07巻 修学旅行
10月。 結衣が八幡に言い寄り始める。八幡は、海老名に嘘告白し、「付き合う気はない」という言葉を引き出し、結衣へのあてつけとする。
本巻は多くのキャラクターや人間関係を再設定する。 雪乃の 以前より柔らかくなった。
vol.07, l.1048 , 結衣の ときどき妙に女の子らしい計算高さを見せる
vol.07, l.1886 ,三浦の お前はおかんみたくいろんな子の面倒見てる時のほうが可愛いこと多いぞ。
vol.07, l.2349 など。いずれも八幡の成長あるいは時間経過に伴って八幡が彼女らをより深く知った表現だろう。
7巻から9巻、嘘告白、生徒会長選挙、クリスマスイベントは、八幡がかつて雪乃に押し付けた 理解されないことを嘆かず、理解することを諦める。
vol.05, l.2376 という八幡の理想がまちがっている事を示すエピソードである。 「あなたのやり方、嫌いだわ」 参照。
本巻では八幡の事情や感情は葉山や海老名が代弁する。奉仕部を壊したくないという感情は葉山が、結衣にアプローチされるという立場は海老名が語る。
であるから、嘘告白は、「こっちから行くの」
vol.06, l.3029 以降好意を表明する結衣に対して、その好意の表明を封じる意図を持つ。 「人の気持ち、もっと考えてよ......」 参照。
戸部らは八幡をネタにする。結衣は八幡を気遣う。川崎は八幡を避ける。戸塚と八幡は修学旅行でグループを組む。戸部は海老名への告白を決意している。海老名はそれを防ぐべく葉山に相談する。
「ぼく、まだ決まってないんだけど」/「なら、一緒の班にするか」vol.07, l.0190
「ぼくは、もう決めてる、よ」
vol.02, l.0756 / 「お前決めてるっつったじゃん」
vol.02, l.1438 との対比。戸塚が八幡に合わせている。
絶対にこちらには近づいてこないし、視線が合っただけで露骨に顔を背けるのだ。/そうそう、それでいい。vol.07, l.0164
誤解。 「サンキュー! 愛してるぜ川崎!」
vol.06, l.3732 の影響。
葉山と海老名さんが教室に戻ってくるところだった。vol.07, l.0206
ここで葉山は海老名と話をしている。つまり葉山は初めから海老名が戸部の告白を拒否する事を知っている。 おそらく、俺たち奉仕部だけでなく、葉山にも相談していたことなのだろう
vol.07, l.3351 。
なお、海老名が戸部を拒否する理由は 「面倒だよね、そういうの」
/ 「恋とか愛とか性とか」
vol.13, l.3638 。
八幡の紅茶は紙コップ。八雪結は修学旅行の三日目の自由行動の同行に合意。葉山に紹介され戸部らが奉仕部来訪。戸部の依頼、海老名に告白するサポート。八幡は人間関係毀損リスクを指摘する。葉山「わかってるから、その辺はうまくやるよ」。
葉山が奉仕部を訪れた意図は、八幡に戸部の告白を止めさせること。少なくとも部外者として巻き込んで道具として用いること、あるいは八幡に自身らの関係を混乱させること。恐らく葉山は海老名も奉仕部に紹介した。
実際のところ戸部は奉仕部あるいは他人の助けを必要としていない。竹林で告白することも自分で決めていた。葉山が紹介するから奉仕部を訪れたのみである。
自分で注いだくせにどこか納得いかないふうな冷めた表情でvol.07, l.0254
伏線。 「一人だけ紙コップというのも不経済でしょ」
vol.09, l.5546 。
「紅茶、......冷めるわよ」/「......猫舌なんだよ」/こうわざわざ用意されてそれを受け取れないほど天の邪鬼でもない。vol.07, l.0259
ありがとうと言えない程度には天の邪鬼。
「例えば、自分が仲良い奴に告白するとその後の関係が」/「まぁまぁ、もうわかったからさ」vol.07, l.0626
葉山は八幡の発言を打ち切る。葉山(と海老名)は戸部が告白し海老名が断ったその後の関係を懸念しているから。
戸部の長所、海老名の好み、結衣の戸部像、等を鑑みるに戸部の告白は失敗する。結衣案、葉山・戸部・八幡・戸塚で4人組。京都散策中に戸部をサポートする。
「隼人くんの言うとおり、ガチでマジ口悪いわー。」vol.07, l.0854
「口が悪いところあるからな」
vol.06, l.3965 。
四人でグループを作るからもうひとり、そこに誰か入ることになる。だが、その影響はさして考えなくていいだろう。vol.07, l.0926
まちがっている。川崎が入り、戸部は海老名に近づきにくくなる。
修学旅行のグループ決め。海老名は戸部が苦手とする川崎を巻き込む。
海老名が奉仕部を訪れ、依頼。「今までどおり、仲良くやりたいもん」。
「今までどおり、仲良くやりたいもん」vol.07, l.1152
海老名の真意。 自分から男子を遠ざけさせてほしい、ひいては戸部の告白を未然に防いでほしい。
vol.07, l.3349
「なんかやたらと縁結びの神社とかたくさんあるらしいしさ、結んできたらいいよ!」vol.07, l.1242
小町は小町は理想解の提示役。「やたらと」。すなわち海老名姫菜と戸部の縁を結ぶ事が正答。
川崎と八幡はお互いに会話しない。材木座や戸塚は八幡に話しかける。電車内、海老名は川崎を使って戸部を牽制する。
海老名戸部に進捗無し。富士山。結衣は八幡にスキンシップする。
俺におぶさるように肩から背中にかけて由比ヶ浜の腕が添えられた。vol.07, l.1480
おそらく結衣のスキンシップは意図的なもの。 「人の気持ち、もっと考えてよ......」 参照。
京都観光。結衣は男女一対づつ胎内めぐりに集める。葉山は戸部海老名を牽制する。戸部海老名に進捗無し。結衣は八幡に触れる。
「あまり時間もないし、そんなに間隔はあけないほうがいいだろうな」vol.07, l.1587
葉山による妨害。戸部・海老名に暗がりで二人きりで行動させない。
結衣は八幡とペアセルフィー。結衣は戸部と海老名で撮ろうとするが失敗。海老名の表面上の依頼「仲良くやりたい」は既に満たされているが、しかし海老名は「最後まで気は抜けない」。八幡は戸部をサポートする。
「それなら何人かに別れて」/「頼めるかな?」vol.07, l.1732
葉山は戸部と海老名が二人で自撮りする機会を潰した。あるいは葉山は奉仕部を訪れた時点で八幡を部外者として同行させて活用する計画を立てていたかも知れない。
その表情が一枚目から寸分違わぬというのがどこか空恐ろしかった。vol.07, l.1768
海老名の表情や腐女子的な振る舞いが演技である、ということ。 本当に変人なわけではなく、「変人」として扱われているだけにすぎない
vol.07, l.2738 。
「でも、最後まで気は抜けないし」/「え?それどういう…」vol.07, l.1815
海老名は戸部の告白を受けまいという事を結衣が察する機会。
但し結衣は最後まで戸部の告白を応援する。恐らくは結衣にとって告白やその拒否で発生する種の軋轢は些細なことに過ぎない。あるいはさらに「戸部が告白して海老名が拒否して、それでも戸部が諦めない」という状態が正答であるということ。
「悪いおみくじ結ぶんなら上のほうがいいんじゃないか。」vol.07, l.1841
海老名が八幡の立ち位置が戸部寄りである事を察する機会。これを受けて海老名は八幡に釘を刺す。
葉山らは麻雀。葉山は戸部に女子の階に行かせようとする罰ゲームを止める。八幡戸塚材木座はUNO。材木座は八幡のUNO宣言の直前に話しかけてタイミング奪う。
言う前に話しかけてタイミング奪うとか、卑怯すぎる......。vol.07, l.1981
八幡が突発告白する手段の伏線。 ついこないだ材木座にやられた手口
vol.07, l.3224 。
「女子の部屋行ってお菓子もらってくるー!」/「上に上る階段、厚木がいるってさ」vol.07, l.1992
葉山は戸部に女子の部屋に行かせない。 恐らく「厚木がいる」は嘘。 厚木が張っているらしいが、わざわざ確かめに行くようなものでもない
vol.07, l.2017 。
戸部は結衣と八幡のアシストに感謝する。雪乃は文化祭の何かをクラスメイトに追及され逃げて来る。八幡と雪乃に平塚が合流、ラーメンに誘う。
「クラスメイトたちの話題の矛先がこちらに向かってきてね。」/「そもそもあなたが文化祭のときに......」vol.07, l.2070
「私の人選ミスかしら」
/ 「それは俺の存在感のなさを揶揄しているのか」
/ 「みんなに聞こえてます......」
vol.06, l.2787 。八幡は悪くない。
俺もそれに合わせてちょっと間を空けた。vol.07, l.2087
八幡から雪乃への距離感。
平塚と八幡と雪乃はタクシーで天下一品総本店へ。雪乃「凶暴な旨味ですね」。平塚「問題を起こすなという命令と、問題を解決するよう促すことはまるで違う」「ちゃんと見ているから、いくらでもまちがえたまえ」。
「後部座席では真ん中が一番死亡率が高いからだ」vol.07, l.2151
「助手席が一番死亡率が高いってだけなんだから!」
vol.04, l.0631 の反復。平塚が八幡の隣に座りたかったということだろう。今回は八幡を先に乗せなければ八幡は助手席に座る。
「問題を起こすなという命令と、問題を解決するよう促すことはまるで違うよ」vol.07, l.2221
平塚のキャラクター設定。平塚は、問題が起きる事は許容して、その上で問題を解決するよう促している。
「雪ノ下、叱られることは悪いことではないよ。誰かが君を見てくれている証だ」/平塚先生の言葉に、雪ノ下が僅かに肩を落とした。vol.07, l.2233
雪ノ下家の事情。雪乃の両親が雪乃には自由にさせて叱らないということ。 「あなたを信じているから、自由にさせていたけれど」
vol.11, l.2986 。
「ちゃんと見ているから、いくらでもまちがえたまえ」vol.07, l.2236
8巻以降、雪乃が行動する、まちがえる示唆。 「もう一度問い直すしかないわね」
vol.06, l.2493 を受けて雪乃が行動する意思を持ったこと、を平塚が把握しているかもしれない。
お化け屋敷。川崎は不意打ちに弱い。結衣は八幡に触れる。戸部海老名に進捗無し。
心臓ばくばくいってて辛い。これあれなんじゃないの、不整脈。vol.07, l.2421
結衣と手をつないでいたから。 ぐいと肩口を引っ張られた
vol.07, l.2413 。
結衣は金銭感覚に厳しい。太秦からタクシーで洛西へ。葉山は戸部の海老名へのアプローチを妨害する。
「戸部、行こう」/ふぅん、なるほどな。vol.07, l.2519
八幡が葉山による妨害に気付いた表現。八幡は戸部・海老名・八幡・結衣の4人でタクシーに乗る事を考えていて、しかし葉山がここで戸部を誘った為に、戸部・海老名・葉山・三浦となり、戸部は海老名に言い寄る機会を失った。但しこの時点ではまだ 何故そんな行動をとるのかまではわからない
vol.07, l.2581 。
「本人にその気がちょっとでもあるとすげぇ効く」。雪乃と遭遇。雪乃案、自由行動ルートを戸部に提案し、八雪結は同ルートを回る。
三浦と遭遇。三浦曰く、海老名の腐女子キャラは異性を遠ざける手段であって、海老名は戸部に告白されたら人間関係ごと捨てかねない。八幡の応答は「葉山がどうにかする」。
「葉山がどうにかするっつってたからな」vol.07, l.2761
「わかってるから、その辺はうまくやるよ」
vol.07, l.0629 。八幡が下記を理解しているということ。
扉の前に由比ヶ浜がいることにさして疑問を抱かなかった。vol.07, l.2780
八幡が寝ている間結衣は待っていた。
雪乃と合流、朝食。海老名らも雪乃と同じルートを辿っている。
街並みの中にコーヒーショップの白い建物が見えた。vol.07, l.2805
三条堺町のイノダコーヒ本店。有名。雪乃が 行きたかった喫茶店
vol.12, l.0295 らしい。
観光。雪乃「告白される時には前兆がある」。葉山らと遭遇、海老名「よろしくね」。
海老名さんに警戒心を抱かせないことが重要なのである。vol.07, l.2907
戸部の告白を成功させる為ではなく、海老名に予想外の行動を取らせない為に。 「『あ、じゃあもういいや』って。笑いながらそう言ったの。超他人みたいな感じで」
vol.07, l.2744 を起こさない為に。
八雪結、長辻通でジャンクフード共有。結衣、竹林の道にて、「ここがいいよ」「告られるなら」。
由比ヶ浜は牛しぐれまんを半分に割るとそれを渡してくる。/むぐむぐしていると、由比ヶ浜がぷっと吹き出す。vol.07, l.3005
「別にそんな気にしなくていいのに......」
vol.07, l.1891 と全く同じ状況の繰り返しであって、八幡の 「いらねっつーの」
vol.07, l.2993 の理由が、結衣との間接キスを気にしたから、という事を結衣が理解した表現。
「そーなると、戸部が勝負すんならここか」vol.07, l.3031
戸部は自分で告白する場所を決めている。奉仕部が告白のお膳立てをした訳ではない。
葉山と会話。戸部が告白すれば何かを失う。八幡「それで壊れる関係なら、もともとその程度」、葉山「得ることよりも失わないことが大事なものだってある」。葉山は戸部の告白により壊れる自身の人間関係と、結衣の告白により壊れる八幡の人間関係との相似を指摘する。八幡と葉山は「変えたくない」を相互に理解する。
「なら、君はどうなんだ。君なら、どうする。」/俺の話なんて本当にどうでもいい話で、本当にどうしようもない話だ。vol.07, l.3110
葉山は「結衣が八幡に告白したら雪乃が離れていく、それをどうする」を問うている。 「人の気持ち、もっと考えてよ......」 参照。
たぶん他の誰かの願いでもあるのだ。/きっと俺と同じような奴がいるのだ。/嘘吐きで装って守ろうとしている女の子が。vol.07, l.3134
単純には海老名。
葉山隼人は選べない。あまりに多くのものを持っていて、どれもこれも大切だから。/比企谷八幡は選べない。そもそもの選択肢がなくて、一つの行動しかとれないから。vol.07, l.3142
対比。葉山が選べない理由は戸部と海老名の利害が対立しているから。八幡が選べない理由は雪乃が既に諦めていて、奉仕部が三人でいる為には結衣を諦めさせるしかないから。
戸部の依頼は「告白のサポート」。海老名と葉山の依頼は「今の関係を壊したくない」。相反するが雪乃と結衣は後者を把握していない。かつ八幡は結衣と雪乃に自身の案を説明しない。八幡案、戸部に諦めないと言質を得て、嘘告白で戸部の告白の機会を奪う。海老名は「誰に告白されても絶対に付き合う気はないよ。」と応じる。葉山は八幡に謝る。雪乃「あなたのやり方、嫌いだわ」、結衣「人の気持ち、もっと考えてよ」
「今は誰とも付き合う気がないの。誰に告白されても絶対に付き合う気はないよ。」vol.07, l.3236
海老名は戸部とも付き合う気がない。戸部に告白されても絶対に。
「あなたのやり方、嫌いだわ」vol.07, l.3271
雪乃も結衣も八幡のやり方を不可解な程に嫌う。 雪乃や結衣は、海老名の依頼を知らないから。 「あなたのやり方、嫌いだわ」 参照。
言い換えれば八幡の「ずっと前から好きでした」に対して雪乃は「あなたのやり方以外は好き」だと言っている。
「人の気持ち、もっと考えてよ......」vol.07, l.3313
これ以降結衣は八幡へのスキンシップを控える。
「あたしたちも、戻ろっか」/無理して明るく振る舞う時の声だ。わかりやすくて助かる。vol.07, l.3282
結衣の感情は解る。つまり雪乃の怒りの理由は不明。
「一瞬本気かと思っちゃったもん」/「んなわけないだろ」vol.07, l.3288
結衣は八幡の嘘告白の意図を言葉で確認する。八幡の海老名への告白が嘘であることは後に雪乃とも共有されるだろう。少なくとも奉仕部部室の 中からは話し声が漏れてきた。
vol.08, l.0359 。
海老名「私、腐ってるから」「誰も理解できないし、理解されたくもない。」「一緒にいてくれる人たちが好き」「だから私は自分が嫌い」。
「私、腐ってるから」vol.07, l.3360
性根が。
「誰も理解できないし、理解されたくもない。」vol.07, l.3362
海老名は理解されたくないから、戸部の告白を受け入れないどころか、三浦や結衣には相談しない。
葉山や八幡に相談した理由は 「お互い全然興味ないから話せることってあるじゃん?」
vol.13, l.3642 。つまり海老名は葉山にも八幡にも興味がない。
「あんまり適当なこと言われるとうっかり惚れそうになる」/傍で聞いてたら吹き出してしまうようなひどい冗談だ。vol.07, l.3370
「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
vol.07, l.3231 がまさに適当なこと。
「そうやって、どうでもいいと思ってる人間には素直になるとこは嫌いじゃないよ」vol.07, l.3371
八幡は結衣や雪乃に対しては素直ではない。これを海老名が知っているということ。
「こういうの久しぶりだったから、なくすのは惜しいなって。」vol.07, l.3375
海老名のキャラクター設定。海老名にとって三浦や結衣の人間関係は「なくすのは惜しい」程度である。八幡が推測するに 失くしてしまうくらいなら、自分で壊してしまう
vol.07, l.2749 。
一方で例えば葉山であれば同じ人間関係を 「今あるこの環境がすべて」
vol.07, l.3092 と評するし、三浦はその同じ人間関係を壊されたくはない為に八幡を制する。
「今の自分とか、自分の周りとかも好きなんだよ。」/「だから、私は自分が嫌い」vol.07, l.3379
「今の自分」は好きで、普段の、あるいは本来の自分は嫌い、ということ。
雪乃は結衣に説得され打ち上げに参加、八幡は帰宅。
八幡、小町、平塚、雪乃、結衣、戸塚、材木座、合流。食べたいもの。もんじゃ焼きで陽乃合流。陽乃に自己紹介。「上司や先輩に言われて嫌だった言葉ベスト3」「総武線ゲーム」「八幡の新趣味考案」「八幡の日常」「犬or猫or兎」。
八幡、小町、材木座、は雪乃らのバンド演奏を見ていない。
ライブハウス。平塚、陽乃、雪乃、結衣、による演奏。結衣「今度は、ちゃんと見ててね」。
八幡はバンド演奏を見ている。