04巻 千葉村キャンプ

04巻 千葉村キャンプ

7月末、夏休み。 かつて葉山と雪乃が陥った状況と同様の状況にいる鶴見留美に対し、八幡は少なくとも葉山とは異なる方法で関与する。しかし留美はその干渉を切っ掛けとして自ら脱する。

こうして比企谷八幡の夏休みが過ぎてゆく。vol.04, l.0019

戸塚にも材木座にも八幡の他に友達がいる。八幡と雪乃は双方とも声をかけない。結衣は三浦と同行していたが八幡に声をかける。

結衣、八幡を誕生日パーティー、花火、肝試し、海、キャンプ、等に誘う。

既に7月も終わりvol.04, l.0116

日時に矛盾。この章はキャンプ前日の出来事である。よってキャンプ初日は8月2日以降である。一方で7.5巻巻頭のカレンダーでは奉仕部キャンプは8/1〜8/3である。

「自由研究なら手伝うから。」vol.04, l.0069 / 「感想文と自由研究以外はだいたい終わった」vol.04, l.0424

次巻にて八幡が自由研究を手伝う伏線。

「雪ノ下は手に取っていた本をそっと棚に戻すと、そのまますたすた店の外へと出ていった。」vol.04, l.0220

以降、6巻まで雪乃は不可解に八幡や結衣から距離を置く。小町を経由してまで八幡をキャンプに呼び出すにもかかわらず。あるいは葉山は八幡が陽乃と面識を持つ事を前提に話している。これらから、 雪ノ下家は雪乃を隔離した という仮説が成り立つ。

「あーし、海老名に電話してるからー」vol.04, l.0272

八幡を見て 厳然たる嘲笑vol.05, l.1727 を見せる相模との対比。三浦は結衣に配慮して八幡と会話する時間を与えた。

八幡は、三浦は 興味がないのだから俺と関わろうとするはずもない。vol.04, l.0276 と解釈している。が、三浦は 退屈そのものという表情vol.04, l.0363 だった。

「こないだカラオケのとき、自分でアピってたじゃん」vol.04, l.0312

「おれが八月八日生まれだから八幡ってつけたくらいだ」vol.03, l.3454 のこと。

「そのうち適当にな」vol.04, l.0361

拒否。 誘われたとき、すぐ「適当に連絡くれ」って言う奴はだいたい次から誘われなくなるvol.04, l.2034 。すなわち八幡は結衣の好意を理解した上でそれを受け流している。あるいは その境目を見極めるにはまだしばらくの時間がかかりそうだ。vol.04, l.0368 と叙景する通りに保留している。

どうしても平塚静からは逃げられない。vol.04, l.0370

8/1。八幡は小町に連れられて平塚・雪乃・結衣・戸塚と小学生の林間学校のサポートに千葉村へ行く。

誰に対しても葉山隼人はそつがない。vol.04, l.0623

葉山・戸部・三浦・海老名と現地合流する。

鶴見留美が孤立しているが、葉山が取り得る手段では救えない。

「私はうまくやれと言っているんだ。敵対するわけでも無視するわけでもなく、さらっとビジネスライクに無難にやり過ごす術を身に着けたまえ。」vol.04, l.0777

13巻以降互いへの好意を諦めようとする雪乃と八幡が繰り返す「うまくやる」の初出。すなわち互いへの敵意や好意に関わらずビジネスライクに無難にやり過ごすこと。

唐突に、海老名姫菜は布教を開始する。vol.04, l.1098

留美はかつて他人を疎外してきた事を後悔している。

留美の孤立について、葉山は何もできない。雪乃は「留美が助けを求めるなら」。結衣は留美が助けを求めることはないだろうとする。

葉山案、留美が周囲と協調を図る。三浦案、他の可愛い子とつるむ。海老名案、学外コミュニティに参加する。葉山らが留美の孤立の解決法を「みんな仲良く」とする一方で、八幡はそれが留美の孤立の理由だとする。

「フルーツがいいと思う!桃とか!」vol.04, l.1326

カレーを作るうえでチャツネの代わりに桃のピューレはまじ鉄板。結衣は概ね正しい。

「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」 / さっき葉山が留美に話しかけていたことを言っているのだろうか?vol.04, l.1569

「俺は中途半端に手を出して、余計に傷を広げたんだ。可能な範囲でなんとかする……なんて言いながらな」vol.13, l.3088

なお さっき葉山が留美に話しかけていたこと とは 「カレー、好き?」vol.04, l.1291 。八幡はまちがっている。

「彼女の案件についても活動内容に含まれますか?」vol.04, l.1589

雪乃は理由がなければ自らは動けない。

「助けは求められているのかね?」vol.04, l.1601

雪乃の方法論は相談者に自己変革を促す。まず意思を求める。平塚が指摘する通り、雪乃の方法論では、助かる意思を持たない人物を助けられない。

一方で八幡は「惨めなのは嫌か」の答えを以て助ける。

ひとり、雪ノ下雪乃は夜空を見上げる。vol.04, l.1749

雪乃曰く、雪乃が留美を救いたい理由は、結衣にも葉山にも過去に同種の経験があったから。

「……好きな人の話しようぜ」 / 「イニシャルでいいから!」 / 「……Y」vol.04, l.1842

雪ノ下陽乃。 「あなたも過去に縛られなくていいと思うけれど。……誰かの背中を無理に追う必要もない」vol.11, l.4140 、あるいは 「共になくてはならない存在で、一緒に地獄に落ちられたなら、そんなにも幸せなことはない」vol.13, l.3238

ではあって、しかし雪ノ下雪乃でも由比ヶ浜結衣でも三浦優美子でもイニシャルはYである。葉山の機転を示すかも知れない。あるいは義輝。

「それでも、……今日は来られてよかったわ。無理だと思っていたから」vol.04, l.1979

意味不明。であるので読者への挑戦状。 雪ノ下家は雪乃を隔離した 参照。

不覚にも、比企谷八幡は水着を持ってきていない。vol.04, l.2001

八幡は戸塚と連絡先を交換する。

留美は既に自分と周囲とを見限り、他人に助けを求めない。八幡は留美に「惨めなのは嫌か」と問い、その肯定をして、留美を救う事を決意する。

「あ、お兄ちゃんだ。おーい!こっちこっち!」vol.04, l.2177 / 「わっせろーい!!」 / 小町にばっしゃーと水をかけられた。vol.04, l.2183

小町は理想解の提示役。留美の孤立に対する理想解。小町は理想解の提案役。例えば八幡らは留美らが動揺する程度に脅かす程度で良かった。

最後に鶴見留美は自分の道を選び取る。vol.04, l.2458

八幡案。肝試しに乗じて留美の人間関係を破壊する。

しかし留美は人間関係が破壊されようとするその時に周囲を救おうとする。

雪乃・結衣・葉山ともに留美は救われたと解釈する。葉山は八幡を意識し初める。

雪乃は結衣の八幡への好意に協力するが、八幡は結衣の好意を社交辞令だとして距離をおく。

「みんながぼっちになれば争いも揉め事も起きないだろ」vol.04, l.2553

この八幡の言が正しいのは留美の人間関係が壊れて構わない場合に限る。平塚の 無難にやり過ごす術を身につけたまえ。それが社会に適応するということさvol.04, l.0778 に反する。

留美が人間関係を見限っていた、という推測の確証は取れない。クリスマスイベントでは八幡はこの留美の人間関係の破壊を疑い悔いてさえいる。

同じ方法でも俺とこいつとではどこまでもその意味が食い違う。vol.04, l.2562

葉山は八幡の 同位体vol.03, l.0015 だということ。「同じ方法」とは、「肝試しに乗じて人間関係が揺らぐ程に圧力を掛ける」こと。葉山の意味は「留美らが一致団結により乗り越える事を期待する」。八幡の意味は「留美の周囲の人間関係が解体される事を期待する」。

但し双方ともにまちがっている。最終的には留美の周囲の人間関係が解体された上で留美が一人で乗り越える。

「生徒たちに心の準備をさせないでスリルを上げるとか言い逃れるか」 / 「携帯をカンペ代わりにしてくれりゃいい。」vol.04, l.2655

前者は葉山、後者は八幡による提案。ほぼ同等の発想力、問題解決力の描写であろう。であれば恐らく 屁理屈めいた言い訳もどこか正々堂々とかっこいい気がしてくる / 仕事のできそうな雰囲気が凄い も葉山、八幡ともに同じ印象を相手に抱いていよう。

「幽霊はいないんじゃなかったのか」vol.04, l.2792

「幽霊だなんて馬鹿馬鹿しい。そんなのいないわ」vol.01, l.0243 。雪乃は幽霊が嫌い。

「一つくらい、いいことがあっても許されると思うわ」 / 「やっぱり遠慮しておくわ。それは二人でやりなさい」vol.04, l.3093

雪乃が作為的に八幡と結衣を近づけようとしている表現。

「いいこと」とは八幡に結衣が接近すること。「やっぱり」は事前に雪乃が結衣との花火に同意していた表現、「二人で」は結衣と八幡。雪乃は結衣の八幡への好意に協力する。かつ前巻以降雪乃は結衣と八幡の関係に対して一歩引く。

「二人で遊びに行くのも叶えてね」 / 「そのうち、適当にな」vol.04, l.3138

拒否。雪乃の仲介にも関わらず八幡は結衣との距離を縮めない。

「雪ノ下さんもお姉さんみたいになれれば、よかったんだろうけど」 / 「愛想のいい雪ノ下なんて想像するだけで怖い」 / 「比企谷君とは仲よくできなかったろうな」vol.04, l.3155

葉山の嫉妬。陽乃は葉山には愛想が悪い。陽乃は葉山に それこそ爪とぎ板ほどの価値しか見出しては居ないvol.13, l.3190

すなわち 「同じ人物を知っていても、俺は葉山とは違う意見だ」vol.04, l.3157 がまちがっている。八幡は陽乃の多面性を知らない。

葉山が比企谷八幡という存在を正しく認識したのと同様にvol.04, l.3172

この発言を機に葉山の八幡の呼び方が「ヒキタニ君」から「比企谷」に変化する箇所が現れる。もっともクラスメイトの前では概ね「ヒキタニ君」が続く。

八幡は留美を通して誰を救ったか

「あなた、本当は誰のために解決したかったの?」vol.04, l.3076

雪乃。八幡は 「そりゃルミルミのためだろ」vol.04, l.3077 とは応えるが、後に どこかで誰かと重ねていたからだ。vol.12, l.0230 として留美の為だけではないと明言される。かつ、 むしろもっと似てるだろって奴がいる。vol.04, l.1949 に従えば結衣ではない。

「徒党を組んでいた相手がいなくなるだけで随分と楽になるものよ。」vol.04, l.3091

雪乃は留美に過去の自分を重ねた。そして周囲の人間関係が破壊されたから留美は攻撃されなくなった、とする。

「空気に流されるのも結構大変なもんだよ。」vol.04, l.3125

結衣は留美に過去の自分を重ねた。そして自身の人間関係が破壊されたから留美は罪悪感から解放された、とする。

「俺はみんなが一致団結して対処する可能性に賭けて、だ」vol.04, l.2561 / 「昔、似たような光景を前に何もしなかった」vol.04, l.3155

葉山は留美の周囲に過去の自分を重ねた。留美が行動したから多少自分が救われた、かつて雪乃は留美や陽乃の様には行動しなかったから、とする。

なお、葉山は「何もしなかった」ではなく、 「俺は中途半端に手を出して、余計に傷を広げたんだ」vol.13, l.3088

そして、雪ノ下雪乃を乗せた車は走り出す。vol.04, l.3177

平塚は、雪乃や結衣の、人間関係を変化させようとする意思を評価し、八幡の手法を評価しない。

陽乃が現れ雪乃を実家に連れ去る。

「由比ヶ浜が説得しなければ君たちはそもそも動く理由を見つけられなかった」vol.04, l.3202

結衣の説得とは恐らく 「言いたくても言えないんじゃないかな」vol.04, l.1604 。「君たち」であるので、雪乃と八幡。二人とも 問題を与えられなければ、理由を見つける事ができなければ、動き出せないvol.08, l.4089

但し八幡が動いた直接の理由は恐らく 「惨めなのは嫌か」 / 「……うん」vol.04, l.2451 、留美に雪乃を重ねた上で雪乃に周囲を見限らせたくないという想いである。であれば結衣の説得は無関係であろう。