動や発言の前後の描写は、嘘告白及び応援演説の否定を除いて、一貫して八幡を咎めている様には描写されていない。かつ、社会通念上は雪乃がまちがっている。にもかかわらず、八幡は雪乃のあらゆる発言や行動に咎められている様に描写されている。

雪乃の感情や意図が描写されない。共感はできず、叙景による暗喩もされず、理詰めでしか類推できない。 「人の気持ち、もっと考えてよ......」vol.07, l.3313「けれど、感情は理解していない」vol.09, l.2824 、等として明示的に指摘される通りのホワイダニットであろう。 「わかるものだとばかり、思っていたのね」 参照。

1. 言うまでもなく、比企谷小町の逆鱗はそこにある。

1. vol.08, l.0019

八幡の独白。無常観、学習性無気力。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡

2. 修学旅行後の月曜日、朝食、 比企谷宅 vol.08, l.0042

小町は修学旅行で八幡に何かあった事を察する。小町の八幡評、「調子悪いときはさらにどうしようもないこと言う」。八幡は嘘告白を「最も効率が良く、かつ確実で安全」と捉えており、かつ八幡はそれを小町に説明しない。八幡と小町が喧嘩する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 比企谷父, 比企谷母

3. 朝。 花見川沿いのサイクリングコース, 駐輪場, 昇降口, 教室 vol.08, l.0196

八幡の無常と自立。葉山・海老名・戸部らは何も無かった様な会話を続ける。戸塚が八幡に何も無かった様に話しかけ、八幡は立ち直る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 戸塚彩加, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 大岡, 大和
  • 言及される人物
    • 川崎沙希, 相模南
  • 聖地
    • 花見川沿いのサイクリングコース : 花見川サイクリングコース

「あ、いや、なんか普通に挨拶だなって」vol.08, l.0323 / そう、もう全然疲れてたりしない。というか、今この瞬間に疲れが取れたまである。vol.08, l.0334

崩れそうな人間関係においても「いつもと同じ行動をすること」の効果。

4. 放課後。 教室, 廊下, 昇降口, 自動販売機, 奉仕部室 vol.08, l.0337

八幡は奉仕部室に直行せず、MAXコーヒーを選ばない。奉仕部は鬱屈し、結衣は何も無かった様な会話を続ける。雪乃「お互いを知っていたとしても、理解できるかはまた別の問題」。八幡、結衣は「普通にしてやる」「普通に」。しかし雪乃は「変わらないと、そう言うのね」。雪乃には何か言いたい事があり、しかし言えず、結衣が遮る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 平塚静
  • 言及される人物
    • 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔

俺は俺。いつも通り。なら、これまでと変わらずに過ごすべきだ。 / この前までとは違うルートで部室へと向かった。vol.08, l.0356

矛盾。八幡は一旦帰ろうとして部室に戻る。いつもと違う行動を取っている。

選んだのは缶コーヒー。またしても選ばれたのは綾鷹ではない。 / 「......コーヒー苦ぇな」vol.08, l.0354

同じく八幡はいつもと違う行動を取っている。選ばれたのはマッ缶ではない。

雪ノ下の言うことはとても正しく、どこにも非を打つことができない。 / 「俺たちも普通にしてやるのが一番なんじゃねぇの」vol.08, l.0419

理解することを諦める。vol.05, l.2376 と同類。八幡にとってこの理想像がまだ有効である事を示す。

俺ガイル7巻から9巻のテーマの一つは、奉仕部の終焉に備えての八幡の成長、八幡が「理解したい」という欲求を自覚すること、である。その初期状態、成長前の姿、を示す。八幡は雪乃や結衣の怒りを把握ししかしその理由を理解しようとしない。

「俺たちも普通にしてやるのが一番なんじゃねぇの」vol.08, l.0419 / 「あたしたちも普通に......、うん......」vol.07, l.0423 / 「それがあなたにとっての普通なのね」vol.08, l.0429 / 「変わらないと、そう言うのね」 / 諦めるような、終わってしまったような、そんな温度のない言葉だ。vol.08, l.0433

「普通」「変わらない」「諦める」がキーワード。 「わかるものだとばかり、思っていたのね」 参照。

コンコンという軽いノックの音がしたからだ。vol.08, l.0447

本来平塚はノックしない。めぐりやいろはの手前、だろう。

2. そこはかとなく、一色いろはは危険な香りがする。

1. 夕方、 奉仕部室 vol.08, l.0455

平塚、城廻、一色の依頼。いろはは周囲の悪意で生徒会長選挙に立候補させられた。生徒会役員選挙で一色を当選させないで欲しい。八幡案、酷い応援演説。雪乃も結衣も八幡の自己犠牲的な手法を厭う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 平塚静, 城廻めぐり

「確実性がないからよ」vol.08, l.0747 / 「その演説ってさ、誰が、やるのかな......。そういうの、やだな」vol.08, l.0758

雪乃も結衣も同じく八幡の自己犠牲的な手法を厭う。雪乃は饒舌に本当の事を言わず、結衣は端的に核心を突く。

但し、嘘告白も酷い演説も、言わば八幡が自身を孤立させようとする行為、「ぼっちだから他に取れる手段がない」ことの表明を目的とした行為である。 理解されないことを嘆かず、理解することを諦める。vol.05, l.2376 の一環であろう。しかし八幡のこの種の選択は結衣や雪乃に対して「八幡に好意を持つな」と言っているに等しい。

それを平塚先生が優しい声音で窘める。 / 確かに失言といえば失言だろう。vol.08, l.0753

齟齬。平塚は八幡を思い遣る雪乃を理解している。八幡は雪乃の意図を理解しない。

2. いくばくかの時間が流れて、 奉仕部室 vol.08, l.0812

雪乃は八幡とは異なるやり方を取ると宣言する。雪乃も八幡も奉仕部の終焉を想定し始める。部活は自由参加となる。八幡、結衣に「お前も、ちゃんと考えたほうがいいぞ」。雪乃「馴れ合いなんて、私もあなたも一番嫌うものだったのにね」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 平塚静

まぁ、説明していない理由もなんとなくは察せられる。vol.08, l.0831

奉仕部は雪乃や八幡がアイデンティティや対人スキルを習得する場、手段であって

だろう。

「私と彼が同じやり方をとる必要はないということよ」 / 「お互い無理して合わせたって意味ないしな」vol.08, l.0869

齟齬。生徒会長編のトリック。雪乃は自身が勝利することでお願いとして八幡を生徒会に参加させようとしている。八幡は奉仕部の関係性について悲観している 。 「わかるものだとばかり、思っていたのね」 参照。

3. 夕方、 廊下 vol.08, l.0890

平塚「君のやり方では、本当に助けたい誰かに出会ったとき、助けることができないよ」

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 平塚静

「君のやり方では、本当に助けたい誰かに出会ったとき、助けることができないよ」vol.08, l.0925

以下の何れかあるいは全てを意味しよう。八幡は既に孤立しておらず従来の八幡の手法は機能しない。嘘告白の時点から既に。

3. どこまでも、雪ノ下陽乃は底が知れない。

1. 夕刻と呼ぶにはやや遅い。 川沿いの並木道, 国道 vol.08, l.0929

八幡は帰宅せずに千葉へ。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡
  • 言及される人物
    • 比企谷小町, 比企谷父, 比企谷母
  • 聖地
    • 川沿いの並木道 : 花見川サイクリングコース
    • 国道 : 国道14号もしくは国道357号

2. 夜。 国道一四号, 中央駅, 映画館, ドーナツショップ vol.08, l.0956

八幡は映画待ち中に陽乃と遭遇。陽乃曰く、雪乃は雪ノ下家を「嫌いだけど、嫌われたくはない」。陽乃は生徒会長選挙があること、雪乃が生徒会長をやらない事、を知る。折本かおり登場。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下陽乃, 折本かおり
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃
  • 聖地
    • 中央駅 : 千葉中央駅
    • 映画館 : 京成ローザ10East
    • ドーナツショップ : ミスタードーナツ千葉中央駅前店(閉店)。中央区本千葉町4−1。

「じゃあ雪乃ちゃんは生徒会長やらないんだ」 / 隣でも何か考えているような息遣いが聞こえた。vol.08, l.1125

雪乃に生徒会長をやらせる事を陽乃が思いついた表現。

陽乃は生徒会長をやらなかった。陽乃は雪乃に自身とは異なる道を歩ませようとしている。陽乃は雪乃が自身の様な道を歩む事を拒否している。

3. 夜、 ドーナツショップ vol.08, l.1157

陽乃は八幡が折本に告白した事を聞く。折本や仲町は葉山の名を挙げる。八幡は「知り合いじゃない」と言う。陽乃は「面白そう」という理由で葉山を呼び出す。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下陽乃, 折本かおり, 仲町千佳
  • 言及される人物
    • 葉山隼人

4. 葉山到着後、 ドーナツショップ vol.08, l.1308

葉山到着。折本や仲町が離脱。陽乃は葉山に「面白そう」だから呼び出した、と言う。葉山曰く、陽乃は「興味がないものにはちょっかい出したりしない」「好きなものをかまいすぎて殺すか、嫌いなものを徹底的につぶすことしかしない」

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下陽乃, 葉山隼人, 折本かおり, 仲町千佳

「だって面白そうだし」 / あからさまな悪意が透けて見えた。vol.08, l.1358

陽乃は少なくとも文化祭での葉山と八幡を知る。しかし八幡は葉山の事を 「知り合いじゃないし」vol.08, l.1292 と回避する。この矛盾からして「面白そうだし」が第一義で良いだろう。

が、八幡と折本との仲の状態を確認する事、破壊する事、は雪乃の恋の支援にはなる。あるいは「悪意が透けて見えた」が正しければ、八幡が雪乃ではない初恋を持つから、だろう。なお陽乃は葉山に対する悪意、興味、は持つまい。

「雪乃ちゃんとか知ったらどんな顔するかなぁ......。」vol.08, l.1364

「雪乃が折本を知ったら」か「折本が雪乃を知ったら」かが不明。前者であれば対雪乃カードとしての折本の保持、後者であれば八幡と折本の関係性の破壊、を意図する。おそらくは前者。陽乃の企みは概ね成功しない。

いずれにせよこのエピソードは「陽乃は葉山を意識していない、葉山に価値を見出していない」ことの描写だろう。対照的に葉山は陽乃に呼ばれれば 部活帰りにそのままvol.08, l.1314 来る。

「あの人は興味がないものにはちょっかい出したりしないよ。」 / 忠告か、それとも警告か。葉山の言葉には確かに棘が仕込まれている。vol.08, l.1401

嫉妬。陽乃は葉山に何もしない。

5. 夜、 比企谷宅 vol.08, l.1405

帰宅、寝落ち。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, カマクラ
  • 言及される人物
    • 比企谷小町, 比企谷父, 比企谷母

4. 静かに、雪ノ下雪乃は決意する。

1. 翌朝火曜日。 比企谷宅, 階段, 廊下, 教室 vol.08, l.1441

結衣は八幡を奉仕部に誘う。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 一色いろは, 比企谷小町, 比企谷父, 比企谷母, カマクラ

お前は怒ってないのかと、そう言いかけてやめた。 / 由比ヶ浜はいつもと同じように過ごすことで、以前と同様の在り方を求めている。それは、俺が取った行動と合致しているはずだ。vol.08, l.1481

結衣は八幡と雪乃と結衣とで仲の良い状態を望んだ。がしかし八幡は雪乃と対立した。結衣はこれに怒るかも知れない。

しかし、結衣はいつもと同じように過ごすことで、以前と同様の在り方を求めている。八幡が嘘告白をした理由は、以前と同様の在り方を求めたから。すなわち、結衣と八幡の行動は奉仕部を変えたくないという意図で合致している。

2. 火曜日放課後、 奉仕部室 vol.08, l.1487

雪乃結衣案、別候補を立てて投票で負ける。雪乃は八幡案が問題の先送りに過ぎないことを咎め、しかし八幡が変化を望まない事を知る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 葉山隼人, 折本かおり

「誰か候補は見つかったのか?」 / 「それは、まだなんだけど......」vol.08, l.1556

以降、立候補者についての八幡の質問はすべて結衣が応答し雪乃は黙する。雪乃は嘘はつかないが本当のことを言わない事はある。

5. 最後まで、葉山隼人には理解できない。

1. 数日後、 教室 vol.08, l.1714

葉山は八幡を折本らとの遊びに誘う。八幡は断る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 葉山隼人
  • 言及される人物
    • 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町, 雪ノ下陽乃, 海老名姫菜, 折本かおり, 仲町千佳, カマクラ

あの一件で葉山が見せた憐れみvol.08, l.1765

「君はそういうやり方しか、知らないんだとわかっていたのに」vol.07, l.3254 のこと。

2. 深夜、 比企谷宅 vol.08, l.1780

葉山は陽乃に八幡の呼び出しを依頼する。陽乃は小町経由で八幡を呼び出す。八幡が陽乃に曰く、折本への好意は、「ただ一方的に願望押しつけてたというか、勘違いしてただけで、それを本物とは呼ばない」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町, 雪ノ下陽乃
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 葉山隼人, 折本かおり, 比企谷父, 比企谷母, カマクラ

『ほら、文化祭の後、ちょっと会ったじゃない?』vol.08, l.1811

7巻、 彼女たちの、うぃー・うぃる・ろっく・ゆーvol.07, l.3390

「ただ一方的に願望押し付けてたというか、勘違いしてただけで、それを本物とは呼ばない」vol.08, l.1828

この言葉で陽乃に「本物」という言葉が伝わった。以降、陽乃は八幡に絡む際に「本物」と言う言葉をキーワードとする。

3. 金曜日、 教室 vol.08, l.1889

八幡は葉山に電話番号を教える。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 葉山隼人
  • 言及される人物
    • 由比ヶ浜結衣, 三浦優美子, 戸部翔

4. 待ち合わせまでまだ一時間ちょっと、 カフェ vol.08, l.1923

陽乃がデートを見物に来ている。「隼人がそうまでして比企谷くんを連れていきたがる理由も気になる」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下陽乃
  • 言及される人物
    • 葉山隼人
  • 聖地
    • カフェ : 千葉PARCOのカフェ。2016年閉店、現エクセレントザタワー。かつてPARCO前道路には駐輪場があった。

あいつは結局仲間外れを作ることに気が引けているのだ。vol.08, l.1959

まちがっている。葉山の意図は八幡の名誉回復。

5. 一七時。 駅前, 映画館 vol.08, l.1996

葉山、折本、仲町と合流。折本は興味のない人間に対しても距離を詰める、かつての八幡はそれを好意と誤解した。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 葉山隼人, 折本かおり, 仲町千佳
  • 言及される人物
    • 雪ノ下陽乃
  • 聖地
    • 駅前 : 千葉駅東口扇形モニュメント
    • 映画館 : 京成ローザ10East

始まってもいなかったものを、今になってちゃんと終わらせることができた気がした。vol.08, l.2082

八幡が折本による傷が癒えている事を自覚した表現。

6. 午後七時半、 パルコ vol.08, l.2084

葉山、折本、仲町とショッピング。三浦・海老名が葉山を見かける。戸部・いろはと逢う。葉山曰く、いろはは八幡に素を見せる。葉山、八幡に「本当に人を好きになったことがないんだろうな」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 折本かおり, 仲町千佳
  • 聖地
    • パルコ : 千葉PARCO, 2016年閉店。現エクセレントザタワー。

あそこに由比ヶ浜がいないのが少し気にかかる。vol.08, l.2152

結衣は葉山に呼ばれ待機している。 「今日ちょっと話せそうっていわれて、それで」vol.08, l.2437

「いろはも、君にはああいう姿を見せるんだな......」vol.08, l.2244

いろは「も」。葉山も。

「結局、本当に人を好きになったことがないんだろうな」 / 「君も、俺も」 / 「だから勘違いしていたんだ」vol.08, l.2323

葉山が陽乃を好きになった理由の開示。

八幡はかつて折本かおりが好きだった。しかし 折本かおりは興味のない人間に対してもこういう接し方をするvol.08, l.2081 。八幡は、折本の、他人に対して距離を詰めていく態度を、自分への好意だと勘違いした。しかし折本のその態度は興味のない人間への態度に過ぎなかった。

同様に、葉山はかつて陽乃が好きだった。しかし陽乃は 「あの人は興味がないものにはちょっかい出したりしないよ。......何もしないんだ。好きなものをかまいすぎて殺すか、嫌いなものを徹底的につぶすことしかしない」(vol.08, l.1401 ) 。葉山は、陽乃の、自身を殺しもつぶしもしない態度を、自分への好意だと勘違いした。しかし陽乃のその態度は興味のない人間への態度に過ぎなかった。例えば単純に陽乃の葉山に対する言葉は 「いいえ、大好きよ」vol.13, l.3376

7. 八時半。 外の通り, カフェ, 駐輪場 vol.08, l.2330

葉山の策。仲町と折本をカフェに誘導し、そこに雪乃と結衣を呼び出し、折本らを傷つけ、八幡の名誉回復を図る。さらにその自身を陽乃に見せる。陽乃は葉山に興味がなく、雪乃に生徒会長選挙立候補を煽る。雪乃は葉山と陽乃に結託があると誤解する。葉山は誤解に基づき八幡を憐れむ。葉山「君が誰かを助けるのは、誰かに助けられたいと願っているからじゃないのか」。八幡は葉山に憤る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 雪ノ下陽乃, 葉山隼人, 折本かおり, 仲町千佳
  • 聖地
    • カフェ : サンマルクカフェ千葉中央銀座通り店、閉店。中央区中央3丁目4。パルコのはす向かい、サイゼの正面。

「ちょっとお腹減らない?」 / 「あんまり重いのもなんだし、そこのカフェでいいかな?」vol.08, l.2348

「お腹減らない?」と「重いのもなんだし」が軽く矛盾する。

葉山は折本らを誘導している。そのカフェに雪乃や結衣を呼び出しているし、その計画を陽乃に伝えている。

「そっか」 / 何かに納得したように折本は呟くと、また歩き出す。vol.08, l.2428

これ以降、折本は八幡の告白話をネタにしない。例えば 「仲良いっていうか、うーん......。まぁ、ちょっとねー」vol.09, l.2338 。この折本の納得は具体的には 「人がつまんないのって、結構見る側が悪いのかもね」vol.09, l.5187

但し、 折本かおりが俺の存在に気づいて手を振ってくる。ああ、こういう時手を振ったりするの、中学の時から変わんないな、こいつ......。vol.11, l.2661 の通り、この後も、八幡は折本にとって「興味のない人間」ではある。

今日のはそれと一線を画する。挑発と呼ぶには生温いほどの攻撃性がそこにはあった。vol.08, l.2476

謎解きは その攻撃はおそらく巣立ちの時にこそ激しくなるのだろうvol.14, l.6264 。すなわち、文化祭にて陽乃からの独立を宣言した雪乃に対する陽乃からの巣立ちの試験。

陽乃は生徒会長にはならなかった。雪乃が生徒会長に就くならば、それは雪乃の自立、陽乃への依存癖の快復、を意味する。陽乃はこれを促した。

「なんでもそつなくこなす人間なんて、面白みがないじゃない?」vol.08, l.2503

「なんでもそつなくこなす」とは、葉山が八幡の名誉回復を図ってみせたこと。

「気になってたこともわかったし」vol.08, l.2507

「気になってたこと」とは、 「隼人がそうまでして比企谷くんを連れていきたがる理由」vol.08, l.1955

「できることをやろうと思っただけだよ」vol.08, l.2445 / 「俺がやりたいことをしただけなんだ」vol.08, l.2520

つまり、雪乃や結衣を折本らに引き合わせたことは葉山にとって「やりたいこと」。陽乃の命令や計画によるものではない。

この葉山の試みは失敗。陽乃の感想が 「なーんか白けちゃったし」vol.08, l.2507 であって、かつ葉山と陽乃との会話もない。

「ずっと、考えていたんだ。俺が壊してしまったものを取り返す方法を」vol.08, l.2535

一義的には当然ながら奉仕部の人間関係。

しかし恐らくさらに陽乃から葉山への興味。すなわち八幡の名誉回復の場に陽乃をも同席させる理由。

葉山は小学生の頃に雪乃と同級生の諍いに介入し、自身と陽乃と雪乃との関係を壊した。その結果陽乃は葉山への興味を捨てた。葉山は陽乃からの興味を取り返したい。

葉山はその頃の三人の関係を奉仕部に擬え、恐らくはキャンプや文化祭などでも陽乃の指示に従い、雪乃の周囲の人間関係を守ろうとしていた。しかし葉山は修学旅行で海老名・戸部の問題の解決を八幡に頼り、結果として雪乃の周囲の人間関係を壊した。その代償に葉山は奉仕部の関係性を修復したいと考えている。

そしてその雪乃の人間関係を修復する行為、今の葉山が中途半端ではなく積極的に雪乃の敵を傷つけられる事、を陽乃に示し、それで陽乃の興味を引けないか、許されないだろうか、と考えている、と思われる。

「だからわかっていたのに頼ってしまった。そのせいで......」vol.08, l.2538

八幡は、自棄的な やり方しか知らないんだとわかっていたのにvol.07, l.3254「君にだけは、頼りたくなかった」vol.07, l.3146 のに、葉山は八幡に戸部と海老名の人間関係の維持を任せてしまった。そのせいで、雪乃と八幡はすれ違ってしまった。

「俺が出来るのはこれくらいしかなかった」vol.08, l.2546

葉山は折本らを用いて八幡の名誉回復を試みた。葉山の意図は下記の3つであろう。

「君が......、君が誰かを助けるのは、誰かに助けられたいと願っているからじゃないのか」 / そんな紛い物みたいな感情で、俺も、彼女も今までやってきたわけじゃない。vol.08, l.2574

「彼女も」が唐突に登場する。であるから、八幡のこの独白がまちがっていて、雪乃は、誰かに助けられたいと願って、誰かを助けている、と仮定する。ならば、それは物語全体を通した雪乃のテーマとなり得る。 「「だから、これで終わりにしましょう」 参照。

おそらくは、誰かとたった一つ共有していて。 / 今はもう失くしてしまった信念を。vol.08, l.2596

「そんなうわべだけのものに意味なんてないと言ったのはあなただったはずよ」vol.08, l.1663 のこと。後に うわべだけのものに意味を見出さない。それは俺と彼女が共有していたであろう一つの信念。vol.09, l.2700 と明言される。

6. そして、由比ヶ浜結衣は宣言する。

1. 月曜日、朝、 教室 vol.08, l.2600

三浦も葉山も落ち込んでいる。三浦は何も言わないし聞かない。それでも彼らは人間関係を維持すべく努力を続ける。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 大岡
  • 言及される人物
    • 大和

2. 昼休み。 教室, 職員室, 奉仕部室, 特別棟の廊下 vol.08, l.2639

平塚、八幡に雪乃の立候補と葉山の応援演説とを伝える。八幡は雪乃と会話し、雪乃の立候補の意思が変わらない事を確認する。平塚も葉山も八幡に選択を迫る。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 平塚静, 葉山隼人
  • 言及される人物
    • 一色いろは, 比企谷小町, 雪ノ下陽乃, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 城廻めぐり, 折本かおり, 仲町千佳

「さて、もう一度聞こう。比企谷、君はどうする?」vol.08, l.2724

平塚は、教師陣に雪乃の生徒会長戦立候補を隠して時間を稼ぎ、八幡と雪乃の対話を促している。

「彼女は、自由参加になっても毎日鍵を取りに来ていたよ」vol.08, l.2737

雪乃が奉仕部あるいはその関係性を維持する意図を持っているということ。

「まだ、何か?」 / 「いや、確認がしたかっただけだ」 / 「......そう」 / 雪ノ下は返事ともため息とも吐かない声を漏らすとvol.08, l.2829

雪乃は何かを尋ねて欲しくて、あるいは自分から話したくて、しかしそれを表現できない。この現象は9巻で頻出する。例えば 「あなたの個人的な行動まで私がどうこうできるわけではないし、そんな資格もないもの。」 / 「私の許可が必要?」 / 「いいや、ただの確認だ」vol.09, l.2642

修学旅行以前ではこの現象は見つからず、物語終盤まで続く。修学旅行以前は雪乃は他人に要求する種の事柄を言い出す素振りさえしていない、ということか。

3. 放課後。 教室, 廊下, 通用門, 学校からすぐ近くの公園, マンションに沿って曲がりくねった道 vol.08, l.2850

結衣は八幡に立候補の意思を伝える。結衣「勝手なのは、みんなだよ」。生徒会長が雪乃でも結衣でも奉仕部はなくなる。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 葉山隼人, 三浦優美子
  • 聖地
    • 学校からすぐ近くの公園 : 中高浜公園
    • マンションに沿って曲がりくねった道 : 高浜北団地内

「勝手なのは、みんなだよ」vol.08, l.2910

八幡の嘘告白も雪乃の立候補も自身の意図を結衣に明かしていない。

「そっか......、ゆきのんは、そうするんだ......」vol.08, l.2825 / 「今度はね、あたしたちが頑張るの。」vol.08, l.2918

結衣がまちがっている。結衣は雪乃の「八幡の自己犠牲を防ぐ為に立候補する」という意図は把握しているが、しかし「奉仕部のメンバーを生徒会に移行させる」意図、その意図を言わずとも通じてほしいという意図、を把握していない。よって、生徒会よりも部活の方が好きだという理由で、雪乃と同じく生徒会長に立候補する。

本文中で結衣によるまちがった行動は、これと、最後の こんなの、まちがってるってわかってるけど。vol.14, l.6168 のみ、だろう。

「あたし、この部活、好きなの」 / 「......好き、なの」 / 「だから、ゆきのんに勝つよ」vol.08, l.2953

「この部活、好きなの」「(八幡が、雪乃が)好きなの」「だから、(生徒会長選のみならず恋愛でも)ゆきのんに勝つよ」。

結衣の視点では、雪乃は八幡を守ろうとして、奉仕部を守ろうとしていない。だから結衣は八幡と奉仕部とを守ろうとしている、ということ。なお雪乃は奉仕部の生徒会への移行という形で八幡も奉仕部も守ろうとしていて、しかしその意図を話していない。

しかし恐らく結衣の立候補自体は正しい。雪乃が生徒会長になるのであればこの立候補を理由に結衣は副会長や書紀などの役職に就く事ができる。少なくとも 「立候補がいなかった書記以外はもう発表されてるの」vol.08, l.0515 として書記は空いている。

雪ノ下も由比ヶ浜も、納得した上での選択なら、それで構わない。俺個人の感傷は人の選択を左右していいものではないのだ。 / 誰かに役を押し付けてしまうのは、苦しい。vol.08, l.2986

まちがっている。八幡がまだ相互理解を放棄している、 理解されないことを嘆かず、理解することを諦める。vol.05, l.2376 に従っている表現。感傷の処理についての正答はそれを伝えること。例えば 「だからさ、それ、絶対伝えた方がいいと思う」vol.14, l.4307

7. 言うまでもなく、比企谷小町の優しさはそこにある。

1. 十一月も末の夜、 比企谷宅 vol.08, l.2995

八幡の問題は「奉仕部の瓦解を止める理由がない」。八幡は家族ならば頼れる。八幡は小町に経緯を話す。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町, カマクラ
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 比企谷父, 比企谷母

起因となる理由がないから、問題が成立しない。vol.08, l.3028

今回の問い。視点が自身のみであって、他者の立場を尊重し介入を控える限り、問題を設定できない。

「どうせきっとなんかやったお兄ちゃんが悪いし」 / 「だいたい謝ってないし」vol.08, l.3090

小町は理想解の提示役。嘘告白以降の奉仕部の軋轢の解消の理想解。嘘告白について黙っていたことを単に謝ればよい。

2. 長い長い話を語り終えた後、 比企谷宅 vol.08, l.3106

八幡の問題に対して小町は他者の視点を提示する。八幡は結衣や雪乃に傷ついて欲しくない。だから行動する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣

「小町のために、小町の友達のために、なんとかなんないかな」vol.08, l.3159

八幡の問題に対する小町の暫定解。小町は他者の視点を提示する。これを受けて八幡は 最優先すべきものを小町の願いである雪ノ下と由比ヶ浜の残留vol.08, l.3583 に設定する。

まちがっている。 俺が見つけ出した、俺の答え、俺の理由で動かなければならなかったのにvol.09, l.3039 。あるいはここで八幡がなすべきは雪乃や結衣の残留ではなく「三人で一緒にいること」、雪乃と結衣との人間関係それ自体の維持ないし回復である。その最も効率的な実現方法は雪乃を生徒会長とする生徒会に移行することである。結果として八幡は雪乃の意図を汲み損ねる。

だから、彼女の行動を犠牲とは絶対に呼ばない、呼ばせてはならない。vol.08, l.3187

葉山の「もうやめないか、自分を犠牲にするのは」vol.08, l.2548 に対する反発。自己犠牲だなんて呼ばせないvol.08, l.2591 を引く。

八幡のかつての自身の行動が 自己犠牲 であってそれが 陳腐なナルシシズム であるということ、八幡がそれを自覚しているということ。

3. 翌日、火曜日、昼休み。 学校, 図書館 vol.08, l.3192

材木座と合流。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 材木座義輝
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 比企谷小町

4. 放課後、 教室 vol.08, l.3271

結衣は三浦や海老名らと公約を検討する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 由比ヶ浜結衣, 三浦優美子, 海老名姫菜
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 材木座義輝, 葉山隼人, 折本かおり

5. 放課後、 駅近くのサイゼ vol.08, l.3307

小町に電話、材木座と合流。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町, 材木座義輝
  • 聖地
    • 駅近くのサイゼ : サイゼリヤ稲毛海岸駅前店

「悪いな」 / 「いいよ。あんたはあの部活でやってるほうが......、合ってるし」 / 「はぁ? なんで?」 / 「な、なんでもない。」 vol.08, l.3441

沙希の視点では

である。名前が覚えられないどころの話ではない。

最低限の言葉だけでいろいろ通じるってのは楽でいい。vol.08, l.3322

小町は「今日飯いらない」「学校近くのサイゼ」「材木座と」「打ち合わせ」だけで、八幡が何かを頑張る事を察して、戸塚と川崎を呼ぶ。

6. 小一時間ほど食事に当てた後、 駅近くのサイゼ vol.08, l.3335

小町、戸塚、沙希、大志合流。小町「雪乃さん結衣さん流出阻止だいさくせーん!」。小町案、「事前に宣言しとく」「女子同士の対立をうまく利用する」。材木座案「二虎競食の計」「空城の計」「背水の陣」「戦わずして勝つ」。大志案「たくさん他の候補」。沙希案「結局会長って誰が」。八幡は材木座とSNS上に架空の応援アカウントを作って推薦人を捏造し、雪乃や結衣の推薦人集めを妨害する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 比企谷小町, 川崎沙希, 川崎大志, 戸塚彩加, 材木座義輝
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 相模南

「二虎競食の計か!」 / 「では、空城の計!」 / 「かくなる上は背水の陣......」vol.08, l.3512

材木座は斜め下の解法の提案役。偽垢と競わせる。アカウントには中の人がいる様に振る舞う。失敗したとしても責められるのは架空の人物。

「お兄ちゃん、ちゃんと雪乃さんと結衣さんと話してね?」vol.08, l.3846

小町は理想解の提示役。雪乃と結衣と話せば雪乃の生徒会長立候補の意図を引き出せた。

8. 満を持して、比企谷八幡はかたりかける。

1. 数日後、深夜、 比企谷宅 vol.08, l.3854

八幡と材木座は応援アカウントの設定を変更する。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 材木座義輝
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 一色いろは, 葉山隼人

2. 金曜日、昼休み、 一年C組の教室 vol.08, l.3909

八幡はいろはを呼び出す。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは

3. 昼休み、 図書館 vol.08, l.3950

いろはは計算高く自身のブランドイメージを守りたい。よって八幡は、いろはに悪意を持つ層への意趣返し、支持者数、葉山の庇護、等を用いて、いろはの生徒会長就任に同意させる。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは
  • 言及される人物
    • 雪ノ下陽乃, 葉山隼人, 三浦優美子, 折本かおり

「ちょっと悪目立ちしたら、そいつには何言ってもいいと思ってる。」 / 「やっぱ、やられたらやりかえさないとな......」vol.08, l.4046

前者は 一度下に見たら、何を言ってもいい。vol.08, l.2379 として八幡の「サイゼ」を笑った仲町のこと。後者は葉山のこと。

4. 放課後、 奉仕部室 vol.08, l.4117

八幡は応援アカウント名を「一色いろは応援アカウント」に変更した。八幡は「一色は生徒会長をやる気になった」事を告げ、雪乃と結衣の立候補を取り下げさせる。雪乃「わかるものだとばかり、思っていたのね」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣
  • 言及される人物
    • 一色いろは, 平塚静, 戸塚彩加, 葉山隼人, 三浦優美子, 海老名姫菜, 戸部翔, 城廻めぐり, 相模南

他人が俺をどう見るか、いかに勝手な意見を押し付けてくるかを葉山が教えてくれた。 / それだけではないのかもしれないと気づかせてくれた人もいるけれど。vol.08, l.4167

結衣。結衣の立候補を見て、八幡は 誰かに役を押し付けてしまうのは、苦しい。vol.08, l.2986 と気付いた。

雪ノ下はそれ以上、追求をしてこない。 / おそらくはその無駄を悟ったのだろう。vol.08, l.4217

まちがっている。雪乃にとっての問題は八幡が雪乃の意思を理解していない事。八幡が雪乃の立候補を止めようとしている時点で、雪乃がその真偽を追求する意味はない。

「わかるものだとばかり、思っていたのね......」vol.08, l.4286

読者への挑戦状。 「わかるものだとばかり、思っていたのね」 参照。

なら、他にもそういう奴がいたっておかしくない。vol.08, l.4310

雪乃。雪乃と八幡は理由がなければ動かない。夏合宿の時点で既に 「由比ヶ浜が説得しなければ君たちはそもそも動く理由を見つけられなかった」vol.04, l.3388

5. 夕方、 奉仕部室 vol.08, l.4314

結果、八幡は雪乃も結衣も傷付けた。八幡は雪乃も本物を求めていた事に気付くべきだった。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣

何をしていいのかも知らなかったくらいだ。それを気付かせてくれた人がいた。だから、やはりその人にこそ、優しい言葉はふさわしい。vol.08, l.4349

結衣の 「できることも、やれることもなーんもないんだなって」vol.08, l.2902 という台詞のこと。

しかし、結衣にこそ 優しい言葉はふさわしい とする、その言葉が、 「もう髪の毛いいだろ」 である。決して優しくはない。

9. その部屋には、紅茶の香りはもうしない。

1. 一二月の頭、放課後。 廊下, 生徒会室 vol.08, l.4395

いろはが生徒会長に。めぐりの謎解き「雪乃が会長、結衣が副会長、八幡が庶務」。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 一色いろは, 戸部翔, 城廻めぐり
  • 言及される人物
    • 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣, 葉山隼人

2. 夕方、 奉仕部室 vol.08, l.4510

奉仕部は馴れ合いを演じる。八幡は自身がまちがえた事を理解して、しかし己の感情を理解しようとしておらず、答えを出せない。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡, 雪ノ下雪乃, 由比ヶ浜結衣

俺がすべきことは策を弄する事ではなく、他にあったのではないかと。 / それでも答えが出せないのは、きっと俺自身に原因があるのだろう。vol.08, l.4567

「俺がすべきこと」は、雪乃と話すこと、雪乃を理解しようとすること。

その答えが出せない原因は、八幡が、 理解されないことを嘆かず、理解することを諦める。vol.05, l.2376 を理想としているから。

3. vol.08, l.4574

八幡の独白。本当に守りたいと、そう思ったものはいったい、なんだったのだろうか。

  • 登場人物
    • 比企谷八幡

例えばもし、ゲームのように一つだけ前のセーブデータに戻って選択肢を選び直せたとしたら、人生は変わるだろうか。 答えは否である。vol.08, l.4575

まちがっている。

平塚も葉山も 「君はどうする?」vol.08, l.2708, 「君はどうする?」vol.08, l.2842 と選択を問うた。八幡には「雪乃と結衣とで生徒会に移る」という正しい選択肢があった。

小町の言う通りに八幡が雪乃と結衣と話していたなら。あるいは雪乃が生徒会長になりたい理由を知ろうとしていたなら。