04巻 千葉村キャンプ
7月末、夏休み。 かつて葉山と雪乃が陥った状況と同様の状況にいる鶴見留美に対し、八幡は少なくとも葉山とは異なる方法で関与する。しかし留美はその干渉を切っ掛けとして自ら脱する。
八幡は戸塚、材木座、雪乃を街で見かけるが、話しかけない。
既に7月も終わりvol.04, l.0120
日時に矛盾。この章はキャンプ前日の出来事である。よってキャンプ初日は8月2日以降である。一方で7.5巻巻頭のカレンダーでは奉仕部キャンプは8/1〜8/3である。
雪ノ下は手に取っていた本をそっと棚に戻すと、そのまますたすた店の外へと出ていった。vol.04, l.0227
以降、6巻まで雪乃は不可解に八幡や結衣から距離を置く。小町を経由してまで八幡をキャンプに呼び出すにもかかわらず。あるいは葉山は八幡が陽乃と面識を持つ事を前提に話している。これらから、 雪ノ下家は雪乃を隔離した という仮説が成り立つ。
結衣は八幡に話しかける。その間三浦は中座する。結衣は八幡を遊びに誘う。八幡「そのうち適当にな」
「あーし、海老名に電話してるからー」vol.04, l.0283
八幡を見て 厳然たる嘲笑
vol.05, l.1813 を見せる相模との対比。三浦は結衣に配慮して八幡と会話する時間を与えた。
八幡は、三浦は 興味がないのだから俺と関わろうとするはずもない。
vol.04, l.0286 と解釈している。が、三浦は 退屈そのものという表情
vol.04, l.0377 だった。
「こないだカラオケのとき、自分でアピってたじゃん」vol.04, l.0324
「俺が八月八日生まれだから八幡ってつけたくらいだ」
vol.03, l.3633 のこと。
「そのうち適当にな」vol.04, l.0375
拒否。 誘われたとき、すぐ「適当に連絡くれ」って言う奴はだいたい次から誘われなくなる
vol.04, l.2034 。すなわち八幡は結衣の好意を理解した上でそれを受け流している。あるいは その境目を見極めるにはまだしばらくの時間がかかりそうだ。
vol.04, l.0383 と叙景する通りに保留している。
八幡は平塚のメールを無視するが、小町が八幡を連れ出す。平塚の車で千葉村へ。
「自由研究なら手伝うから。」vol.04, l.0071 /「感想文と自由研究以外はだいたい終わった」vol.04, l.0441
次巻にて八幡が自由研究を手伝う伏線。
雪乃は中学生当時に留学していた。車は山間地へ。
千葉村着。葉山、戸部、三浦、海老名らも参加。葉山らは学校の掲示板を見て応募。平塚曰く「応募してくる人間がいるとは思わなかった」。リア充が苦手な八幡に対して平塚は「うまくやれ」とし、八幡はそれは「虚偽と猜疑と欺瞞」だとする。
「私はうまくやれと言っているんだ。敵対するわけでも無視するわけでもなく、さらっとビジネスライクに無難にやり過ごす術を身に着けたまえ。」vol.04, l.0813
13巻以降互いへの好意を諦めようとする雪乃と八幡が繰り返す「うまくやる」の初出。すなわち互いへの敵意や好意に関わらず無難にやり過ごすこと。
小学生集合、葉山の挨拶。葉山は雪乃の家族構成を知っている。雪乃は葉山に対し棘がある。
八幡と雪乃は孤立する鶴見留美を見つけるが声をかけない。葉山は声をかける。失策。
2グループに分かれて準備。結衣は奉仕部側。奉仕部側は梨剥き。
葉山は八幡に聞きたいことがある。
小町は平塚に八幡の子供の頃の話をする。カレー作り。
カレー作り。留美は話しかけた葉山から逃げる。留美いわく、誰かの排除に加担したら自分が排除される側になっている。
「フルーツがいいと思う!桃とか!」vol.04, l.1394
桃のチャツネを使うカレーはまじ鉄板。検索したら海上自衛隊の「とわだ」カレーとか出てきた。結衣は概ね正しい。
夕食。葉山らに八幡への敵対の態度はない。
戸部が三浦の正面に陣取った。ああ、まぁこいつ三浦のこと気になってるみたいだしな。vol.04, l.1524
まちがっている。海老名の隣。
葉山では留美を助けられない。雪乃は助けを求められない限り助けられない。結衣曰く、留美は助けを求める事ができない。平塚は留美対策を委譲する。
「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」/さっき葉山が留美に話しかけていたことを言っているのだろうか?vol.04, l.1658
「俺は中途半端に手を出して、余計に傷を広げたんだ。可能な範囲でなんとかする......なんて言いながらな」
vol.13, l.3235 。
なお さっき葉山が留美に話しかけていたこと
とは 「カレー、好き?」
vol.04, l.1357 。八幡はまちがっている。
「彼女の案件についても活動内容に含まれますか?」vol.04, l.1674
雪乃は理由がなければ自らは動けない。
「助けは求められているのかね?」/「......それは、わかりません」vol.04, l.1688
雪乃の方法論は相談者に自己変革を促す。まず意思を求める。平塚が指摘する通り、雪乃の方法論では、助かる意思を持たない人物を助けられない。
一方で八幡は「惨めなのは嫌か」の答えを以て助ける。
三浦案、他の可愛い子とつるむ。海老名案、趣味を通じて学外コミュニティを持つ。葉山案、「みんなで仲良く」。小町案、「年齢上がれば問題ない」。三浦と雪乃は相性が悪い。
戸部は海老名狙い。葉山の好きな人のイニシャルはY。雪乃は留美に結衣を重ねる。雪乃は葉山とは小学生の頃からの知り合いであることを語る。「今日は来られてよかったわ。無理だと思っていたから」
「......好きな人の話しようぜ」/「イニシャルでいいから!」/「......Y」vol.04, l.1987
雪ノ下陽乃。 「あなたも過去に縛られなくていいと思うけれど。......誰かの背中を無理に追う必要もない」
vol.10, l.4374 、あるいは 「共になくてはならない存在で、一緒に地獄に落ちられたなら、そんなにも幸せなことはない」
vol.13, l.3381 。
ではあって、しかし雪ノ下雪乃でも由比ヶ浜結衣でも優美子でも義輝でもイニシャルはYである。葉山の機転を示すかも知れない。
「それでも、......今日は来られてよかったわ。無理だと思っていたから」vol.04, l.2090
意味不明。であるので読者への挑戦状。 雪ノ下家は雪乃を隔離した 参照。
男女混合水遊び。
「あ、お兄ちゃんだ。おーい!こっちこっち!」vol.04, l.2299 /「わっせろーい!!」/小町にばっしゃーと水をかけられた。vol.04, l.2305
小町は理想解の提示役。留美の孤立に対する理想解。小町は理想解の提案役。
八幡結衣雪乃は留美と会話。友達は重要ではないと説得するが、しかし留美は母親が納得しないとする。既に自分と周囲とを見限り、他人に助けを求めない。八幡は留美に「惨めなのは嫌か」と問い、その肯定をして、留美を救うと決める。
葉山案、留美がみんなと話す。八幡案、肝試しに乗じて留美の人間関係を破壊する。
「みんながぼっちになれば争いも揉め事も起きないだろ」vol.04, l.2676
この八幡の言が正しいのは留美の人間関係が壊れて構わない場合に限る。すなわち平塚の 無難にやり過ごす術を身につけたまえ。それが社会に適応するということさ
vol.04, l.0814 に反する。
留美が人間関係を見限っていた、という推測の確証は取れない。クリスマスイベントでは八幡はこの留美の人間関係の破壊を疑い悔いてさえいる。
葉山は陽乃が八幡を気に掛ける理由を察し、八幡案に同調する。
同じ方法でも俺とこいつとではどこまでもその意味が食い違う。vol.04, l.2707
葉山は八幡の 同位体
vol.03, l.0016 だということ。「肝試しに乗じて人間関係が揺らぐ程に圧力を掛ける」ことに対して、葉山の意味は「留美らが一致団結により乗り越える事を期待する」。八幡の意味は「留美の周囲の人間関係が解体される事を期待する」。
但し双方ともにまちがっている。最終的には留美の周囲の人間関係が解体された上で留美が一人で乗り越える。
戸部八幡平塚のダメ怪談。
八幡と葉山で肝試しの準備。女性陣+戸塚がコスプレ。
「生徒たちに心の準備をさせないでスリルを上げるとか言い逃れるか」/「携帯をカンペ代わりにしてくれりゃいい。」vol.04, l.2813
前者は葉山、後者は八幡による提案。ほぼ同等の発想力、問題解決力の描写であろう。であれば恐らく 屁理屈めいた言い訳もどこか正々堂々とかっこいい気がしてくる
/ 仕事のできそうな雰囲気が凄い
も葉山、八幡ともに同じ印象を相手に抱いていよう。
肝試しの様子。コメディ。雪乃は幽霊が嫌い。
「幽霊はいないんじゃなかったのか」vol.04, l.2951
「幽霊だなんて馬鹿馬鹿しい。そんなのいないわ」
vol.01, l.0254 。雪乃は幽霊が嫌い。
葉山らが留美らを直接脅す。人間関係が破壊されようとするその時に、留美は周囲を救おうとする。
留美らは八幡を無視する。雪乃や結衣は八幡の策の効果を認める。雪乃は結衣の八幡への好意に協力し、結衣は八幡を遊びに誘うが、八幡は「そのうち適当にな」として距離をおく。
「あなた、本当は誰のために解決したかったの?」vol.04, l.3254
雪乃。後に どこかで誰かと重ねていたからだ。
vol.12, l.0240 として留美の為だけではないと明言される。かつ、 むしろもっと似てるだろって奴がいる。
vol.04, l.2059 に従えば結衣ではない。
「徒党を組んでいた相手がいなくなるだけで随分と楽になるものよ。」vol.04, l.3269
雪乃は留美に過去の自分を重ねた。そして周囲の人間関係が破壊されたから留美は攻撃されなくなった、とする。
「空気に流されるのも結構大変なもんだよ。」vol.04, l.3306
結衣は留美に過去の自分を重ねた。そして自身の人間関係が破壊されたから留美は罪悪感から解放された、とする。
「一つくらい、いいことがあっても許されると思うわ」/「やっぱり遠慮しておくわ。それは二人でやりなさい」vol.04, l.3281
雪乃が作為的に八幡と結衣を近づけようとしている表現。雪乃は結衣の八幡への好意に協力していて、かつ前巻以降雪乃は結衣と八幡の関係に対して一歩引いている。
「いいこと」とは八幡に結衣が接近すること。「やっぱり」は事前に雪乃が結衣との花火に同意していた表現、「二人で」は結衣と八幡。
「二人で遊びに行くのも叶えてね」/「......そのうち、適当にな」vol.04, l.3321
拒否。雪乃の仲介にも関わらず八幡は結衣との距離を縮めない。
葉山曰く「気分自体はそんなに悪くない」「昔、似たような光景を前に何もしなかった」。葉山は八幡を「比企谷君」と呼ぶ。
「俺はみんなが一致団結して対処する可能性に賭けて、だ」vol.04, l.2705 /「昔、似たような光景を前に何もしなかった」vol.04, l.3333
葉山は留美の周囲に過去の自分を重ねた。留美が行動したから多少自分が救われた、かつて雪乃は留美や陽乃の様には行動しなかったから、とする。
なお、葉山は「何もしなかった」ではなく、 「俺は中途半端に手を出して、余計に傷を広げたんだ」
vol.13, l.3235 。
「愛想のいい雪ノ下なんて想像するだけで怖い」/「ははっ、確かに」vol.04, l.3341
葉山の嫉妬。陽乃は葉山には愛想が悪い。陽乃は葉山に それこそ爪とぎ板ほどの価値しか見出しては居ない
vol.13, l.3342 。
すなわち 同じ人物を知っていても、俺は葉山とは違う意見だ
vol.04, l.3340 がまちがっている。この時点の八幡は陽乃の多面性を知らない。
葉山が比企谷八幡という存在を正しく認識したのと同様にvol.04, l.3357
この発言を機に葉山の八幡の呼び方が「ヒキタニ君」から「比企谷」に変化する箇所が現れる。もっともクラスメイトの前では概ね「ヒキタニ君」が続く。
「由比ヶ浜が説得しなければ君たちはそもそも動く理由を見つけられなかった」vol.04, l.3388
結衣の説得とは恐らく 「言いたくても言えないんじゃないかな」
vol.04, l.1691 。「君たち」であるので、雪乃と八幡。二人とも 問題を与えられなければ、理由を見つける事ができなければ、動き出せない
vol.08, l.4308 。
但し八幡が動いた直接の理由は恐らく 「惨めなのは嫌か」
vol.04, l.2590 、留美に雪乃を重ねた上で雪乃に周囲を見限らせたくないという想いである。であれば結衣の説得は無関係であろう。