03巻 材木座対遊戯部

03巻 材木座対遊戯部

6月。 雪乃は陽乃の外面を喝破する八幡に好意を自覚し、しかしその直後に結衣に譲る。八幡はそれに抗う。

プロム篇で回収される伏線や設定が多数存在する。3巻以降の続刊が決定した時点で最終エピソードのモチーフが決まった、という事だろう。

こうして平塚静は新たな戦端の口火を切る。vol.03, l.0017

翌週金曜日。

八幡と結衣のすれ違いは続く。結衣は奉仕部に来ない。

平塚静は八幡と雪乃に結衣との復縁の言い訳を与える。

お前ら中二はキャンセル能力が好きすぎる / お前ら中二はコピー能力が好きすぎる / 同位体がどんなものかちゃんとググった?vol.03, l.0015

それぞれ結衣、雪乃、葉山のキャラクター設定。結衣は陽乃の干渉をキャンセルする。雪乃は陽乃のコピー。葉山は八幡の鏡写し。

「お兄ちゃんが、変だ」vol.03, l.0183

八幡は 完全にリセットできているvol.03, l.0100 と考えている。この地の文に反して八幡はリセットできていない、ということ。

ファッション雑誌を読んでいるvol.03, l.0183

雪乃は結衣に感謝を告げるべく誕生日プレゼントを探している。

雪ノ下が部室で雑誌を読んでいたのは由比ヶ浜への誕生日プレゼントを考えていたのだろうvol.03, l.1092お前が普段絶対読まないようなよくわからん頭の悪そうな雑誌vol.03, l.3383

「私が君たち奉仕部に課したものは自己変革だ。」vol.03, l.0333

具体的な意味も真偽も不明。

「私なりの優しさのつもりだがね」vol.03, l.0355

平塚は雪乃や八幡に結衣を追う言い訳を与えた。それを優しさとしている。

八幡は 来る者は拒み、去る者を追わず。vol.03, l.0275 として結衣を追わない。雪乃は八幡と結衣のすれ違いを 「なら仕方ないわね」vol.03, l.0255 で諦める。であるから平塚が復縁の言い訳を与えなければ八幡や雪乃は結衣を追わない。

やはり戸塚彩加との青春ラブコメはまちがっていない。vol.03, l.0393

戸塚は八幡を気晴らしに誘う。材木座も校外コミュニティを持つ。

きゃつの通り名はアッシュ・THE・ハウンドドッグだ / 「だが、本名も知らぬし、何をやっている人かも知らんぞ。」vol.03, l.0544

プロム篇への伏線。雪ノ下母は事故の被害者として比企谷という名字しか知らなかった。 雪ノ下母は脅迫に屈してプロムを認めた訳ではない 参照。

雪ノ下雪乃はやっぱり猫が好き。vol.03, l.0726

土曜日。

小町と八幡はペットショーで偶然雪乃と逢う。小町は八幡と雪乃を二人で回らせる。

結衣、二人でいる八幡と雪乃を見かけ、仲を誤解する。雪乃は説明するとして結衣を部室に呼ぶ。

「って、首輪ダメになってるし!」vol.03, l.0961

結衣へのプレゼントの伏線。

「なんだ、この犬……、懐きすぎじゃねぇか?」vol.03, l.0975

サブレは八幡がかつて交通事故から救った犬。今後ずっと八幡に懐く。

「私たちのことで話があるから」 / 「うまく伝えられなかったのだけれど。……あなたにはきちんと話しておきたいと思っているわ」vol.03, l.1013

齟齬。雪乃は「雪乃と結衣のことで感謝を伝えたい」と考えている。 結衣は「雪乃と八幡のことで恋人宣言をする」と解釈している。

「付き合ってくれないかしら?」vol.03, l.1046

雪乃の言葉足らずの強調。次章で「小町に」が補足される。

ちゃっかり比企谷小町は画策している。vol.03, l.1048

日曜日。

雪乃・八幡・小町は結衣の誕生日プレゼント選びに外出する。小町は再度離脱、 雪乃は八幡に「今日一日だけ恋人の様に振る舞う」とし、八幡は「雪ノ下は嘘を吐かない」として信じる。

雪乃はエプロンを、八幡は犬の首輪を購入。

クレーンゲームのパンさんぬいぐるみプライズを欲しがる雪乃を見て、八幡は店員に取ってもらう。

八幡は初めて陽乃と逢うが「雪乃と異なる」という理由で陽乃の外面を看破する。

休日のスタイルなのかいつもより高い位置でくくったツインテールがvol.03, l.01059

雪乃はこの日の髪型を 「休みの日でも、あまりしないけれど」vol.14, l.5297 として繰り返す。この日に雪乃フラグが立った説の傍証。

「小町の見立てだと結衣さんの趣味的にここを抑えておけば問題ないと思います」vol.03, l.1156 / たぶんその一帯に若い女の子向けの商品を扱っているショップが集まっているんだろう。vol.03, l.1160

小町は理想解の提示役。結衣の誕生日プレゼントの理想解は例えばチョーカー。

「今日一日に限り、恋人のように振る舞うことを許可する」vol.03, l.1313

雪乃曰く、 「二人で出かけるのだってすごく緊張して、初めてでわからないことだらけで」vol.13, l.4513

雪ノ下が俺のクズさに全幅の信頼を寄せるようにvol.03, l.1320

「これからはあなたのクズっぷりにだけは全幅の信頼を寄せることにするわ」vol.03, l.1100

「由比ヶ浜さんが何が好きかとか、どんなものが趣味かとか、……知らなかったのね」 / 「別に知らなくていいだろ」vol.03, l.1347

6巻までのテーマ。

かつて雪乃は八幡を 「あなたのことなんて知らなかったもの」vol.01, l.0846 と評した。雪乃は結衣や八幡を知ろうとして、「...でも、今はあなたを知っている」vol.06, l.3971 に至る。

八幡は雪乃を知ろうとせず、鈍感系難聴系の様に描かれている。八幡は故意に雪乃を理解しようとしていない。 八幡は雪乃に憧れ、故に雪乃を愛さない。 参照。

最終的に雪ノ下が選んだのは薄いピンクを基調とした装飾の少なめなエプロンだった。vol.03, l.1406

いつだったか、雪ノ下と一緒に出掛けた先で買ったものvol.14, l.1763 として再登場する。結衣はこのプレゼントのエプロンを多少は使っている。

「何を買ったの?だいたい想像はつくけれど」vol.03, l.1432

読者への挑戦。八幡の買った土産は何か。

「いつも以上に不機嫌な表情で / 「たとえそれがどんなに認めたくない手段だったとしても」vol.03, l.1505

雪乃がクレーンゲームのプライズを八幡に取ってもらえると期待していたということ。少なくとも「別にゲームがしたいわけではない」雪乃は入手手段にはこだわるまい。

「誕生日プレゼント、だったのよ。」vol.03, l.1569

「友人から誕生日プレゼントもらったことないから……」vol.03, l.1093 と合わせ、雪乃が八幡のパンさんのぬいぐるみを喜ぶ理由。

かつこのぬいぐるみは恐らくディスティニーランドでの八幡との写真を隠す パンダのぬいぐるみvol.12, l.1154

「比企谷……へぇ……」 / 陽乃さんは一瞬だけ考えるような間を取り、vol.03, l.1602

八幡が事故の当事者であることに陽乃が気付いた表現。

「比企谷くんね。うん、よろしくね」vol.03, l.1606

陽乃が八幡を大事に扱う、懐柔する表現。理由は雪乃と一緒にいるから、だろう。

陽乃は相手の名を覚えないと宣言して優位に立つ。 「なにヶ浜ちゃんだったっけ?」vol.05, l.1890 , 「ま、いいや。委員長ちゃんね」vol.06, l.1358 など。

「お姉ちゃん、ちょっと調子乗りすぎた、かも」vol.03, l.1637

陽乃のはしゃぐ態度が、(恐らくは子供の頃にそうだった様に)雪乃に近づこうとする為のものだった、ということだろう。つまりこの時点で陽乃も雪乃との距離感を調整できないでいる。

このとき、決定的な違和感に襲われた。vol.03, l.1641

八幡が陽乃の外面、意図的にスキンシップ過剰な言動、に気づいた表現。 「雪乃ちゃん、繊細な性格の子だから。だから、比企谷くんがちゃんと気をつけてあげてね」vol.03, l.1640 という言葉が、嘘ではないにせよ、 媚びたり、騙したり、誤魔化したりvol.03, l.1727 している種のものだ、ということ。単純に陽乃も 繊細な性格の子 だということ。

「初対面の女性に性癖を晒すのはやめなさい、訴えられても文句言えないわよ」vol.03, l.1650

この前後で陽乃の雪乃に対する態度が変わる。これ以前は距離感を掴めていない。これ以降は雪乃に対して強く出る。前者は 申し訳なさそうに、力なく笑う陽乃さん。vol.03, l.1638 、後者は 今度はにやっと笑ってそれを跳ね除けたvol.03, l.1661

「そっか、そうだね。お姉ちゃんには関係ないね」vol.03, l.1676 で陽乃が雪乃の姉離れに気付いたとすると、恐らくは陽乃はこの言葉で雪乃から八幡に対する(この時点では潜在的な)好意に気付いた、のだろう。

「比企谷くん、すっごいおもしろーい!」vol.03, l.1652

「よかったらお茶して行かない?」vol.03, l.1655 に繋げる為の話題転換だろうか。陽乃は八幡から雪乃の近況を聞き出す為に八幡を籠絡している。雪乃は一人暮らしを初めてから自宅に帰っておらず、すなわち陽乃とは一年近く疎遠であるとして。

「何? 強化外骨格みてぇな外面のことだよ」vol.03, l.1695 / 「お前と顔が似てるのに、笑った顔が全然違うだろ」vol.03, l.1725

おそらく雪乃側の八幡フラグが立った言葉。陽乃に憧れしかし陽乃からの自立を志す雪乃に対してその差を指摘してみせたから。

以下が雪乃側の八幡フラグが立った表現だと考える。

俺は本物の笑顔を知っている。媚びたり、騙したり、誤魔化したりしない、本物を。vol.03, l.1726

以降、本質的に「本物」とは雪乃の笑顔を指す。

それでも材木座義輝は荒野に一人、慟哭す。vol.03, l.1741

月曜日。

結衣は雪乃への誤解を自ら解いて雪乃と和解する。

奉仕部は材木座と遊戯部の対立に巻き込まれる。雪乃らは遊戯部に脱衣大富豪で勝利する。

どうやら由比ヶ浜は中に入るのをためらっていたらしい。 / 無理もない。一週間もいなかったのだ。vol.03, l.1781

齟齬。結衣は雪乃と八幡の仲を誤解している。八幡は奉仕部からの疎遠が理由だと考えている。

「別に彼女がいるわけでなし。」vol.03, l.1940 / 「ヒッキー彼女いないの?」vol.03, l.1974

結衣は疑問を自分で直接確認する。推測ではなく。

八幡は雪乃が結衣を部室に呼んだ意図を知っていて、しかし結衣の誤解を解こうとしていない。「別に彼女がいるわけでなし」の発言も材木座との会話の流れで出したものであって強く積極的に結衣の誤解を解こうとしたものではない。

「こっち見んな。俺の肉体に興味持つな」 / 「興味とかあるわけないでしょっ!?ばっかじゃないの!?」 / そんな顔真っ赤にして怒らんでもvol.03, l.2366

齟齬。結衣は恥ずかしがって赤面している。怒ってはいない。

ぼくが脱ぎ始めたら、雪ノ下さんはぼくのことをいないものとして扱い始めました。一切こっちを見ず、完全に無視。さすがです。vol.03, l.2374

齟齬。雪乃も恥ずかしがっている。

しっかりと俺の目を見た。 / 「始め方が正しくなくても、中途半端でも、でも嘘でも偽物でもなくて……、好きって気持ちに間違いなんてない……と、思う、けど」 / その言葉は誰に向けられているものだっただろうか。vol.03, l.2502

「しっかりと俺の目を見た。」とある以上、言葉の向けられた対象は自明的に八幡であって、それでもしかし八幡は言い訳を探す。 八幡が評するに、 見当違いの自衛行動vol.03, l.2762

「確かに、俺には、誇れるものはない」 / 「だから、これに賭ける。それの何がおかしい!」vol.03, l.2506

材木座は八幡の斜め下の解法の提示役。14巻、八幡がダミープロムで雪乃に話しかける為に人生を賭けるという案の元ネタ、かも知れない。

「なりたいから好きなわけではない!……好きだから、なるのだ!」vol.03, l.2539

材木座は八幡の斜め下の解法の提示役。13巻以降、雪乃を助ける事を拒否される八幡が、それでも雪乃に関わる理由の正解、かも知れない。

「好きとか嫌いとか知性のあるなしじゃねぇんだ。」 / 「人生は運ゲーだ」vol.03, l.2655

好き嫌いは結衣を、知性は雪乃を象徴する。八幡は人生を運ゲーとして諦めている。これらを対比する。

結衣らの勝因、遊戯部の敗因は、秦野が本来は8とのペアで用いねばならないジョーカーを単体で落としたこと。八幡はこれを運と評した。

ようやく彼と彼女の始まりが終わる。vol.03, l.2712

雪乃は八幡に結衣との和解を促す。

雪乃は八幡を結衣に譲る。結衣はそれを受け入れる。

八幡のプレゼントである犬の首輪を結衣はチョーカーだと誤解する。八幡はその間違いにかこつけて結衣を拒否する。

「弁護士だの運転手だのが謝りに来たらしいし」vol.03, l.2752

つまり雪ノ下母などは比企谷家の面々の顔を見ていない。

「始まりからすでに間違っているのよ」 / 始め方が間違っていたのだから、結果もまた間違っていて当然だ。vol.03, l.2777

間違って が漢字。著者の故意か否かは不明。

偶発的な事故で芽生えただけの感情を、自己犠牲を払ったおかげで向けられた同情を、他の誰かが救ったとしても生まれていた可能性のある恋情を、本物と認めることはできないvol.03, l.2781

「本物」の初出。結衣の八幡への好意は本物ではない、とされた。 本物とは人間関係を壊すもの 参照。

「ちゃんと始めることだってできるわ。……あなたたちは」 / そう言った雪ノ下は穏やかな、けれど、少し寂しげな笑顔を浮かべる。vol.03, l.2794

「あなたたちは」であって、すなわち雪乃は含まれない。後に あのとき、彼女は確かに一線を引いたはずだvol.05, l.0260 と顧みられる。

そして、この一線、つまり雪乃がちゃんと始めなかったことは、 「そうすれば、ちゃんと始められると思うから」vol.12, l.0561 にまで継続する。

雪乃が八幡を結衣に譲る理由、あるいは八幡を拒絶する理由は多数描かれる。

夕映えの中で細められた瞳が何を映しているかはわからなかった。 / 「私は平塚先生に人員補充完了の報告をしてこないといけないから」 / 普段よりもやや速い足取りで雪ノ下は歩く。けっして、振り返らず、そのまま部室を出て行った。vol.03, l.2796

八幡と結衣から一線を引いた雪乃は描写されない。平塚から「人員補充完了の報告をしてこないといけない」という要求はない。雪乃は本当のことを言っていない。

恐らくここで雪乃は泣いている。 「人前で泣いたことなんてなかった」vol.13, l.4513「それかさめざめと見えないところで泣くか」vol.14, l.6442 が回収。 雪ノ下は言いたいこと言ったからいいのだろうが、この妙な空気、どうしてくれんだよ。vol.03, l.2800 という軽口が皮肉的な対比。

「よろしくお願いします……」vol.03, l.2802

結衣が雪乃に八幡を譲られたことを理解した表現。

何がよろしくなのか、全然わからん。 / どこか釈然としない。雪ノ下に言いくるめられた気分だ。vol.03, l.2804

八幡は雪乃に譲られたことを拒否する。

恐らくは もう渡した以上、その所有権は由比ヶ浜にある。わざわざ俺に許可を取らんでもいいのに。vol.03, l.2808 に現れる距離感が、八幡が結衣に対して距離感を意図的に維持している表現。ここではさらに「八幡は結衣に譲られた以上、結衣は雪乃には許可を取らなくてもいい」、という状況に対して「言いくるめられた気分」であるということ。

こういうことはちゃんと言ったほうがいいだろう。vol.03, l.2819

かつてと行動が異なる。結衣が八幡と雪乃との仲を誤解した時にはそれを解こうとしなかった。今度は八幡は結衣の誤解を積極的に指摘する。

つまり、「こういうこと」とは、一義的には、犬の首輪とアクセサリーと間違えて身につけた事である。が、暗黙に、八幡にアクセサリーを贈られると思ってしまう程の結衣の距離感の無さ、であって、つまりは雪乃は結衣に八幡を譲ったが八幡はこれを拒絶した、ということだろう。であれば なんでこいつこんな似合うんだよ……。vol.03, l.2821 は八幡が結衣を拒絶した事に対する後悔の表現。

「さ、先に言ってよ! バカっ!」vol.03, l.2822

こういうことはちゃんと言ったほうがいいだろう。 への応答。双方とも指示代名詞や省略を用いたダブルミーニングである。一義的にはプレゼントがチョーカーではなく犬の首輪であること。暗黙には、雪乃が八幡を結衣に譲ったという結衣自身の解釈に八幡は同意していない、ということ。

ぼーなすとらっく!「たとえばこんなバースデーソング」vol.03, l.2835

結衣の誕生日パーティー。