01巻 結衣の依頼、テニス対決

01巻 結衣の依頼、テニス対決

4月。八幡は奉仕部に入部し雪乃に一目惚れする。そこに八幡と結衣を慕って結衣が合流する。

典型的キャラクター群の紹介に留まる。そのキャラクター設定は発行当時流行していた残念系ラブコメ群に類似する。物語の展開の模索、展開の可能性の担保、なども伺える。

とにかく比企谷八幡はくさっている。vol.01, l.0018

比企谷八幡は平塚静の指示で奉仕部に参加し、雪ノ下雪乃と遇う。

平塚は雪乃に八幡の更生を依頼。雪乃案、八幡の居場所を作る。

奉仕部は「依頼を多く解決した方が相手に命令できる」と言うルールで合意する。

世界が終わったあとも、きっと彼女はここでこうしているんじゃないか、そう錯覚させるほどにvol.01, l.0118

八幡が雪乃に一目惚れした表現。

野生の獣は目で殺す! / なに今の目。野生の獣?vol.01, l.0187

前者は八幡の目、後者は雪乃の目。単純な反復。

「それじゃあ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない」 / だいたい「救う」だなんて一介の高校生が言う言葉じゃないだろう。vol.01, l.0376

「救う」「救われる」「助ける」系キーワードの初出。恐らくは雪乃は助けてもらう、救われる、為に奉仕部に参加している。 「だから、これで終わりにしましょう」 参照。

あとにはぽつねんと残された俺が一人きり。vol.01, l.0429

この時点ではまだ雪乃は部室に鍵をかけない。後には雪乃の心の扉の鍵の明喩にもなる。

いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。vol.01, l.0448

雪乃は優れているが故に他人に排除されてきた。かつ、雪乃は自分に嘘をつかない、他人に阿らない。

雪乃は自分の生き辛さを無くすべく、相談者に方法論を与え自立を促す事で人と周囲とを変えようとしている。

自らに決して嘘をつかないvol.01, l.0713

「雪乃は嘘をつかない」は俺ガイルの読解上の原則である。

他に 何よりこの女は嘘をつかない。vol.01, l.3135「私、暴言も失言も吐くけれど、虚言だけは吐いたことがないの」vol.01, l.3264 など。

「なら、俺が友」「ごめんなさい、それは無理」vol.01, l.0720

「雪乃は嘘をつかない」と合わせ、当初から雪乃ENDが確定していた傍証。物語を通して雪乃は八幡の友達にはならない。

つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。vol.01, l.0723

由比ヶ浜結衣が平塚の紹介で奉仕部を訪れる。雪乃曰く、結衣の依頼は「手作りクッキーを食べてほしいが手伝ってほしい」。

八幡は料理下手の結衣に手作りなら料理に上達する必要はない、と諭す。結衣は依頼を撤回して奉仕部に参加する。

雪乃は結衣に反駁し、しかし結衣は雪乃に懐く。

叙述トリック。 結衣の最初の依頼は「料理を上達したい」ではない。 参照。

「鶴見先生は私に丸投げしてきた」vol.01, l.0729

鶴見留美との血縁は不明。

「あなたのことなんて知らなかったもの。」 / 「あなたの矮小さに目もくれなかったことが原因だし、何よりあなたの存在からつい目を逸らしたくなってしまった私の心の弱さが悪いのよ」 / 「ただの皮肉よ」vol.01, l.0846

叙述トリック。雪乃の意図は「事故の被害者としての八幡しか知らなかった」「事故とその被害者の存在から目を逸した」「雪乃自身への皮肉」。 「雪ノ下雪乃ですら嘘をつく。」はまちがっている。 参照。

飢えた人に魚を与えるか、魚の獲り方を教えるかの違いよ。 / 自立を促す、というのが一番近いのかしらvol.01, l.0904

故に雪乃は助けを求められない限り助けられない。かつ、10巻以降は雪乃は自分自身に自立を促す。

八幡は当初からこれに従っていない。川崎へのスカラシップなど幾つかを除き八幡が取った解法の多くはこの理念に反する。

それでもクラスはうまくやっている。vol.01, l.1410

葉山隼人、三浦優美子、等登場。八幡と同クラス、結衣と同グループ。

結衣は優美子らに阿り、優美子は結衣のその迎合を咎める。八幡や雪乃の介入を機に、結衣は迎合を改める事を優美子に告げ、優美子は結衣を認める。

『今まで必死になって人に合わせようとしてたの、間違ってるみたいで』 / 『まぁ、いいんじゃない』vol.01, l.1613

三浦優美子の結衣を咎める様な発言は全て単なる提案であった、ということ。八幡も雪乃も結衣も、三浦優美子は仲間意識の強化の為に結衣を咎めていると認識していたが、これらは誤解であった、というエピソード。

優美子の描かれ方、八幡から見た優美子像、は作品が進むにつれて反転する。 ただの乙女なおかんvol.11, l.2458彼女は傲慢なまでの真摯さで、いつも自分の周囲にいる親しい人たちを見守ってきたのだ。vol.14, l.1349 など。

つまり材木座義輝はズレている。vol.01, l.1653

材木座義輝登場。奉仕部は材木座の自作ラノベを酷評するが、材木座はそれでも書く。作家病。

けれど戸塚彩加はついている。vol.01, l.2061

比企谷小町が登場。八幡は現時点で結衣や雪乃が事故の関係者であることを知らない。

戸塚彩加が登場。戸塚は八幡・結衣にテニス部の強化について相談し、雪乃監督によるテニス練習。

産湯代わりにMAXコーヒーに浸かりvol.01, l.2099

MAXコーヒー初出。

俺は高校入学初日、交通事故に遭っている。 / 気がついたときには全力で走り出していた。vol.01, l.2133

走り出した主体がサブレか八幡か(リムジンか)不明。この主語の省略が故意か否かも不明。

「学校でお礼言うって言ってたよ」vol.01, l.2152

このお礼が結衣の手作りクッキー。

昼休みの間は女テニの子が自主練習をしているようでvol.01, l.2237

戸塚。 先ほど自主練していた女テニの子がvol.01, l.2307

『自信ないんだ?』って言ったら乗ってきた / もうなんかすっごい可愛かったvol.01, l.2257

正しい雪乃像。1巻の時点で既に結衣は概ね間違えない。

「女子の恋愛相談って基本的には牽制のために行われるのよね」vol.01, l.2488 / 「自分の好きな人を言えば、周囲は気を使うでしょ? / 聞いた上で手を出せば泥棒猫扱いで女子の輪から外されるし、なんなら向こうから告白してきても外されるのよ?」vol.01, l.2490

雪乃が八幡を諦める理由。結衣の初回の依頼は恋愛相談である。

たまにラブコメの神様はいいことをする。vol.01, l.2722

テニスコートの使用権を賭けて三浦・葉山と雪乃・八幡とでダブルス戦。

雪乃は体力不足の為に八幡を信頼し委ねる。

八幡は風や土煙を活用し試合には勝利するも、三浦・葉山のラブコメ化により勝敗は曖昧に終わる。

「あんときも全然諦めてなかったし。馬鹿みたいに超全力出してて、」vol.01, l.3063

「あんとき」とは入学前の交通事故時。

「この男が試合を決めるから、おとなしく敗北なさい」vol.01, l.3255

テニス戦のエピソードは雪乃のキャラクター設定のお披露目だろう。

とは言えこの時点で雪乃が八幡をここまで信頼できる理由が不明である。風も土煙も伏線は存在する。が、しかし、雪乃が一人で昼食を取る八幡を見ていたとして、それでもなお八幡がそこまで信頼に値するとは考えがたい。

そして比企谷八幡はかんがえる。vol.01, l.3416

平塚曰く、独断と偏見で依頼者は4人、八幡と雪乃ともに2勝づつ。相談内容が本当の悩みとは限らない。

それが、由比ヶ浜が本音をちゃんと言えるようになったからなのかは知らない。vol.01, l.3473

八幡の独白が正しいとして、結衣がテニスで三浦優美子に敵対したために、三浦優美子が持つ結衣像が変わった、ということ。あるいはさらに三浦優美子は結衣の迎合癖を改めるべく故意に高圧的な態度を取っていた、ということ。

平塚による判定

全巻を通して、平塚の勝負判定には意味はなかろうし、その判定基準も定義されてはいまい。

本巻に関しては、依頼者、依頼、その勝敗、は下記だと考える。戸塚のテニスの練習、結衣の 「この試合に勝てばいいのでしょう」vol.01, l.3129 は平塚を経由していないので計上しない。