06巻 文化祭
9月。 八幡は雪乃に関する誤解を解く。雪乃は八幡に救われ、しかし八幡は誰でも救ってしまうと誤解する。
前半、第一部完、である。八幡、陽乃、雪乃が担うそれぞれの物語が完結あるいは大きく展開する。
文化祭向けクラス演劇、海老名姫菜翻案脚本で『ミュージカル 星の王子さま』。
本編中には「星の王子さま」の引用が数か所に存在する。例えば その後をぱたぱたと騒がしい足音が追いかけてきた。振り返るまでもなく誰の足音かわかる
vol.06, l.0776 、自らの境遇に酔って、自分は重要な人物だと叫んで、自分の作った規則に縛られて
vol.06, l.3757 など。
「星の王子さま」は著作権(翻訳出版権)により2005年までその翻訳の多様性が議論・修正され得なかった。「星の王子さま」は どうにも判断に困る
vol.06, l.0769 とある通りの、ファンタジーとも執筆当時の世界情勢の暗喩とも取れる、多義的な解釈が可能である。が、この原作の多義性に反して、日本では翻訳出版権により翻訳出版が岩波書店にしか許されず、著作権の切れた2005年以降に多数の別訳が出版された経緯がある。であるから、本作について八幡が言及する 腑に落ちない点
vol.06, l.0769 が、訳者による誤訳や解釈の相違である可能性もひどく大きい。
あとがきに引く集英社文庫版も2005年以降の別訳の一つである。私感では、最小限の誤訳を補間し、しかし保守的に寄った訳、という印象である。
なお、「ミュージカル」は実在するマンガ原作ミュージカル「ミュージカル テニスの王子様」、略称テニミュ、のパロディ。
雪乃、めぐり、海老名、陽乃、にはリーダーシップの典型が描かれている。 雪乃、めぐり、海老名はリーダーシップの典型である。 参照。
八幡も雪乃も会話を続けられない。
鬱屈の理由は雪乃と八幡で異なる。雪乃は、交通事故について黙していた、 接し方がわからないがゆえの距離感と警戒心
vol.05, l.0268 によるもの。八幡は、「雪乃は嘘を吐かない」と理想を押し付けていた自己嫌悪。いずれにせよ相互理解ができていないだけで単純に会話を繰り返す事で慣れる性質のもの。
もう一人の文化祭実行委員の決定。ルーム長が結衣に相談、相模南が嘲笑、三浦が結衣を救う。葉山が相模を指名、相模が受諾。
文化祭実行委員会。雪乃も文化祭実行委員。相模南は自己承認欲求を充足すべく実行委員長に立候補、就任。相模は会議進行スキルを持たない。
相模の代わりにめぐりが議事進行。八幡も雪乃もやる気がない。リーダーシップに欠ける相模に平塚は奉仕部を紹介する。
キャスト決め。八幡は不参加。
雪乃が実行委員になった理由は不明。文化祭が終わるまで奉仕部は中止で合意。相模、「助けてほしい」。雪乃はそれに同意、結衣は反対。
「文化祭実行委員会のことなら多少の勝手はわかっているから。」vol.06, l.0924
「私は、姉さんが今までやってきたことなら大抵のことはできるのよ」
vol.06, l.3595 。文化祭での陽乃を見ていたということ。
世界が滅んだ後の廃墟にそっと日差しが降り注ぐような、怖いくらいに美しく、ひどくもの悲しい景色だった。vol.06, l.0934
世界が終わったあとも、きっと彼女はここでこうしているんじゃないか
vol.01, l.0124 との対比。八幡にとって奉仕部の活動の一時中止が世界の終焉にも擬え得るということ。
八幡も結衣も雪乃の行動に違和感を覚える。相模はスクールカースト意識が強い。結衣「ゆきのんが困ってたら助けること」。八幡「できる範囲でな」。
「いつものゆきのん、あんな感じじゃないし」vol.06, l.0947
「私個人でやることだから。あなたたちが気にすることではないでしょう」
vol.06, l.0920 など、すなわち雪乃の単独行動に対する違和感。より根源的には雪乃が八幡や結衣らに距離をおいていること。
「ゆきのんが困ってたら助けること」/「できる範囲でな」/「そっか、なら安心だ」vol.06, l.1036
「ゆきのんが困ってたら、助けてあげてね」
/ 「それはないんじゃねぇか」
vol.05, l.2261 を引く。雪乃に踏み込む意思を持たない場合の応答は 「それはないんじゃねぇか」
。これに比して、「出来る範囲でな」
は、少なくとも自らは踏み込む意思がある。
但し俺ガイルでは「できる範囲で」は「何もできない」を意味する事もある。孤立する留美について葉山の 「可能な範囲でなんとかしてあげたいと思います」
vol.04, l.1647 など。
「ヒロインを自分の好きな子にするのだけはやめとけ。/まず自分を主役にするな」vol.06, l.1091
伏線。相模が失踪に至る思考、あるいは失踪先の特定方法。相模の思考がその程度に幼稚であるということ。
最近は正統派主人公よりも敵役やライバル系キャラのほうがおいしいし、かっこよくて人気出るvol.06, l.1096
材木座による斜め下解法の示唆。文化祭実行委員会のサボタージュの止め方。 「正解はね、......明確な敵の存在だよ」
vol.06, l.2555 。
雪乃は文化祭実行委員の副委員長に就任、議事進行を乗っ取り、マイクロマネジメントを始める。
地域賞を創設し商品を出す。vol.06, l.1137
地域賞は雪乃が創設したもの。よって陽乃はその存在を知らない。
クラス。海老名がリーダー、「何かあったら私が責任取るから!」として。川崎のリクルートとモチベートに成功する。相模「クラスの企画申請書、書くのもうちの仕事」。葉山は「有志団体」として八幡と文実会議室へ。
陽乃が遅刻した相模の不真面目さを見抜き、卒業生として文化祭に関与し、相模にサボタージュを唆す。雪乃「だいたい姉さんが」。陽乃は八幡の参加が平塚の差し金である事を見抜くが、奉仕部の中断を知らない。相模は文化祭実行委員会全体へのサボタージュの拡大を訴える。陽乃はそれを煽り可決させる。
「あれ、比企谷くんだ、ひゃっはろー!」vol.06, l.1383
ひゃっはろー初出。なおこれ以前に陽乃は結衣の「やっはろー」を聞いてはいない。
俺を八幡と呼んでいいのは両親と戸塚だけだ。vol.06, l.1399
つまり材木座は八幡と呼んではいけない。あるいは小町の「八幡!」
vol.10, l.0557 は悪口。
「静ちゃんの差し金か」vol.06, l.1473
陽乃が八幡と雪乃の間にある何らかの事情を知っていて、かつそれが平塚と共有されているか、平塚が推測可能である、ということ。
「部活には居づらくなってるだろうし」vol.06, l.1479 /「うまくいかなかったみたいだけど」vol.06, l.1484
少なくとも陽乃が奉仕部の中断を知らない事を示す。発言の真意には二通りの解釈があり得る。
「陽乃は雪乃が事故の当事者であることを八幡らに故意に明かした」という解釈は成立しない。なぜならば 陽乃さんも笑いを引っ込める。
/ 申し訳無さそうな声。
/ 取り繕うように言い添える。
/ ほっとしたような表情を見せる。
vol.05, l.2190 等は陽乃の故意であるとは解し得ない。
他方で陽乃の「ミスを収拾する様な振る舞い」は他にも本文中に複数存在する。6巻中以外では 「やるじゃん、名探偵。大正解」
vol.13, l.3357 。
彼女のプライドが、あるいはそれ以外の強い感情が、それを許そうとしない。vol.06, l.1493
「それ以外の強い感情」とは、 「私も、ああなりたいと思っていたから」
vol.06, l.3382 。率直に言えば こいつ、陽乃さんのこと結構好きなんだよな......
vol.A2, l.3159 。
「本当にいいこと言うね〜」vol.06, l.1533
皮肉。あるいは想定外の展開を制御下にあると見せる為の言動。陽乃は有志団体で文化祭に参加するべく相模を籠絡した。このときに 「文化祭を最大限楽しめる者こそ委員長にふさわしい資質」
vol.06, l.1428 という言葉を用いた。この結果、相模は文実メンバー全体にサボタージュを広げる。
であるとして、陽乃が文化祭準備委員会に積極的に参加する理由は、単純に雪乃の負荷軽減だと考える。陽乃自身のミスにより雪乃の作業量が倍増してしまったために、陽乃と葉山とで雪乃の負荷を調整している、のだろう。だがしかし雪乃はその過負荷の収拾を陽乃に課された課題、教育、として受け取る。 陽乃は雪乃を教育している。 参照。
執行部すなわち生徒会を除く委員会の過半数がサボタージュ。一方で仕事量は増加。委員会が瓦解する。
葉山は作業量の破綻の可能性を指摘し、有志団体の取り纏めを申し出る。めぐりの同意により雪乃は受諾する。
実行委員会は執行部と数人のみの参加。執行部すなわち生徒会の求心力はめぐり。葉山も参加している。理由不明。相模が提出すべき企画申請書類が未提出のため、八幡はクラスへ。
それは相模が書いて出す、という話だった気がするが......vol.06, l.1884
「クラスの企画申請書、書くのもうちの仕事だからさ〜」
vol.06, l.1317 。
相模はクラス側に参加している。とつかわいい。葉山が文実側にいるという理由で結衣と相模が会議室へ。
「甘いもの......。じゃあ今度何か持ってくるね!」vol.06, l.1955
おそらく未回収。
葉山は相模を窘めるが相模は理解しない。相模は決裁印さえ雪乃に委譲する。相模は実行委員長職を理由に企画申請書類を作成せず、結衣と八幡でこれを作成する。相模は葉山を夕食に誘い、しかし断られる。
「ならそっちでやろうよ。ここ騒がしいし。」vol.06, l.1972 /「なんだと? いいから早く直す!」vol.06, l.1985
結衣の会議室に移った以降の機嫌が悪い。恐らくは文化祭実行委員会のサボタージュの現状に憤っている。 「あたし、ちょっと怒ってるからね」
vol.06, l.2269 。
八幡と結衣は雪乃宅へ見舞いに。八幡は専制的なチームマネジメントが「これまでの雪乃のやり方と違っている」と指摘する。結衣は八幡や結衣を頼れ、と怒る。雪乃は結衣に感謝し、しかし「もう少し考えたい」とする。八幡は周囲を変えて問題を解決すると誓う。
「正しいやり方を知っているの?」vol.06, l.2290
雪乃が、相模らのサボタージュに対して、正しいやり方があると想定している、ということ。つまり雪乃が現状を何らかの問い、試験、だと考えているということ。
少なくともサボタージュに対してリーダーシップ程度で取り得る対策はまずない。
文化祭スローガンに対する八幡案「人~よく見たら片方楽してる文化祭~」、相模ら実行委員にサボタージュを指摘する。陽乃が爆笑し、平塚が説明させる。めぐりには八幡の故意である事は通じない。雪乃は八幡案を「却っ下」し、立ち直り、文実を再び機能させる。雪乃、八幡に「もう一度問い直すしかない」「無理して変わろうとするのが馬鹿らしい」。
一つやたらと異質だったのが『八紘一宇』。うわぁ、書きそうな奴に心当たりがある......。vol.06, l.2376
大日本帝国の海外侵略のスローガン。意図不明。「ONE FOR ALL」「一人はみんなのために」「ともに助け合う」を 類語辞典
vol.06, l.2499 的に表現したものか、雪乃がその種の侵略思想を是とするという表現か、炎上を意図したものか。
「バカだ、バカがいる!」/陽乃さんは大爆笑しvol.06, l.2421
陽乃が八幡の「よく見たら片方楽してる文化祭」の意図が相模のサボタージュの指摘であることを理解した表現。かつ、そのスローガンに意図があることを周囲に喧伝する行動。八幡のサボタージュの指摘、雪乃の負荷軽減、に協力する行為。
「なら、もう一度問い直すしかないわね」vol.06, l.2493
複数の意味を持つだろう。
まず、この言葉で、雪乃のマネジメント方針が変わる。 陽乃は雪乃を教育している。 参照。
あるいは、この言葉で、雪乃は奉仕部を率いる理由、自らのアイデンティティ、をも問い直す。雪乃の視点では、 「却っ下」
vol.06, l.2455 が俺ガイルの前半の終了を示す言葉であって、「もう一度問い直す」が、その後半を始める言葉である。 「だから、これで終わりにしましょう」 参照。
「それじゃあ相手も言い訳できないじゃない」vol.06, l.2483
6巻前半を通して語られなかった雪乃の行動には「言い訳」すなわちその理由が存在する、ということ。 雪乃の言い訳 参照。
「あなたを見ていると、無理して変わろうとするのが馬鹿らしいことに思えてくるわ」vol.06, l.2503
「変わらなければ前には進めない」
vol.01, l.0384 を引く。雪乃からすれば八幡への隔意を解消する行為。
雪乃は陽乃に頼る自己からの脱却を模索している。かつ、他人の自己変革を促すことを自身の寄る辺としている。しかし八幡は雪乃を陽乃のみならず誰にも頼らせないまま、雪乃に自己変革を起こさずに、雪乃を救った。
「それじゃ、私は鍵を返しに行くから」vol.06, l.2507
「......私は鍵を返しに行くから」
vol.06, l.0258 との対比。八幡と雪乃の間の隔意が消えた表現。
文実が動機付けされる。雪乃のマネジメントが変化する。陽乃、「集団を団結させる存在は」「明確な敵の存在」。陽乃の雪乃への敵対は教育。
クラス、文実ともに順調。有志の機材に不足、有志とオープニングセレモニーのリハに遅延。陽乃は暗に相模の疎外感と自己嫌悪を煽る。
文化祭オープニング。相模のスピーチの前にハウリング、相模はスピーチ失敗。八雪でインカムを通して馴れ合う。
漆黒を引き裂くようなスポットライトを浴びる行為は、その者がその他大勢とは大きく違うことを示唆する。/ゆえに、そこに立つべき者は特別な存在であるべきだ。vol.06, l.2711
陽乃は スポットライトを一身に浴びるその場所こそは彼女にふさわしい。
vol.06, l.3385
八幡は スポットライトのあたるステージは俺の居場所じゃない。
vol.06, l.3630
海老名は八幡に受付を充てる。円陣。川崎はクラスに含まれ、相模は疎外感を抱く。
『星の王子さま』第一回公演、成功。
八幡と結衣で昼食。めぐりと雪乃が巡回している。結衣「ゆきのんのことは待つことにしたの」「待っててもどうしようもない人は」「こっちから行くの」「今度ハニトー奢ってもらうことにする」「千葉の、パセラで」。八幡は結衣を受け入れようとする。
「ヒッキーが知りたいことは何も聞いてないよ」/その最後の一言は少し突き放したような言い方だった。vol.06, l.3012
八幡には雪乃について知りたいことがあるということ。 俺は......もっと知りたいとは思わない。
vol.05, l.2379 という態度が八幡が自分を偽る行為だということ、その態度を結衣が察しているということ。
「ゆきのんは、たぶん話そう、近づこうってしてるから。」vol.06, l.3019 /「待たないで、......こっちから行くの」vol.06, l.3029
人間関係における雪乃の稚拙さは未成熟によるもの。八幡のそれは自意識過剰によるもの。
「今度ハニトー奢ってもらうことにする。」vol.06, l.3080
この約束は この時期のランドはあれだが、隣りのわりかし新しいほうはどうなんだろうな
vol.09, l.4215 を経て、 「ヒッキー、デートしよう!」
vol.11, l.3619 へ続く。
それが優しさや親切心からではなく、もっと違うなにか別の感情に起因するものだとすればなおさらのこと。それは人の弱みにつけ込む行為だから。/だから、もう一歩くらいは、踏み込んでも、いいのだろうか。vol.06, l.3094
「だから」。順接。結衣に一歩踏み込むことが、結衣の弱みにつけ込む行為にはならない、ということ。単純に言えば結衣が八幡を好きであることは自明だとして、八幡が結衣を好きだと認めた表現。
「いつにする?」/「ちょっとよく考えさせてください......」vol.06, l.3100
「二人で遊びに行くのも叶えてね」
/ 「......そのうち、適当にな」
vol.04, l.3321 との対比。
かつては結衣の好意を 本物と認めることはできない。
vol.03, l.2926 として拒絶し、 すぐ「適当に連絡くれ」って言う奴はだいたい次から誘われなくなる。
vol.04, l.2034 としていた。
八幡にとっては「考える」という表明、躊躇する、という行為自体が一歩踏み込んだ行為である。さらに、 「どっか遊び行くっつったらどこいく?」
vol.06, l.3105 として、その日の夜、小町に遊びに行く場所を訪ねている。
小町が志望校見学。小町離脱、雪乃合流、雪乃と八幡は監視を理由に文化祭を一緒に回る。雪乃はクラスに参加しない。雪乃と八幡で一緒にトロッコ。
「久々の再会はハグ」vol.06, l.3127
小町は理想解の提示役。相模の様に拗ねて逃げた人間を呼び戻す手段の理想解。但し相模に対して八幡では間違いなく効かない。
今日は一人なのねvol.06, l.3200
文化祭初日には雪乃は八幡と結衣とを見て去っている。 顔を上げた時に、視線が一瞬こちらに向けられる。が、すぐに逸らすとそのまますたすたと歩いていってしまった。
vol.06, l.3003
雪乃は八幡に猫の写真を撮らせる。陽乃はOGOBオーケストラを指揮する。雪乃「私も、ああなりたいと思っていた」八幡「ならなくていいだろ。そのままで」
今度カルフール行けカルフール。vol.06, l.3288
2000年から2004年に存在したショッピングセンター。現イオン海浜幕張店。
Mambo!vol.06, l.3362
ウェストサイドストーリー。
相模失踪。新設の地域賞の投票結果を知るのは相模のみ。葉山が即応で時間稼ぎを申し出る。「俺も今日はいいところを見せたいからね」。雪乃案、八幡と陽乃を頼る。
結構本気の敵意を雪ノ下に向け/「別に、あんたのためじゃないかんね」vol.06, l.3484
三浦はこれ以上葉山に雪乃の味方をさせたくない。
葉山は基本的に三浦よりも雪乃に味方する。 「優美子、やめろ」
vol.04, l.1836 など。
「俺も今日はいいところを見せたいからね。」vol.06, l.3495
葉山のいいところを見ていない代表的な人物は陽乃。 葉山と陽乃が相模を失踪させた。 参照。
雪乃案、陽乃らと総武高軽音部して時間を稼ぎ、八幡が相模を見つける。雪乃「あなたを頼らせてもらっても、いいかしら」。八幡は相模南を探しに行く。
「この私に、貸しを一つ作れる。これをどう捉えるかは、姉さん次第よ」/「成長したのね」vol.06, l.3572
雪乃と陽乃が別人格である、雪乃は既に陽乃を追っていない、という宣言。さらに 「あなたを頼らせてもらっても、いいかしら」
vol.06, l.3612 / 「頼ってもらって、構わない、から......」
vol.06, l.3622 と同じく、頼るという関係を対等な関係と捉える、ということか。
「あなたを頼らせてもらっても、いいかしら」vol.06, l.3612
「今すぐは、難しいけれど。きっといつか、あなたを頼るわ。」
vol.06, l.2324 の回収。雪乃は他人に頼れる様になったということ。であればその契機は恐らく 「なら、もう一度問い直すしかないわね」
vol.06, l.2493 として問い直した結果。
八幡、相模の思考をトレース。材木座に「一人になれる場所」、川崎に「屋上の入り方」を聞く。「愛してるぜ材木座!」「愛してるぜ川崎!」。
星の王子さまに擬えた、八幡の確立された自意識。
肩書きに終始して、認めてもらえていると自惚れて、自らの境遇に酔って、自分は重要な人物だと叫んで、自分の作った規則に縛られて、誰かに教えてもらわないと自分の世界を見出だせないでいるvol.06, l.3755
星の王子さま。
扉の南京錠は壊れていた。八幡は相模を発見し説得するが復帰に同意させられない。葉山が現れ、相模を説得する体で時間稼ぎする。八幡は時間稼ぎに気付かずに相模を罵り被害者に変える。葉山は激昂し「比企谷、少し黙れよ」。相模は立ち直る。葉山「どうして、そんなやり方しかできないんだ」
相模が望む言葉など決して言うまいと。vol.06, l.3780
相模の望む言葉を言わない理由は単に復讐で良いだろう。
八幡はその通り相模が望む言葉は言わない。八幡の相模像が正しいとするならば、相模の自尊心、階級意識、自己評価、承認欲求、等々を満たす応答が望ましい。典型例は例えば
「別にうちがやらなくてもいいんじゃないの」/
「そうもいかない」
「もうエンディングセレモニー始まってるんじゃないの」/
「どうにか時間を稼いでる」
「誰がやってるの?」/
「三浦とか雪ノ下たちとかだ」
「雪ノ下さんがやればいいじゃん、あのひと何でもできるし」/
「お前の持ってる集計結果の発表とかいろいろあんだよ」
「みんなでやればそれくらい」/
「そんな暇な人員はいない」
総武高校けいおん部。
飢えたように貪欲に音を刻むベース、気まぐれに跳ねるドラム、生真面目なギター、大切に歌うボーカル。vol.06, l.3919
ベース平塚、ドラム陽乃、ギター雪乃、ボーカル結衣。キーボードめぐり。
打ち鳴らす手が、踏みしめる足が
vol.06, l.3914 と、 7巻収録の 彼女たちの、うぃー・うぃる・ろっく・ゆー
vol.07, l.3390 という章題からして、 Queen の We Will Rock You.
クラスや文実で八幡は相模のスケープゴートとなる。めぐり「やっぱり君は不真面目で最低だね」。雪乃「本当に、誰でも救ってしまうのね」。陽乃は八幡を認め「今日のこと、お母さんに話したら驚くだろうなぁ」。平塚「誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ」
「本当に、誰でも救ってしまうのね」vol.06, l.4020
雪乃の失望を示す。
八幡はかつて交通事故で八幡は結衣を救ったが 「由比ヶ浜だから助けたわけじゃない」
vol.03, l.2898 / 「俺が個人を特定して恩を売ったわけじゃないんだから、お前が個人を特定して恩を返す必要ないんだよ。」
vol.03, l.2899 とした。そして八幡は雪乃を救った後に、(救う必要のない)相模を救った。
すなわち、文化祭編中に八幡が雪乃を二度救ったことについての雪乃の理解は、八幡は雪乃だから助けたわけではない、誰かを救ったに過ぎない、となる。八幡が雪乃を特定して救ったわけではないのだから、雪乃は八幡に恩を返す事ができない。あるいはさらに雪乃は結衣と同じく八幡を好きになる、そう表明する事ができない。
この台詞が後の 「いつか、私を助けてね」
vol.09, l.4407 に繋がる。 「だから、これで終わりにしましょう」 参照。
「今日のこと、お母さんに話したら驚くだろうなぁ......、ね?」vol.06, l.4066
雪乃は4巻以降八幡や結衣に隔意を持っていた。文化祭終了を以てこの隔意は解消される。ここに陽乃あるいは雪ノ下家の干渉が疑われる。 雪ノ下家は雪乃を隔離した 参照。
「誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ」/「君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいることにそろそろ気づくべきだ」vol.06, l.4086
7..9巻の伏線。
八幡は報告書書きに奉仕部室へ。雪乃「その弱さを肯定してしまう部分、嫌いではないけれど」。八幡「知ってるものを知らないっつったって、別にいいんだ」に対し、雪乃は八幡の意図を理解し、「でも、今はあなたを知っている」。結衣が合流、打ち上げに誘う。
問い直して、新たに導き出した答えはちゃんと結論になっている。vol.06, l.4149
だから、もう一度、問い直そう。
vol.06, l.2517 からの応答。どこで問い直したか、どういう答えを得たか、は不明。
この問いは、 祭りの余熱が身体の中で燻っているのを感じた。
であるので、情熱に関すること、雪乃との関係性に関すること、で構わないだろう。雪乃はその答えを「友達」としているが、八幡と雪乃でその答えが同じか否かも不明。
「っだぁ! まだ最後まで言ってねぇだろ」vol.06, l.4152
「なぁ、雪ノ下。なら、俺が友」
/ 「ごめんなさい。それは無理」
/ 「えーまだ最後まで言ってないのにー」
vol.01, l.0755 の反復。
雪乃が八幡の言葉を中断させたことを、八幡が結衣の 言葉の続きを押し留めた
vol.05, l.2297 ことと対比するならば、八幡はここで雪乃に告白しようとした、とまで言えるかも知れない。
「...でも、今はあなたを知っている」vol.06, l.4174
「あなたのことなんて知らなかったもの」
vol.01, l.0887 が叙述トリックであった、雪乃は本当の事を言わない事があるが嘘は吐かない、という謎解き。 「雪ノ下雪乃ですら嘘をつく。」はまちがっている。 参照。