ミステリーとしての俺ガイル再読のお誘い 4
この章では俺ガイル本編中の代表的な謎と解とを羅列します。
但しミステリーを語る作法に則り、あるいは俺ガイルをもう一度読んでいただくという趣旨に従い、本稿ではそのトリック自体は記載しません。
かつ、本稿が誤っている可能性は相当に高いです。
1巻、結衣の初回依頼。結衣の依頼は「クラスのヒッキーと仲良くなりたい」。
1巻、テニス対戦。三浦優美子が結衣に辛辣に当たっていた理由は、結衣に自分の意思を主張させるため。
2巻、チェーンメール騒ぎ。チェーンメールは葉山隼人と平塚静が結衣のみに送った。葉山は戸部大和大岡を仲良くさせたい。
3巻、結衣への誕生日プレゼントを選んでから渡すまでの間。雪乃は八幡への好意を自覚し、直後に八幡を諦め、結衣に譲り、逃げた。結衣も八幡もそれを理解し、しかし八幡は結衣を拒絶した。
3巻、陽乃が雪乃と八幡と会ってから文化祭後まで。雪乃は八幡や結衣との接触を自ら控えている。陽乃もしくは雪ノ下母のなんらかの干渉の結果。
4巻、千葉村キャンプ。葉山隼人は陽乃に問われ、八幡の素性を探る為にキャンプに参加した。
5巻、花火大会後、陽乃の車が八幡を轢いた車であることに気付いた後。「雪ノ下雪乃ですら噓をつく」は八幡の誤解。
6巻、文化祭。相模南の失踪は陽乃と葉山に仕組まれていた。文化祭の準備期間中から。
6巻、文化祭後。雪乃は誰でも救う八幡に失望している。
7巻、修学旅行。八幡は戸部翔と海老名姫菜の縁を結ぶべきだった。やたらと。
7巻、竹林の小径での海老名姫菜への嘘告白。八幡は結衣の積極的なアプローチに追い詰められていた。この時点で結衣は雪乃から八幡への好意に気付いていない。かつ雪乃の応答は「あなたのやり方以外は好き」。
7巻、京都駅屋上での海老名姫菜と八幡の会話。海老名も八幡も互いに興味がない。
8巻、生徒会長選。雪乃が立候補した理由は、結衣と八幡を誘って奉仕部を生徒会に移行させる為。
9巻、雪乃と結衣の口論。「ゆきのん、(八幡を好きだと)言わなかったじゃん」、「あなただって(それを察したと)言わなかった。」
9巻、ディスティニィーランド帰りの電車内での八幡といろは。「(八幡への想いが)盛り上がっちゃったんだから」、「(八幡へと)心動いちゃいますよ」、「(八幡のことを)忘れられません」。葉山はいろはのこの心変わりを察し、八幡に負けたと考えている。
10巻、葉山の進路。葉山が文系クラスを選んだ理由は来年一年間八幡と一緒にいる為。
11巻、雪乃は、結衣が本命チョコレートを渡すことを前提として、雪乃からのチョコレートも本命だとして、結衣のいる場で、それを渡そうとした。雪乃はそれを言い出せず、だから雪乃は八幡にチョコレートを渡せなかった。
11巻、葛西臨海公園にて、奉仕部の関係性についての結衣の案。「ゆきのんの今抱えてる(雪乃は八幡を好きで、けれども結衣とも仲良くしたいという)問題」、「(結衣が勝負に勝ったことにして、三人ともが好意の表明をしないこと)が、あたしたちの答えだと思う」。
12巻、雪乃宅にて、奉仕部の関係性についての雪乃の案。「ちゃんと自分で考えて納得して、(八幡を)諦めたい。」「私が自分で(家業承継の諦めを)できることを証明したい。そうすれば、(八幡への好意も諦められるだろうから、三人の関係を、八幡が結衣と交際する形で)ちゃんと始められる、と思うから。」
13巻、雪ノ下母は、雪乃が「ひきがや」に好意を持つことを知っていたから、プロム実施を認めた。脅迫に屈した訳ではなく。
13巻、八幡からプロム実施決定を告げられた雪乃。雪乃が奉仕部を設立もしくは参加した理由は、誰かに助けてもらう為、だった。だから、これで終わりにしましょう。
14巻、陽乃に代償行為だと指摘された後。葛西臨海公園での「雪ノ下の問題は雪ノ下自身が解決すべきだ」がまちがっていた。
14巻、ダミープロム実施に関する雪乃への依頼。キャンバスの全部を埋めて残る空白が成す言葉の形とは、「成功させる意思はある、時間も金も何もかもが足りてなくても、ただ一つのことだけは保障できる、ただ雪乃と一緒なら、雪乃が無理してくれるなら、どんなに難しい案件であっても。」
14巻、平塚による本物の定義。八幡は本物を求めてはいても本物を定義しようとしてはいない。「共感と、馴れ合いと、好奇心と、憐れみと、尊敬と、嫉妬と」は引用すなわちミスディレクション(河野裕『片手の楽園 サクラダリセット5』、角川文庫、二〇一七年、三七二頁)。
アンソロジー各編は、青春ラブコメの始まりである。雪乃、結衣、いろは、の三人それぞれが八幡を攻略する手口を定義する。